- 本書の概要
- 著者プロフィール
ホットケーキといえば、家庭で食べるイメージも強く、単価も高くない。しかも多くのお店は個人経営で、販促費や人件費もあまりかけられない。それでも人気店は様々な工夫をこらして顧客を魅了している。本書では、30店以上の取材をもとに、それらのお店の競争戦略、現場力、マーケティング、経営理念といった経営の秘訣を明らかにする。
著者は、欧州最大の経営コンサルティング会社ローランド・ベルガーの日本法人会長を務め、「現場力」をテーマにした一連のベストセラーもある人気コンサルタント。本書でも、現場力の極致とも言える個人経営の飲食店、ホットケーキという一見ありふれた食べ物で差別化に成功している繁盛店から、様々なビジネスのヒントが学べるはずだ。
ローランド・ベルガー日本法人会長。早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現職。経営コンサルタントとして、戦略策定のみならず実行支援を伴った「結果の出る」コンサルティングとして高い評価を得ている。ローランド・ベルガーワールドワイドのスーパーバイザリーボード(経営監査委員会)アジア初のメンバーに選出された。株式会社良品計画社外取締役。SOMPOホールディングス株式会社社外取締役。日鉄日新製鋼株式会社社外取締役。株式会社マザーハウス社外取締役。株式会社ドリーム・アーツ社外取締役。コープさっぽろ有識者理事。著書多数。
PartI ホットケーキの名店探訪記
PartⅡ ホットケーキの繁盛店から学ぶビジネスで成功するための 10のヒント
エピローグ 豊かさっていったいなんでしょう?
31のホットケーキ名店情報
要約ダイジェスト
ホットケーキにはビジネスのヒントが詰まっている
私にとって、ホットケーキは特別な食べ物だ。その昔、神田須田町に万惣フルーツパーラーというホットケーキの名店があった。小学生のころ、幼い弟と一緒に父に連れていってもらい、はじめてホットケーキを食べたのがそのお店だった。
その万惣が、2012年に忽然と消えてしまった。ひさしぶりに出向くと、「閉店しました」の張り紙が貼られていたのだ。ホットケーキという昭和の偉大な食べ物が「絶滅危惧種」であることに気がついた私は、それ以来、美味しいホットケーキを探し求め、食べ歩くようになった。
繁盛店を訪ね歩き、それぞれのお店がさまざまな工夫を凝らしている様子を知るにつれ、「ホットケーキという食べ物にはビジネスで成功するためのとても大切なヒントが隠されている」ような気がしてきた。ともすると大企業が忘れてしまいがちな「ビジネスの本質」を突くような大事な考え方や取り組みが、そこにはあった。
じつはホットケーキは「ブルー・オーシャン」だ。ありふれていて、面倒くさくて、値段も安いから、一見儲かりそうには思えない。しかも、一般的には「ホットケーキは自宅で食べるもの」と認識されている。だからこそ、参入者が少なく、無競争に近い状態が保たれており、実際、手づくりのホットケーキを出す個人経営のお店は首都圏で 40店舗ほどしかない。
一方、大人気のパンケーキは、じつは「レッド・オーシャン」だ。「外で食べるもの」だと思われているパンケーキは、スイーツ好きをターゲットに参入するお店の数も多く、競争は激しい。生クリームやフルーツで過剰にデコレーションしないと人気が出ないが、そうした演出は簡単に真似されてしまう。しかも、