『人口減少社会のデザイン』
(広井良典/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 日本は 2011年以降毎年人口が減り続け、一方で医療や介護などの社会保障費は増大し続けている。今後の日本は、旧来型の「拡大・成長」志向ではなく、「持続可能性」を念頭に置いた経済、社会システムの構築が急務ではないか。そう考えたときに、現在の日本社会にはどのような課題があり、どのような変革が必要であるかを論じたのが本書だ。

 日本の人口について、著者は「ある程度減ってもよいが、減り続けることは問題である」という立場だ。そして、人口が一定数を維持する「定常型社会」実現のシナリオとして、「地域分散型」の仕組みを提言。地方に人口が分散されるためのローカル志向の若者支援策やや、新たな社会保障の枠組みといった具体策を解説する。

 著者は、京都大学こころの未来研究センター教授で、公共政策及び科学哲学を専門とし、独自のコミュニティ論や死生観研究でも注目される人物。本書では、人類史という超長期間における人口の拡大・成長の概観、死生観の再構築など、幅広い切り口から人口減少社会を考察している。今後の日本の先行きを案じるすべての人に必読の一冊だ。

著者:広井 良典(Hiroi Yoshinori)
 京都大学こころの未来研究センター教授。1961年岡山市生まれ。東京大学・同大学院修士課程修了後、厚生省勤務を経て96年より千葉大学法経学部助教授、2003年より同教授。この間マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。16年4月より現職。専攻は公共政策及び科学哲学。社会保障や環境、医療、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア、死生観等をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行っている。
 『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書)で第9回大佛次郎論壇賞を受賞。その他の著書に『ケアを問いなおす』『死生観を問いなおす』『持続可能な福祉社会』(以上ちくま新書)、『日本の社会保障』(第40回エコノミスト賞受賞)『定常型社会』『ポスト資本主義』(以上岩波新書)、『生命の政治学』(岩波書店)、『ケア学』(医学書院)、『人口減少社会という希望』(朝日選書)など多数。
イントロダクション AIが示す日本社会の未来―2050年、日本は持続可能か?
第1章 人口減少社会の意味―日本・世界・地球
第2章 コミュニティとまちづくり・地域再生
第3章 人類史の中の人口減少・ポスト成長社会
第4章 社会保障と資本主義の進化
第5章 医療への新たな視点
第6章 死生観の再構築
第7章 持続可能な福祉社会―地球倫理の可能性

要約ダイジェスト

2050年、日本は持続可能か?

 現在の日本社会は「持続可能性」という点において“危機的”と言わざるをえない。特に次のような点が象徴的な事柄である。

(1)財政あるいは世代間継承性における持続可能性
 日本政府の債務残高は 1,000兆円という、国際的に見ても際立って大きな規模で、私たちは膨大な借金を将来世代にツケ回している。この背景には、「経済成長がすべての問題を解決してくれる」という高度経済成長時代の発想を今も引きずっている点がある。「人口減少社会のデザイン」において重要なのは、こうした「拡大・成長」型のから抜け出していくことだ。

(2)格差拡大と人口における持続可能性
 高度成長期を通じて貧困世帯は一貫して減っていったが、1995年を谷として生活保護を受ける人の割合は増加に転じ、その後も着実に増えている。日本においては若者に対する社会保障その他の支援が国際的に見てきわめて手薄である。特に若い世代の雇用や生活が不安定になり、未婚化・晩婚化が進んでいる。それが出生率の低下につながり、人口減少をさらに加速させるという悪循環となるのだ。

(3)コミュニティないし「つながり」に関する持続可能性
 家族などの集団を超えたつながりや交流がどのくらいあるかを調査すると、残念ながら日本は、先進諸国の中で社会的孤立度がもっとも高い国になっている。現在の日本社会は、古い共同体(農村社会など)が崩れて、それに代わる新しいコミュニティができていない状況にある。

 こうした事実に示されるように、現在のような政策や対応を続けていれば、「2050年、日本は持続可能か」という問いに対して、「持続可能シナリオ」より「破局シナリオ」に至る蓋然性が高い。このような問いに対し、分野横断的な視点から

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