『グーグルが消える日 Life after Google』
(ジョージ・ギルダー/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 アメリカの巨大 IT企業の中でも、グーグルは単なる一企業の枠を超え、無料のインターネットインフラとして「世界のシステム」となった点で特殊である。本書は、そんなグーグルがつくり上げた現在のインターネットの世界とその限界を指摘する警世の書だ。グーグルが抱える致命的な問題点を指摘し、「グーグル後の世界」の展望を示す。

 例えば、不要な広告で埋め尽くされるグーグルの無料システムは、金銭の代わりに、ユーザーの「時間」を奪っている。さらに、無料であるがゆえ、セキュリティのへの配慮不足が問題となっている。そこから見えてくる「グーグル後の世界」では、セキュリティは基本構造となり、情報の集中化よりも分散化が進むことになるという。

 著者はアメリカの経済学者・未来学者で、1993年にデジタル携帯電話の登場を予言し、投資家やジャーナリストとしても活動している人物。いまや大多数の日本人にとって常識と化しているグーグルの世界と、少しずつ兆しが見えつつある「グーグル後の世界」との差異やビジネスチャンスを把握するには最適の1冊だ。

著者:ジョージ・ギルダー(George Gilder)
 アメリカの経済学者および未来学者。1939年ニューヨーク州生まれ。ハーバード大学卒業後、リチャード・ニクソン、ネルソン・ロックフェラーなどのスピーチライターを経て、サプライサイド(供給重視)経済学の研究者へ転身。
 1981年に刊行した『富と貧困』斎藤精一郎訳(日本放送出版協会)がベストセラーとなる。1993年にデジタル携帯電話の登場を予言した『テレビの消える日』森泉淳訳(講談社)は、スティーブ・ジョブスに大きな影響を与えたといわれる。2000年に刊行した『テレコズム』葛西重夫訳(SBクリエイティブ)では、「通信網の帯域幅は6ヶ月で2倍に広がる」というギルダーの法則を提唱。現在は研究活動の傍ら、投資家やジャーナリスト、技術評論家、作家としても積極的に活動している。

訳者:武田玲子(Takeda Reiko)
 慶應義塾大学商学部卒。大手企業で長年にわたり広報業務を経験後、翻訳に携わる。『価格の心理学』『クリエイターズ・コード』(日本実業出版社)など、主にビジネス、マネジメント分野の翻訳を手がけている。

第1章 まもなく「グーグルの世界」が終わる
第2章 グーグルが築いた「世界システム」とは?
第3章 グーグルの“ルーツ”を探る
第4章 限界を迎えた「無料」戦略
第5章「グーグル後の世界」10のルール
第6章 グーグルの心臓「データセンター」の実情
第7章 「機械学習」は本当に成功するのか?
第8章 人間を超越した金融取引の秘密
第9章 AIは、人間を超えられない
第10章 シリコンバレーに新風を巻き起こす若者たち
第11章 ビットコインは「救世主」なのか?
第12章 ビットコインの創設者?クレイグ・ライトの主張
第13章「グーグル後の世界」を牽引する企業の誕生
第14章「インターネット」をグーグルから奪還せよ!
第15章「プログラミング言語の生みの親」の挑戦
第16章 縁
第17章「スカイ・コンピューティング時代」の幕開け
第18章 アメリカの「進化」を阻む大学教育の弊害
第19章 通信業界の規制を乗り越えろ!
第20章 グーグル帝国の逆襲
第21章 ビットコインには「欠陥」がある?
第22章 大規模な「アンバンドリング」

要約ダイジェスト

まもなく「グーグルの世界」が終わる

 インターネット上のセキュリティーは、明らかな崩壊を迎えており、金融や保険など多くの業界は、すでにネットワークへの接続を遮断している。企業の安全性を保障する方法は「大切なものはネットに接続しない」という戒めしかなく、シリコンバレーもほぼお手上げ状態だ。

 セキュリティーシステムが崩壊し始めたのは、コンピュータ業界にいる者たちが機械の能力を妄信し、人間の能力の限界について傲慢な言葉を発するようになってからだ。シリコンバレーでは「新マルクス主義」とでもいうようなイデオロギーや技術的展望を取り入れ始めた。

 マルクスは典型的な知識人で、自分が生きる時代が人類の歴史の最後のステージだと考えていた。シリコンバレーの巨人たちも同じ考え違いをしており、蒸気機関や電気に代わってシリコンマイクロチップや人工知能、機械学習、クラウドコンピューティング、アルゴリズムを使った生物学、ロポットエ学などの現代技術が、人間の「最終的」な功績だと信じている。

 その発想はまさに近視眼的で、自分たちの時代の成果や考え方、さらに自分たち自身を過大視している。現在のセキュリティー、プライバシー、

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