『能力を磨く―AI時代に活躍する人材「3つの能力」』
(田坂広志 /著)

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  • 目次
 本格的な AI時代の到来とともに、多くの仕事が AIに置き換えられ、記憶力や論理的思考力に立脚した学歴的能力の優位性は急速に陳腐化していくことが予想されている。そんな時代に失業しないだけでなく、活躍する人材になるためには、人間がもつ AIには代替できない能力を見きわめ、磨いていく必要がある。

 本書では知的労働の現場で求められる能力のうち、AIが代替できない「職業的能力」「対人的能力」「組織的能力」の3つに着目。各能力を分解し、その修得方法まで丁寧に解説している。一読すれば、それらが安易なテクニックやノウハウ論ではなく、人間や組織・社会の本質を見据えたものだと理解できるはずだ。

 著者は、シンクタンク・ソフィアバンク代表、多摩大学大学院名誉教授で、「21世紀の変革リーダー」を目指し多くの経営者・リーダーが集う「田坂塾」を主宰する田坂広志氏。勤め先に頼ることなく自ら能力を磨き、これからの社会で価値を発揮していきたいと考える方はぜひご一読いただきたい。

著者:田坂 広志(Tasaka Hiroshi)
 1951年生まれ。74年東京大学卒業。81年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。同年民間企業入社。87年米国シンクタンク、バテル記念研究所客員研究員。同年米国パシフィック・ノースウェスト国立研究所客員研究員。90年日本総合研究所の設立に参画。10年間に延べ702社とともに20の異業種コンソーシアムを設立。ベンチャー企業育成と新事業開発を通じて新産業創造に取り組む。取締役・創発戦略センター所長等を歴任。現在、同研究所フェロー。2000年多摩大学大学院教授に就任。現在、名誉教授。同年シンクタンク・ソフィアバンクを設立。代表に就任。
 05年米国Japan Societyより、US‐Japan Innovatorsに選ばれる。08年ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのGlobal Agenda Councilのメンバーに就任。10年4人のノーベル平和賞受賞者が名誉会員を務める世界賢人会議Club of Budapestの日本代表に就任。11年東日本大震災に伴い、内閣官房参与に就任。13年「21世紀の変革リーダー」への成長をめざす学びの場、「田坂塾」を開塾。現在、全国から5000名を超える経営者やリーダーが集まっている。著書は、国内外で80冊余
序 話 なぜ、いま、能力を磨かねばならないのか
第一話 「知的職業」の半分が失業する時代が来る
第二話 「学歴社会」は、すでに崩壊している
第三話 AI時代に求められる「職業的能力」とは何か
第四話 AI時代に求められる「対人的能力」とは何か
第五話 AI時代に求められる「組織的能力」とは何か
終 話 「AI失業」という危機は、能力を磨く絶好機

要約ダイジェスト

高度知識社会では、誰にも「3つの能力」が求められる

 これから AIの技術が急速に発達し、世の中に普及し、社会、企業、仕事の在り方を劇的に変え、その結果、人材に求められる条件を根本から変えてしまうだろう。現在、高度知識社会における知的労働の現場で仕事をするためには、以下の5つの能力が求められる。

①基礎的能力(知的集中力と知的持続力)
②学歴的能力(論理的思考力と知識の修得力)
③職業的能力(直観的判断力と智恵の体得力)
④対人的能力(コミュニケーション力とホスピタリティ力)
⑤組織的能力(マネジメント力とリーダーシップ力)

 これに対して、AIが人間に比べ圧倒的な強みを持つ3つの能力は、「無制限の集中力と持続力」「超高速の論理的思考力」「膨大な記憶力と検索力」である。つまり、これまで人間が身につけてきた「①基礎的能力」と「②学歴的能力」の大半が、AIに置き換わってしまう。

 AIはさらに、人間が持つ極めて高度な能力をも凌駕しつつある。それが、AIの第4の強み、「分析力」と「直観力」だ。「ディープ・ラーニング」(深層学習)と「ビッグ・データ」の技術によって、現在の AIは、人間の「直観的判断力」に相当する能力をも発揮できるようになっている。「直観」さえもAIが代替していく時代が、これから本格的に幕を開けるのだ。

 では、AI革命によっても淘汰されない「高度な能力を持つ人材」とは何か。その答えは、明確だ。まず、前者の「2つの能力」だけでできる仕事をしてきた職種や人材は、その多くが淘汰される。逆に、後者の「3つの能力(職業的能力・対人的能力・組織的能力)」を発揮して仕事をしてきた職種や人材は、それが AIに置き換え難い能力であるため生き残る。

 こうした認識は、決して著者だけの考えではない。「AIが代替できない能力」について、

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