『AIに負けない子どもを育てる』
(新井 紀子/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 2011年に開始された、AIによる東大合格を目標にした通称「東ロボ」開発プロジェクトは、一定の成果をあげながらも、東大合格は厳しいとの結論に達しつつある。その要因が、AIの「読解力」だ。AIの自然言語処理技術は、統計と確率の手法に基づいており、文章の意味を本当には理解していない。それゆえ長文読解や図の理解が難しかったのだ。

 さらに、同プロジェクトを主導した著者が AIの読解力向上のために開発したリーディング・スキルテスト(RST)で、多くの中高校生や大人も、中学校の教科書レベルの文章を正確に理解できていなかったことがわかった。しかも AIのようにキーワードを拾う読み方をしていた。この読み方では、計算と記憶能力に秀でる AIには当然勝てない。

 本書はベストセラーとなった『AI vs.教科書が読めない子どもたち』の続編として、実際の RSTや全教科の基礎となる読解力を育む手法を解説。著者は国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長、一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。未来のAI社会に不安を感じるビジネスパーソンや親世代はぜひご一読いただきたい。

著者:新井 紀子(Arai Noriko)
 国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長。一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院を経て、東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。
 2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。
 主著に『数学は言葉』(東京図書)、『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)、『ロボットは東大に入れるか』(新曜社)などがある。特に、2018年に出版した『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)では、大川出版賞、石橋湛山賞、山本七平賞、日本エッセイスト・クラブ賞、ビジネス書大賞などを受賞した。
第1章 AIの限界と「教科書が読めない子どもたち」
第2章 「読める」とはなんだろう
第3章 リーディングスキルテスト、体験!
第4章 リーディングスキルテストの構成
第5章 タイプ別分析
第6章 リーディングスキルテストでわかること
第7章 リーディングスキルは上げられるのか?
第8章 読解力を培う授業を提案する
第9章 意味がわかって読む子どもに育てるために
第10章 大人の読解力は上がらないのか?

要約ダイジェスト

「東ロボ」からリーディングスキルテスト(RST)へ

 私は2011年から「ロボットは東大に入れるか」(通称:東ロボ)という人工知能のプロジェクトを率いてきた。AI技術、特に確率と統計を駆使する機械学習を用いて、AIが日本の大学入試、特に最高峰である東大入試を突破できるかを10年かけて明らかにするプロジェクトだ。

 東ロボは、第3次AIブーム直前に、現センター入試のデータが最大量蓄積されているタイミングでプロジェクトをスタートし、AIバブル真っ最中に有名私立大学合格可能性80%以上という成績を残してAIの可能性を明確にした。

 その上で、エラーを徹底分析して、国語や英語で半分以上の配点を占める長文読解に対して歯が立たないこと、イラスト理解の目途が立たないこと、常識を身につけさせられないことなどから、東大突破は無理であろうことを示した。

 プロジェクト当初からわかっていたが、大学入試問題は、現在のAI技術、特に自然言語処理技術のベンチマークとしては大きな課題があった。過去問が圧倒的に少なすぎるのことに加えて、センター入試の問題は複雑すぎて、「なぜ解けたのか、なぜ解けなかったのか」を(数学以外の科目では)的確に解釈できないことだ。

 そうして生まれたのが、もっと単純で、より広範囲に難易度も分布している問題群であるリーディングスキルテスト(RST)だ。RSTでは、「事実について書かれた短文を正確に読むスキル」を以下の6分野に分類して、

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