『MMT現代貨幣理論入門』
(L・ランダル・レイ/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年、最新の経済理論である MMT(Modern Money Theory:現代貨幣理論)が世界中で話題になっている。その趣旨は簡単に言えば「通貨発行権を持つ国は、債務返済に充てる貨幣を際限なく発行できるため、財政赤字が拡大しても問題ない」というものだ。そのため、先進国最大の財政赤字に苦しむ日本でも賛否両論の議論が活発化している。

 本書は、そんな MMT理論の第一人者による、MMT入門書の決定版だ。貨幣や租税、国債の本質にさかのぼりその理論の裏付けを明確に述べるだけでなく、「就業保証プログラム」など、政策提言もふんだんに盛り込まれている。MMTの政策はハイパーインフレを引き起こすのではないか、といった疑問に対しても丁寧に反駁している。

 著者の L・ランダル・レイ氏は ニューヨークのバード大学教授兼レヴィ経済研究所上級研究員で、MMT理論の提唱者の一人。いち早く MMTを日本に紹介した評論家の中野剛志氏と、立命館大学経済学部教授 松尾匡氏による解説も収録されており、懐疑派の方もぜひご一読いただきたい。日本経済復活への歴史的転換点となるかもしれない一冊だ。

著者:L・ランダル・レイ(L.Randall Wray)
 経済学者、ニューヨークのバード大学教授兼レヴィ経済研究所上級研究員。セントルイスのワシントン大学在籍中はハイマン・P・ミンスキーに師事。専門は、貨幣理論と金融政策、マクロ経済学、金融不安定性、雇用政策。ポスト・ケインジアンの代表的研究者・論客の一人。パシフィック大学で学士号、セントルイスのワシントン大学で修士号および博士号を取得。ローマ大学、パリ大学、ベルガモ大学、ボローニャ大学、メキシコ国立自治大学の客員教授や、ミズーリ大学カンザスシティ校の教授等を歴任し、現在に至る。著書に、Understanding Modern Money:The Key to Full Employment and Price Stability(現代貨幣を理解する─完全雇用と物価安定の鍵、1998)、Money and Credit in Capitalist Economies(資本主義経済における貨幣と信用、1990)、Why Minsky Matters(ミンスキーはなぜ重要なのか、2015)がある。

解説:中野 剛志(Nakano Takeshi)
 評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism) でNations and Nationalism Prizeを受賞。
 著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』『世界を戦争に導くグローバリズム』(ともに集英社新書)、『国力論』(以文社)、『真説・企業論』(講談社現代新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『富国と強兵─地政経済学序説』(東洋経済新報社)、『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)などがある。

解説:松尾 匡(Matsuo Tadasu)
 立命館大学経済学部教授。1964年、石川県生まれ。専門は理論経済学。著書に河上肇賞奨励賞を受賞した『商人道ノスヽメ』(藤原書店)、『不況は人災です! 』(筑摩書房)、『「はだかの王様」の経済学』(東洋経済新報社)、『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)など。共著に『これからのマルクス経済学入門』(筑摩書房)、『マルクスの使いみち』(太田出版)、『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう─レフト3.0の政治経済学』『「反緊縮!」宣言』(ともに亜紀書房)などがある。

監訳:島倉 原(Shimakura Hajime)
 株式会社クレディセゾン主任研究員。1974年、愛知県生まれ。1997年、東京大学法学部卒業。株式会社アトリウム担当部長、セゾン投信株式会社取締役などを歴任。経済理論学会および景気循環学会会員。会社勤務の傍ら、積極財政の重要性を訴える経済評論活動を行っている。著書に『積極財政宣言─なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論)。

翻訳:鈴木 正徳(Suzuki Masanori)
 1964年生まれ。都立西高校、早稲田大学法学部卒業。1987年、第一勧業銀行入行。2002年よりローンスター・ファンド等、複数の投資ファンド系資産運用会社に勤務。現在はフリーランス。

巻頭解説 「現実」対「虚構」~MMTの歴史的意義(中野剛志)
序 論 現代貨幣理論の基礎
第1章 マクロ会計の基礎
第2章 自国通貨の発行者による支出
第3章 国内の貨幣制度
第4章 自国通貨を発行する国における財政オペレーション
第5章 主権国家の租税政策
第6章 現代貨幣理論と為替相場制度の選択
第7章 主権通貨の金融政策と財政政策
第8章 「完全雇用と物価安定」のための政策
第9章 インフレと主権通貨
第10章 結論:主権通貨のための現代貨幣理論
巻末解説 MMTの命題は「異端」ではなく、常識である(松尾匡)

要約ダイジェスト

現代貨幣理論の基礎

 MMT(現代貨幣理論)の研究は、思想史、経済史、貨幣理論、失業と貧困、金融と金融機関、部門収支、景気循環と危機、金融政策と財政政策を含む、経済学の様々な分野に及んでいる。MMTが導き出す結論は、通俗観念に染まった多くの人々にとってショッキングなものである。

 まず、MMTは、政府の財政は家計や企業のそれとはまったくの別物だと主張する。これは、ほとんどの人々にとって、身近で重要な信念に対する最大の異議申立だ。我々は、「わが家の家計が連邦政府予算と同じような状態だったら、破産してしまう」「それゆえ、政府の赤字を抑制しなければならない」と常々聞かされているが、MMTによればこのアナロジーは誤りだ。

 主権を有する政府が、自らの通貨について支払不能となることはあり得ない。自らの通貨による支払期限が到来したら、政府は常にすべての支払いを行うことができるのである。それどころか、政府が支出や貸出を行うことで通貨を創造するのであれば、政府が支出するために租税収入を必要としないのは明らかである。

 さらに言えば、納税者が租税を支払えるようにするために、まず政府が支出をしなければならない。このことは、200年前なら明白だった。国王が支出のために文字どおり硬貨を打ち抜き、その後、租税の支払いを自らの硬貨で受け取っていた。

 現代の政府は、政府に代わって支払いと受取りを行う自らの銀行(中央銀行)を有している。そのため、

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