『AFTER SHARP POWER(アフター・シャープパワー) 米中新冷戦の幕開け』(小原凡司、桒原響子/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 米中貿易戦争の過熱化に代表される米国と中国の対立は、5Gなどの新世代技術、安全保障、台湾問題といった政治体制などにまで領域を広げ、「米中新冷戦」として長期化する様相を呈している。そうした中で、中国がこれまで米国内で行ってきた「シャープパワー」と呼ばれる世論誘導工作についても批判・排除の動きが強まっているという。

 本書では、中国メディアや中国語教育機関「孔子学院」など、中国のシャープパワーの実態を解説し、今後の米中関係、国際社会の動向、そして日本の取るべき方向性を明らかにする。一読すれば、近年の米中対立がこれまでのような二国間の表面的な対立ではなく、日本および日本企業にとっても対岸の火事ではないことが理解できるはずだ。

 対中国ビジネスに関わる方はもちろん、国際政治に対する関心の有無を問わず、今後数十年の日本の未来を冷静に考えたい方はぜひご一読いただきたい。安全保障、中国の軍事問題の専門家 小原凡司氏と、各国の戦略的発信を中心とした外交戦略を専門にする気鋭の研究者 桒原響子氏による共著。

著者:小原 凡司(Ohara Bonji)
 笹川平和財団上席研究員。各種メディアで情報発信している安全保障、中国の軍事問題の専門家。1985年防衛大学校卒業、1998年筑波大学大学院修了。1985年海上自衛隊入隊後、回転翼操縦士として勤務。2003~06年駐中国防衛駐在官。2006年防衛省海上幕僚監部情報班長、2009年第21航空隊司令、2011年IHS Jane’sアナリスト兼ビジネス・デベロップメント・マネージャー、2013年東京財団研究員を経て、2017年から笹川平和財団上席研究員。著書に、『中国の軍事戦略』(東洋経済新報社)、『世界を威嚇する軍事大国・中国の正体』(徳間書店)、『何が戦争を止めるのか』(ディスカバー・トゥエンティワン)、『曲り角に立つ中国』(共著、NTT出版)などがある。

桒原 響子(Kuwahara Kyoko)
 未来工学研究所研究員。パブリック・ディプロマシーなど、各国の戦略的発信を中心とした外交戦略を専門にする新進気鋭の研究者。2012年米国ウエストバージニア大学で国際政治学や通訳・翻訳などを学び、2017年大阪大学大学院国際公共政策研究科修士課程修了。笹川平和財団研究員、外務省大臣官房戦略的対外発信拠点室外務事務官などを経て、2019年から未来工学研究所研究員、日本国際問題研究所研究員、京都大学レジリエンス実践ユニット特任助教。

第1章 米国が恐れる新たな世界秩序
第2章 中国のシャープパワーの排除
第3章 5Gで世界の覇権を狙う
第4章 米中新冷戦の幕開け
第5章 米中の軍拡競争がはじまるのか
第6章 構造化する米中新冷戦
第7章 米中新冷戦のなかで日本が進むべき道

要約ダイジェスト

相手国の世論を味方につける外交手法

 昨今、国際社会では、従来の政府対政府の外交ではなく、相手国の世論に対して自国のソフトパワーを展開し、政府の政策広報や文化交流、国際放送などをもって直接働きかける外交手法「パブリック・ディプロマシー」(公共外交)の重要性が注目され、頻繁に用いられている。

 中国は、日本がその重要性について着目するかなり以前から政治、経済、文化など、あらゆる分野において活発にパブリック・ディプロマシーを展開してきた。しかし、最近ではこうした中国の働きかけに疑問符が付きはじめ、中国はソフトパワーではなく、「シャープパワー」を行使しているとして、注視、警戒されるようになってきた。

 米国のシンクタンク NED(全米民主主義基金)によれば、シャープパワーとは、権威主義国家が、強制や情報の歪曲、世論操作などの強引な手段を用い、主に民主主義国家の政治環境や情報環境を鋭く「刺す」「貫通する」ことで、自国の方針をのませようとするものである。

 シャープパワーという言葉が頻繁に用いられるようになった背景には、米国をはじめとする欧米諸国を中心とした国際社会の対中警戒感がある。

 中国は主に米国に対し、長年、政治・経済・文化といったあらゆる分野において、なりふり構わぬやり方で戦略的なパブリック・ディプロマシーを展開してきた。その影響力は着実に効果を出し、2010年~2013年頃には、「アジアのなかで最も重要なパートナー」を、中国と見る米国世論が、

続きを読むには会員登録が必要です。

© 2020 ZENBOOKS,Inc. All Rights Reserved.
要約記事は出版社または著作者から適法に許諾を取得し、作成・掲載しています。本記事の知的所有権は株式会社ゼンブックスに帰属し、本記事を無断で複製、配布、譲渡することは固く禁じます

特集