- 本書の概要
- 著者プロフィール
実は、大坂選手は元々シャイな性格で、試合中の感情コントロールも苦手だったという。彼女の精神力は、コーチとの二人三脚の努力によって培われたものだったのだ。テニスは特にメンタルの状態が勝敗を左右するといわれるが、一読すれば、強靭な精神力や集中力が役立つのはビジネスパーソンでも変わらないことがわかるはずだ。
本書で紹介されるメンタル強化やプレッシャーへの対処、コーチング手法は、「すべてが願い通りには進まないことを認める」「プロセスに集中する」「日記をつける」など、意外にも一般人でも取り入れやすいものばかりだ。難易度の高いビジネスシーンで成果を出したい方はもちろん、部下や後輩の育成に携わる方もぜひご一読いただきたい。
テニスコーチ。1984年生まれ、ドイツ人。ヒッティングパートナー(練習相手)として、セリーナ・ウィリアムズ、ビクトリア・アザレンカ、スローン・スティーブンス、キャロライン・ウォズニアッキと仕事をする。
その後2018年シーズンから当時世界ランキング 66位だった大坂なおみのヘッドコーチに就任すると、日本人初の全米オープン優勝に導き、WTA年間最優秀コーチに輝く。2019年には、全豪オープンも優勝し四大大会連続優勝し、ついに世界ランキング1位にまで大坂なおみを押し上げたところで、円満にコーチ契約を解消。
訳者:高見 浩(Takami Hiroshi)
1941年、東京生まれ。出版社勤務を経て翻訳家に。主な訳書にヘミングウェイ『日はまた昇る』、ハリス『ハンニバル』(以上新潮文庫)、プレストン『ホット・ゾーン』(飛鳥新社)など。
2章 プレッシャーもストレスも手なづける
3章 感情の力を使う
4章 勝ち続ける
5章 人生も「心の力」で動かせる
エピローグ なおみとの別れ
特別公開 サーシャ・バインの 2018全米オープン日記
要約ダイジェスト
「すべてが願い通りには進まない」と最初にあきらめておく
強いメンタルを手に入れるにはどうすればいいか。大切なのは、「この世には自分の力では左右できないことがあるという事実を認めること」だ。
さもないと、平常心を保てないからである。それを認められないと、つい感情に流されてしまい、判断力に曇りが生じ、その結果「自分のいちばんすべきこと」を見失ってしまうのだ。
2019年の全豪オープンでは、世界ランク1位の座を目指して名だたる女子プレイヤーが熱戦をくり広げることになっていた。なおみが勝ち抜くための最善のシナリオは何か。それを実現するにはどうすればいいか。トーナメント開始に先立つ数日間、私は、ああでもない、こうでもない、と頭を絞っていた。
考えあぐねた末に、私はこう決断したーそんなことで頭を悩ませてどうなる。自分はただ、なおみが勝ちつづけるように力を貸せばいいんだ。結局、私は、なおみが最善のウォームァップ、最善の練習、最善の準備ができるように、ただそれだけに集中した。2週間にわたるトーナメントが終わったとき、なおみは全豪オープンのチャンピオンと世界ランク1位の座を、共に手中にしていた。
大きな野心がなければ戦えない。小さな目標がなければ勝てない
成功への道は、野望の階段でもある。ところが、テニスプレイヤーを含めて、熱くたぎるような野望に燃える者は意外に少ない。たいていのプレイヤーは、準々決勝、あるいは準決勝にたどり着けただけで満足してしまうのだ。
自分は本当に勝利への野心を抱いているかどうか、一度、正直に自分を見つめ直そう。野心を抱いてこそ、