『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』
(山口周/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年、欧米有名企業のエリート層がこぞってアートを学ぶ傾向が顕著であり、「アート」的感性の重要性が高まっているという。ビジネスにおいて、論理的・理性的に考える力は重要なスキルだが、実際の企業経営においては、どんなに詳細な分析をしてもうまくいかないことがあるからだ。反対に「直感」からイノベーションが生まれる事例も多い。

 それだけではなく、「法律を侵さなければOK」という合理的考えだけでは、コンプライアンス上の問題を起こす可能性も高い。そこで役立つのが、意思決定における「真・善・美」の感覚、つまり「美意識」なのだ。本書はこうした美意識をいかに経営に取り入れるかを説き、日本のビジネスパーソンのアートブームの火付け役となった一冊。

 著者は組織開発・人材/リーダーシップ育成の専門家である山口周氏。日本企業の多くが論理を重んじる「サイエンス型」経営をしている中、革新的な企業の「アート型」経営の事例に触れると、あせりすら覚えるかもしれない。論理的思考や今の企業のあり方に限界を感じている方、特に経営・マネジメント層にある方にはぜひご一読いただきたい。

著者:山口 周(Yamaguchi Shu)
 1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。
忙しい読者のために
本書における「経営の美意識」の適用範囲
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意響
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?

要約ダイジェスト

論理的・理性的な情報処理スキルの限界

 修士号・博士号を授与できる世界で唯一の美術系大学院大学、ロイヤルカレッジオブアートでは、ここ数年のあいだ、「グローバル企業の幹部トレーニング」を拡大し、名だたるグローバル企業が、各社の将来を担うであろう幹部候補を参加させている。

 彼らは極めて功利的な目的のために「美意識」を鍛えている。なぜなら、これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営では、複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからだ。

 経営における意思決定には「論理」と「直感」、「理性」と「感性」という2つの対比軸がある。ここ 10年ほどの歴史を振り返ってみると、日本企業の大きな意思決定のほとんどは、巧拙はともかくとして「論理・理性」を重視して行われてきた。しかし、「直感」や「感性」を意思決定の方法として用いている会社も少なくない。

 例えばソニーは、「感性」、つまり「美しいか、楽しいか」という「感情に訴えかける要素」を意思決定の基準として設定している。ソニーの代名詞とも言えるウォークマンは、当時名誉会長だった井深大が「海外出張の際、機内で音楽を聴くための小型・高品質のカセットプレイヤーが欲しい」と言い出し、リクエストに応えて開発部門が作製した「特注品」だった。これを創業経営者の盛田昭夫も気に入り、製品化にゴーサインが出されることになったのだ。

 また、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した直後に販売した iMacでは、発売直後に5色のカラーを追加している。この意思決定の際に、ジョブズは製造コストや在庫のシミュレーションを行うことなく、デザイナーからの提案を受けた「その場」で即断。実際に iMacは、アップル復活を象徴する大ヒットとなった。

 現在の一般的な日本人の通念としては「論理と直感」においては「論理」が、「理性と感性」においては「理性」が、それぞれ優位だと考えられがちだが、

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