『繁栄のパラドクス―絶望を希望に変えるイノベーションの経済学』
(クレイトン・M クリステンセン他/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 過去数十年間、豊かな国から途上国や貧困地域に多くの資源が投入されてきた。しかし、貧困にフォーカスし、足りない資源を投下するだけでは、長期的な繁栄は起こらない。これが「繁栄のパラドクス」である。長期的な繁栄が起こるためには、新たな市場を創造する「市場創造型イノベーション」が必要なのだという。

 イノベーションによって市場が創造され、それに伴ってインフラ整備のニーズが生まれるというのが適切な順番なのだ。実際に、日本の道路舗装は、車やオートバイの普及によって大きく進んだ。本書では、市場創造型イノベーションの高い可能性を、経済発展を成し遂げた日本・米国・韓国、現在のアフリカ諸国など、数多くの事例を用いて解説する。

 著者は『イノベーションのジレンマ』などを著したイノベーション論の大家で、ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセン氏ら。新興市場への進出、新規事業や新商品開発に携わる方はぜひご一読いただきたい。企業の短期的成長だけでなく、一国の経済発展まで見据えた新たな視座を手に入れられるはずだ。

著者:クレイトン・M・クリステンセン(Clayton M.Christensen)
 ハーバード・ビジネス・スクールのキム・B・クラーク記念講座教授。12冊の書籍を執筆し、ハーバード・ビジネス・レビューの年間最優秀記事に贈られるマッキンゼー賞を5回受賞。イノベーションに特化した経営コンサルタント会社イノサイトを含む、4つの会社の共同創業者でもある。ビジネス界における多大な功績が評価され、「最も影響力のある経営思想家トップ50」(Thinkers50)に複数回選出されている

エフォサ・オジョモ(Efosa Ojomo)
 クリステンセン研究所に所属し、上級研究員として「グローバル経済の繁栄」部門のリーダーを務める。ハーバード・ビジネス・レビュー、ガーディアン、CNBCアフリカ、イマージングマーケット・ビジネス・レビュー等に論文を発表している。2015年、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得

カレン・ディロン(Karen Dillon)
 ハーバード・ビジネス・レビューの元編集者。コーネル大学、ノースウエスタン大学メディル・ジャーナリズム学院卒業。バンヤングローバル社のエディトリアル・ディレクター。アショカ財団によって世界で最も影響力のある女性のひとりに選出される

訳者:依田 光江(Yoda Mitsue)
 お茶の水女子大学卒。外資系IT企業勤務を経て翻訳の道へ。主な訳書にクレイトン・M・クリステンセン他『ジョブ理論―イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』、アレック・ロス『未来化する社会―世界72億人のパラダイムシフトが始まった』(ハーパーコリンズ・ジャパン)などがある。

序 文
第1章 繁栄のパラドクスとは
第2章 イノベーションの種類
第3章 苦痛に潜む機会
第4章 プル対プッシュ―2つの戦略
第5章 アメリカを変えたイノベーション物語
第6章 アジアの繁栄
第7章 メキシコに見る効率化イノベーションの罠
第8章 イノベーションと制度の関係
第9章 なぜ腐敗は「雇用」されつづけるのか
第10章 インフラのジレンマ
第11章 繁栄のパラドクスから繁栄のプロセスへ
巻末付記 新しいレンズで見る世界
おわりに
日本語版解説

要約ダイジェスト

繁栄のパラドクスとは

 今も7億 5000万人が極度の貧困にあり、1日 1.90ドル以下で生き延びる生活を強いられている。1990年代にモ・イブラヒムが、大半が電話を所有していないどころか、使ったことさえないサプサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカに、携帯電話会社をつくろうと思い立ったとき、正気の沙汰ではないと言われた。

 当時、携帯電話は貧乏人とは無縁の高価な玩具だと思われていたし、そもそも必要ともされていなかった。アフリカのビジネスチャンスを分析しようとすると、誰もがビジネス以前に水や医療や教育がまったく足りていない現実を指摘するばかりだった。しかしイブラヒムは、貧困ではなく機会を見た。

「故郷から離れた場所に住んでいる人が母親に会って話そうと思ったら7日間かかる。いますぐ母親と話せる道具があったら、どれだけありがたいか。どれだけの金と時間の節約になるだろう」。イブラヒムの関心は、地域の人たちが強いられている不便に向いていた。

 不便は「無消費」の表れであることが多い。無消費とはすなわち、潜在的な消費者が生活のなかのある部分を進歩させたいと切望しながら、それに応えるプロダクトを買うだけの余裕がない、あるいは、入手する方法がなかったりする状況を指す。その場合、潜在的な消費者は我慢するか、間に合わせの代替策を編み出すことになり、生活はたいして進歩せず、不便は続く。

資金援助はきわめて少なく、従業員も5人しかいなかったが、彼はアフリカ全土のモバイル通信網の構築を目指してセルテル社を創設した。電力のないところには自力で電力を引き、物流を自力で整備し、従業員の教育と医療も自力で整備した。そしてわずか6年で、

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