『QRコードの奇跡―モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』
(小川 進/著)

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 様々な場所で、独自な模様の「QRコード」を誰もが一度は目にしたことがあるはずだ。今や世界中で使われ、中国などではスマホ決済の主流となりつつある技術だ。今後も普及が進むであろう QRコードは、実はトヨタグループの中核企業で、自動車部品業界最大手のデンソーが 1994年に開発し、日本発国際標準となった稀有なイノベーションである。

 モノづくり企業として著名な同社が、なぜ、またいかにして QRコードを開発し、世界に広めることができたのか。本書では、その歴史をトヨタ生産方式の改善手法として開発された先行技術までさかのぼり、その開発プロジェクトの全貌を明らかにする。特徴的なのは、この技術が一人の天才によって主導されたものではないことだ。

 QRコードは現場ユーザーを起点に、様々な技術者たちがモノづくりにかける思いに突き動かされ、組織プレーで起こしたイノベーションであった。それゆえ、業界を問わず、一読すれば、イノベーションを起こすための様々なヒントが見つかるはずだ。著者は経営学者で、神戸大学大学院経営学研究科教授、MITリサーチ・アフィリエイトを務める人物。

著者:小川 進(Ogawa Susumu)
 神戸大学大学院経営学研究科教授、MITリサーチ・アフィリエイト。1964年兵庫県生まれ。87年神戸大学経営学部卒業、98年マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院にてPh.D.取得。2003年より現職。研究領域は、イノベーション、経営戦略、マーケティング。
 主な著作に『イノベーションの発生論理』『はじめてのマーケティング』(ともに千倉書房)、『競争的共創論』(白桃書房)、『ユーザーイノベーション』(東洋経済新報社)がある。英語論文では、フランク・ピラーとの共著“Reducing the Risks of New Product Development”やエリック・フォン・ヒッペルらとの共著“The Age of the Consumer-Innovator”(ともにMIT Sloan Management Review掲載)などがあり、ユーザーイノベーション研究では世界的な評価を得ている。組織学会高宮晋賞(2001年)、吉田秀雄賞(2011年、準賞)、高橋亀吉記念賞(2012年、優秀作)などを受賞。
第1章 源流―アナログかんばんから電子かんばんへ
第2章 開発―思索から実践へ
第3章 標準化―国内単一業界から国際多業界へ
第4章 進化―企業ユーザーだけでなく消費者も
結 章 QRコードを通じて経営を考える―革新の神が宿るところ

要約ダイジェスト

「かんばん」と NDコード

 QRコードの登場は、先代コードにあたるバーコードについて語ることなしに説明することができない。バーコードはトヨタ生産方式を効率的に管理するために 1970年代に採用された。かんばん方式で採用されたバーコードの仕組みを開発したのはデンソーだ。そのバーコードは、NDコードと呼ばれるものだった。

 かんばん方式では、約3万個の膨大な数の部品を多くのサプライヤーから仕入れ、生産ラインに運び、足らなくなれば適量を発注することが求められる。必要なときに必要な量だけ、必要な場所に運ぶことで効率的に自動車を生産するトヨタ生産システムの精度を上げる道具として採用されたのが、NDコードとバーコードリーダーの仕組みだった。

 「バーコードの読取機を改善してほしい。バーコードの読み取りがとにかく大変なので、なんとかしてくれないか」。QRコード開発のきっかけは、デンソー西尾工場の作業員からの一本の電話だった。電話を受けたのは後に QRコードを開発することになる原昌宏だった。

 バーコードでは、かんばん方式に必要な情報量を適切に管理することが難しくなっていることを認識したデンソーは、まずは既存の二次元コードを検討することにした。当時、バーコード発祥の地であるアメリカでは、バーコードより多くの情報を格納する二次元コードの研究が活発化していたのだ。

 バーコードは水平方向の一次元に情報を格納するのに対して、二次元コードは垂直方向にも情報を二次元で格納するので、情報密度を一気に上げることができる。だが、既存のいくつかの二次元コードは、

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