『支配の構造 国家とメディア』
(堤 未果、中島岳志、大澤真幸、高橋源一郎/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年、インターネットによる玉石混交な情報の氾濫やフェイクニュース、大手マスコミの忖度による自主規制などによって、メディアに対する人々の不信感が高まっている。そんな中、名著を紹介する人気番組『100分de名著』の特別編『100分deメディア論』(2018年)が放送され、気鋭の論客たちによる熱い討論が大きな反響を呼び起こした。

 本書はその続編として、当時の出演者が新たなメディア論の名著を手に、誌上で議論を深めていくものだ。国際ジャーナリスト 堤未果氏は『メディアの権力』、政治学者 中島岳志氏は『アメリカのデモクラシー』、社会学者 大澤真幸氏は『創造の共同体』(ベネディクト・アンダーソン)、作家 高橋源一郎氏は『華氏 451度』をそれぞれ解説する。

 ドキュメンタリーから思想書、SF小説まで、個性豊かな名著に触れながら、読者は現代におけるメディアの役割や政治との距離、資本主義社会や戦争との関係など、様々なテーマを考えさせられるだろう。現代人に必須の教養として、日頃政治・経済ニュースに接することの多いビジネスパーソンもぜひご一読いただきたい。

著者:堤 未果(Tsutsumi Mika)
 国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。 ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。 米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、 現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。 「アメリカ弱者革命」で日本ジャーナリスト会議黑田清賞。 2008年「ルポ貧困大国アメリカ」(3部作)で中央公論新書大賞。 2009年に同著で日本エッセイストクラブ賞。 2010年「岩波書店100周年?読者が選ぶ岩波本」で著書二冊がトップ10入り。 多数の著書は海外でも翻訳されている。 「沈みゆく大国アメリカ」「政府は必ず嘘をつく」「社会の真実のみつけ方」「日本が売られる」など著書多数。

中島 岳志(Nakajima Takeshi)
 1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、2017年8月現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』で大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『インドの時代』『秋葉原事件』『パール判事』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『ナショナリズムと宗教』『アジア主義』など。

大澤 真幸(Osawa Masachi)
 1958年、長野県松本市生まれ、社会学者。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。社会学博士。千葉大学文学部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任。専門は理論社会学。2007年、『ナショナリズムの由来』で毎日出版文化賞を、2015年、『自由という牢獄――責任・公共性・資本主義』で河合隼雄学芸賞を受賞。主な著書に『〈自由〉の条件』『夢よりも深い覚醒へ』『日本史のなぞ』『可能なる革命』『〈世界史〉の哲学』、共著に『ふしぎなキリスト教』などがある。

高橋 源一郎(Takahashi Genichiro)
 1951年生まれ。1981年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長篇小説賞優秀作受賞。1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞受賞。2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞受賞。著書に『ニッポンの小説』『「悪」と戦う』『恋する原発』他多数。

はじめに
第1章 政治権力とメディア(堤未果)ハルバースタム 『メディアの権力』
第2章 民意の暴走は止められるか(中島岳志)『アメリカのデモクラシー』トクヴィル
第3章 ナショナリズムの取り扱い方(大澤真幸)『定本 想像の共同体』ベネディクト・アンダーソン
第4章 「本を燃やす」のは誰か(高橋源一郎)『華氏 451度』レイ・ブラッドベリ
終 章 メディアの生きる道

要約ダイジェスト

政治権力とメディア(堤未果)~ハルバースタム『メディアの権力』

中流がジャーナリズムを支えた時代

 『メディアの権力』は、ワシントン・ポスト、タイム、ロサンゼルス・タイムズ、CBSという、アメリカを代表する4大メディアの勃興と発展、そして彼らと政治権力との癒着、葛藤を描き出した名著だ。全4巻の大作だが、本書では、ベトナム戦争をめぐる政府の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を中心に紹介する。

 この本を選んだ理由は3つある。まずこの作品には、現場の「息づかい」がしっかりと描かれていることだ。それまで事実を淡々と書いていくのが王道とされていたジャーナリズム界で、取材対象の内面に入り込み、「人間」を通じて事実を見つめる「ニュージャーナリズム」という手法が生まれた。その旗手の一人が、ベトナム戦争報道でピュリッッァー賞を受賞したジャーナリスト、デイヴィッド・ハルバースタム(著者)だ。

 2つ目の理由は、『メディアの権力』が書かれた時の社会的構造を知ることが、現代メディアを考える大きなヒントになるからだ。ジャーナリストがいくら素晴らしい理想を掲げていても、社会や大衆の支えがなければ、それを貫くことは難しい。報道の自由と知る権利、権力とのチェック&バランスが保たれることで、民主主義が機能するのだ。

 この均衡がうまく取れていたのが、ここで描かれている 1960年代のアメリカだった。この時代は、50年代に席巻したマッカーシズムからの揺り戻しで、社会全体がもう一度「自由と民主主義」を守ろうという空気に満ちていた。

 そしてもう一つ、当時のアメリカには、「豊かな中流」がたくさんいた。極端な二極社会の現代と違い、「中間層」が多くを占めている社会は、社会の理想や未来、それを支える公共というものについて考える余裕がある。自由と民主主義のアメリカに住んでいること、自分がアメリカ人であるという「誇り」が、広く共有されていたのだ。

 だからこそ、ペンタゴン・ペーパーズは、米国民を深く傷つけた。中でも国民にとって最も衝撃的だったのは、

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