『アンチ整理術』
(森 博嗣/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 「片づけ」「整理・整頓」「断捨離」などをテーマにした書籍は数多く出版されており、その多くは、効率化などによる仕事力の向上などを目的としている。しかし、本書は、冒頭から「整理・整頓には精神的効果しかない」と一刀両断する。物理的な整理・整頓は、「しなくてもよいもの」であり、実際に、著者の部屋は散らかり放題だという。

 その代わりに必要なのが、自分自身の思考の整理や、人間関係の整理、さらには人間としての生き方の整理である。AIやインターネットの発展が進む現代では、無関係の知識を関係づけて新しい問いやアイデアを発想する力や、自己を客観視し、一貫した言動を取れる人間としての「片づき度」こそが大切になってくるのだ。

 著者は、小説家としてドラマ・アニメ化された『すべてがFになる』などのベストセラー作品があり、工学博士としての顔も持つ森 博嗣氏。いわゆる整理・整頓が好きな方こそぜひご一読いただきたい。エッセイ風の語り口で読みやすいが、ノウハウや方法論に踊らされない人生や自己を築くうえで貴重な示唆が得られるはずだ。

著者:森 博嗣(Mori Hiroshi)
 工学博士。某国立大学の助教授として勤務する傍ら1996年に、『すべてがFになる』(講談社文庫)で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。同作は、まんが化、ドラマ化、アニメ化などされ、多くのクリエータに影響を与えた。
 以降、犀川助教授&西之園萌絵の「S&Mシリーズ」、瀬在丸紅子たちの「Vシリーズ」(共に講談社文庫)ほかのミステリィ、『女王の百年密室』(講談社文庫)、押井守監督によりアニメ映画化された『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品を発表。『「やりがいのある仕事」という幻想』『夢の叶え方を知っていますか?』(共に朝日新書)、『孤独の価値』『作家の収支』(幻冬舎新書)、『なにものにもこだわらない』(PHP研究所)など、ビジネスパーソンの抱える疑問や興味に焦点を当てた単行本、新書も多数刊行している。
第1章 整理・整頓は何故必要か
第2章 環境が作業性に与える影響
第3章 思考に必要な整理
第4章 人間関係に必要な整理
第5章 自分自身の整理・整頓を
第6章 本書の編集者との問答
第7章 創作における整理術
第8章 整理が必要な環境とは

要約ダイジェスト

整理をしない整理術

 僕の仕事場は、かつての研究室も実験室も、今の書斎も工作室も、すべて例外なくもの凄く散らかっている。こういう場所で、僕は研究をしてきたし、今は創作をしている。したがって、僕にはその方面の「整理術」というものはない。

 はっきりいってしまうと、必要がなかったのだ。整理する時間があったら、研究や創作や工作を少しでも前進させたい、と思っていた。無駄なことに時間を使うなんて馬鹿げている。すなわち、これが僕の「整理術」である。

 結局のところ、整理・整頓とは、元気を出すため、やる気になるためにするものである。それなのに、仕事ができるようになる、発想が生まれる、効率を高める、などと余計な効果を期待するから、勘違いが生まれるのだ。

 散らからないように、いちいち片づけながら仕事をすれば、整理・整頓をする必要がない。こういった状態を、多くの職場、作業場が奨励している理由は、多数の人間が入れ替わり立ち代わり、その場所を使うからだ。このような共有スペースは、ものが整理・整頓されていないと、混乱を来し、明らかに非効率となる。

 1人で仕事をしていれば、何がどこにあるのか、だいたい本人が把握している。出した道具をいちいち片づけないのは、またすぐに使うからだ。逆にいえば、その状態が自分にとっては「効率的」なのである。散らかっても、作業が進めば、それが正解だろう。

 整理・整頓をして、仕事の効率が上がるとは思えないが、それでやる気を出して、仕事がばりばりできる、という人もいる。これは物理的な条件ではなく、精神的な条件でこうなっているので、個人がそれぞれ、自分にとって効果が上がる方を選択するのが良い。

 どんな方法が自分に効くのかは、

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