『INSANE MODE インセイン・モード』
(ヘイミッシュ・マッケンジー/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年「CASE」という言葉がメディアを賑わしている。コネクティッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリング(Shared)、電気化(Electric)の頭文字をとったもので、自動車産業に起こりつつある 100年に一度の大変革の方向性を示すものだ。それに伴って、スタートアップや異業種からの参入も相次いでいる。

 その先駆けとなったのが、決済事業 Paypalの創業、宇宙ビジネスのスペースXなどの経営に携わるイーロン・マスク氏率いるテスラ・モーターズだ。本書では徹底した取材に基づき、起業家としてのマスク氏やテスラの経営に迫る。さらに、既存自動車メーカーや石油業界、中国の新世代スタートアップなどの現状と未来を明らかにしている。

 著者はテスラ在籍経験があり、自身も出版スタートアップを経営するジャーナリストで、マスク氏のある種のインセイン(狂気)に迫るにはうってつけの人物だ。起業やイノベーションを志向する方はぜひご一読いただきたい。「物理の法則に反したことでないかぎり、必ず実現できる」を信念とするマスク氏の動向から目が離せなくなるはずだ。

著者:ヘイミッシュ・マッケンジー(Hamish McKenzie)
“Pando Daily”“The Guardian”などに寄稿するテクノロジー及び社会問題専門のジャーナリスト。イーロン・マスク取材時にその手腕を評価され、テスラに入社する。退職後本書を上梓。出版スタートアップ企業 Substackの共同創業者。

訳者:松本剛史(Matsumoto Tsuyoshi)
 東京大学文学部社会学科卒業。翻訳家。主な訳書にフォード『ロボットの脅威 人の仕事がぱくなる日』ダイヤー『米中 世紀の競争 アメリカは中国の挑戦に打ち勝てるか』(日本経済新聞出版社)、ストレッチャー『目的の力 幸せに死ぬための「生き甲斐」の科学』(ハーパーコリンズ・ジャパン)など。

第一部 イントロダクション
第1章 モーターを動かせ
第2章 加速三・二秒の衝撃
第3章 電気自動車をめぐる戦い
第4章 炎上
第5章 ただの取引(ディール)
第6章 航続距離への不安

第二部 パワー・シフト
第7章 自動車会社を立ち上げる
第8章 カリフォルニア・ドリーミング
第9章 中国の躍動
第10章 巨人が目を覚ます

第三部 開かれた道
第11章 エレクトリック・アベニュー
第12章 石油時代の終わり
第13章 天国か地獄か?
第14章 ルネッサンス行きのクルマに乗って

要約ダイジェスト

加速 3.2秒の衝撃

 初めてテスラのモデルSに乗ったときには、これは車輪のついたコンピューターだと思った。だがその程度の説明では、このクルマの本質を言い尽くせてはいない。私たち人間が動力を得るのに、恐竜時代の遺物を燃やして空気を汚し、大気中に化学物質をまき散らすよりもましな方法がある——テスラはそんな発想の自動車だ。

 この考え方が当てはまるのは、クルマだけにとどまらない。テスラは充電池をエネルギー貯蔵装置としても販売している。2016年にソーラーシティを買収し、商品のラインナップに太陽光パネルも加えてからは、イーロン・マスクはいよいよ自らの意図をあきらかにしてきた。テスラはエネルギー企業であると。

 モデルSはテスラが初めて全面的に自社で製造したクルマであり、内燃エンジンの時代がやがて終わるという可能性を最初に示した存在だった。バッテリーを1回充電すれば、426キロの走行が可能。史上初めて、電気自動車のオーナーが町の外まで遠出をして、電池切れになる前に帰ってこられるようになったのだ。

 最高価格帯が 10万ドルほどの、安いとは言いがたいクルマだが、モデルSはたちまちカルト的な地位を得た。しかし何より重要なのは、

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