『無形資産が経済を支配する―資本のない資本主義の正体』
(ジョナサン・ハスケルほか/著)

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 近年、経営において特許や商標権、従業員の持つ技術や知識、あるいは企業文化といった物理的なモノではない「無形資産」の重要性が着目されている。一方でこれらは計測が難しく、その実態が正確に理解されているとは言い難い。本書は、無形資産の特徴を明らかにし、増大する無形資産への投資による社会的・経済的影響の全貌を示した労作だ。

 著者らが指摘する、無形資産の特徴は、サンクコスト(埋没費用)、スピルオーバー(波及効果)、スケーラブル(拡張性)、シナジーの4つで言い表される。これらの特徴によって、GAFAに代表される巨大IT企業の寡占化が進み、企業投資や生産性、長期停滞や格差などの経済問題、公共政策など様々な分野に影響が及んでいるのだ。

 日本および世界の政治経済におけるトレンドと未来の方向性をつかみたい方はぜひご一読いただきたい。、インペリアル・カレッジ・ビジネススクール経済学教授ジョナサン・ハスケル氏、同氏とともに 2017年インディゴ賞を共同受賞したイギリス全国イノベーション財団ネスタ・シニアフェローのスティアン・ウェストレイク氏による共著。

著者:ジョナサン・ハスケル(Jonathan Haskel)
 インペリアル・カレッジ・ビジネススクール経済学教授。スティアン・ウェストレイクと2017年インディゴ賞を共同受賞した。

スティアン・ウェストレイク(Stian Westlake)
 イギリス全国イノベーション財団ネスタ・シニアフェロー。ジョナサン・ハスケルと2017年インディゴ賞を共同受賞した。

訳者:山形 浩生(Yamagata Hiroo)
 評論家、翻訳家。東京大学大学院工学系研究科都市工学科およびマサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。開発援助コンサルタント。コンピュータ、経済、脳科学からSFまで幅広い分野で翻訳と執筆を手がける。著書に『新教養主義宣言』ほか。訳書にピケティ『21世紀の資本』、クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』、スノーデン『スノーデン 独白』、バナジー&デュフロ『貧乏人の経済学』ほか多数。

原著ペーパーバック版序文
第Ⅰ部 無形経済の台頭
 第1章 無形資産の台頭で何が変わるのか?
 第2章 姿を消す資本
 第3章 無形投資の計測
 第4章 無形投資はどこが違うのか?:無形資産の4S
第Ⅱ部 無形経済台頭の影響
 第5章 無形資産、投資、生産性、長期停滞
 題6章 無形資産と格差の増大
 第7章 無形資産のためのインフラと、無形インフラ
 第8章 無形経済への投資資金という課題
 第9章 無形経済での競争、経営、投資
 第10章 無形経済での公共政策
 第11章 無形経済はこの先どこに向かうのか?

要約ダイジェスト

無形経済の台頭

 何世紀にもわたり、人々が何かの価値を測ろうとするときには──所領、農場、会社、国など──物理的なモノを数え計測した。そうしたモノは会計士のバランスシートで固定資産となり、経済学者や国家統計担当者が数え上げる投資にもなった。

 だがもちろん、経済は有形資産だけでまわっているわけではない。複雑なソフトウェア、業者との価値ある合意、社内のノウハウ。こうしたものはすべて、物理的なモノではなくアイデア、知識、社会関係でできている。経済学者の用語だと、これらは無形資産と呼ばれている。

 マイクロソフト社の 2006年における市場価値は 2,500億ドルほどだが、同社のバランスシートでは総資産は 700億ドルほどで、うち 600億ドルは現預金や金融資産だ。工場や設備といった伝統的な資産はたった 30億ドル、同社資産の4%という微々たるもので、時価総額の1%に過ぎない。

 メリーランド大学のチャールズ・ハルテンはマイクロソフト社の帳簿を精査して、なぜこんなに時価総額が高いのかを説明するためのいくつかの無形資産を同定した。研究開発や製品デザインへの投資で生み出したアイデア、ブランド価値、サプライチェーンや社内構造、研修で構築した人的資本などがその例だ。

 こうした無形資産は、どれもオフィスビルのような物理的実体を持たないが、どれも投資の特徴を持つ。同社はこうしたものに対して事前に時間とお金を費やさねばならず、

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