- 本書の概要
- 著者プロフィール
こうした状況で生き残るためには、他人を蹴落としすようなある種の「図々しさ」「下品さ」が必要となるが、本書ではそうした「下品」になりきれない人が強く生きるために必要なメンタル強化術を解説する。ポイントは強く硬い心ではなく、柔らかくしなやかな心の強さを目指す点にある。
具体的には、基本的なメンタルの持ち方から、働き方や人間関係の築き方、さらには今後より競争社会・二極化が進むであろう日本において、コミュニティによる「共助」を実現する生き方までを説いている。著者は元外務官僚として対ロシア外交・インテリジェンス活動で活躍、2002年に背任などの容疑で逮捕され、500日以上の拘置所生活を経験。
1960年東京都生まれ。作家。元外務省主任分析官。同志社大学神学部卒業。同大大学院神学研究科修了後、85年外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。北方領土問題など対ロシア外交で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。09年、最高裁上告棄却。13年、執行猶予期間を満了し刑の言い渡しが効力を失う。同志社大学神学部客員教授、同大学特別顧問、名桜大学客員教授。著書に『国家の罠』(毎日出版文化賞特別賞)、『自壊する帝国』(大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞)など多数。
第2章 「前のめり」な生き方をやめる
第3章 折れない!疲れない!自分のための働き方改革
第4章 心が折れた時の動き方・考え方
第5章 コミュニティとアソシエーションで乗り越える
要約ダイジェスト
硬いものはいつか折れる。柔らかさこそ本当の強さ
ここ2~3年、講演会や勉強会の後で、メンタル問題に関する相談を受けることが飛躍的に増えた。背景には、日本社会が急速に新自由主義化しているために、ビジネスパーソンが常に競争圧力にさらされているからと私は見ている。
この状況を解決するためには、政治主導で経済政策を改める必要があり、行き過ぎた新自由主義政策に今後、世界的規模で歯止めがかかるはずだ。ただし、この転換には時間がかかる。その間に、1人ひとりが自分と家族、友人たちをメンタル面での疲弊から守るために具体的に何かをしなくてはならない。
資本主義の論理がむき出しになった現在の新自由主義経済の下では、繊細で優しい心を持った人が勝ち組になることは難しく、「図々しい人」ほどのし上がる。図々しいということは、言い換えれば「下品」だということだが、これはお金だけでなく出世も同じである。
「強さ」というと競争や試合などで「相手に勝つ」というイメージがある。それは相手を倒すということであり、時として手段を選ばず、上品さを犠牲にしなければならない。だが、私が考える「強さ」は少し違い、「折れない」という意味での「強さ」だ。
頑なな心は一見強そうに見えるが、環境が変化することで折れてしまう。いまのような変化が激しくプレッシャーやストレスの多い時代は、どんな環境でどんな力が働いても、柔らかく曲がり、しなやかにまたもとに戻る。そんな心こそ目指すべき強さだ。
「私とは私とそれを取り巻く環境である」という言葉がある。つまり、