- 本書の概要
- 著者プロフィール
そこで本書では、最新のアカデミズムの成果や実践から生まれたフレームワークを紹介し、ファミリー企業の強みの活かし方と経営課題の解決手法を解説。ファミリー企業における組織や戦略、リーダーシップ、イノベーション、ガバナンス、後継者育成といった重要テーマのセオリーが物語形式とケーススタディでわかりやすく解き明かされている。
著者はノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院「ファミリー企業センター」前センター長のジャスティン・B・クレイグ氏とボンド大学名誉教授ケン・ムーア氏。日本語版には日本を代表するファミリー企業である星野リゾート・星野佳路社長の解説も収録。オーナー企業関係者や長期的な事業展開を目指す経営層はぜひご一読いただきたい。
米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の「ファミリー企業センター」の前センター長。同校ではファミリー・ビジネス担当教授。また、彼の出身校であるオーストラリアのボンド大学の起業家担当教授として活動しているかたわら、日本を含む数カ国のファミリービジネス・オーナーへの直接のアドバイスも行っている。
著者:ケン・ムーア(Ken Moores, Ph.D)
ボンド大学(オーストラリア)ファミリービジネスセンター創設センター長。同大学名誉教授。
解説:星野佳路(Hoshino Yoshiharu)
星野リゾート代表取締役社長。長野県軽井沢町で創業した温泉旅館の4代目の経営者。慶應義塾大学経済学部卒業。米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。1991年に家業を継ぐ。
訳者:東方雅美(Toho Masami)
翻訳者、ライター。慶應義塾大学法学部卒業。米バブソン大学経営大学院修士課程修了(MBA)。日経BPやグロービスなどでの勤務を経て独立。
第1部 組織としてのファミリービジネス
マクダフ家の紹介
ファミリービジネスのアーキテクチャー
ファミリービジネスのガバナンス
ファミリービジネスと起業家精神
スチュワードシップとは)
第2部 ファミリービジネスを率いるためのリーダーシップ
リーダーとしての役割
スチュワード“受託責任者”としての仕事
アーキテクト“設計者”としての仕事
ガバナー“統治者”としての仕事
アントレプレナー“起業家”としての仕事
自覚し、学び続ける
補遺 最後のケーススタディ
要約ダイジェスト
組織としてのファミリービジネス
ファミリー企業を率いるのは、地球上で最も喜びがあり、同時に最も困難な仕事だ。ファミリー企業の日常とは、「白か黒か」ではなく、「白も黒も」が求められる世界でもある。ビジネスとファミリーの両方をうまく操らなければならないからだ。
これはある意味でパラドックスだが、パラドックスは「解決する」ものではなく「コントロールする」ものである。さらに言えば、ファミリー企業が直面するのは、事業とファミリーとの間で選択を迫られるといった「ジレンマ」ではなく、3つの状況のなかで揺れ動く「トリレンマ」である。
例えば、過去と現在と未来に同時に対処する、ファミリーとオーナーと経営執行者を満足させる、といった状況であり、3つの観点からものごとを考えることに慣れる必要がある。
ファミリー企業と非ファミリー企業との違いを表す方法としては、「スリー・サークル・フレームワーク」が世界的に受け入れられている。簡単に言うと、ファミリー企業とは、ファミリー、経営執行者、オーナー(所有者/株主)という3つのサブシステム(下部構造)が、重なり合い、作用し合い、依存し合っているシステムであるということだ。
このモデルは、リーダーとしてのさまざまな役割を理解するうえで、また、他の人たちの考え方を理解するのにも役に立つ。例えば、私は現在3つの円すべてで役割を担っている一方で、わたしの叔母はオーナーであり、ファミリーでもあるが、この会社で働いたことがないので私とは異なる見方を持っている。
さらに、ファミリービジネスについて効率的に考えるために役立つ「AGESフレームワーク」を紹介しよう。これは、ファミリー企業に独自の特徴が見られる分野、すなわち、アーキテクチャー(Architecture)、ガバナンス(Governance)、起業家精神(Entrepreneurship)、スチュワードシップ(Stewardship)についての