『GREAT BOSS(グレートボス)—シリコンバレー式ずけずけ言う力』
(キム・スコット/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 自身のキャリアにおいて、「いい上司」とはどのような人物だっただろうか?人によっては任せてくれた上司だったかもしれないし、逆に口うるさい上司のお蔭で成長できたと振り返る人もいるだろう。そうした部下のパフォーマンスと成長を最大限引き出せる上司には共通点があるという。それが「徹底的なホンネ(ラディカル・キャンダー)」だ。

 著者がシリコンバレーで学んだ「徹底的なホンネ」の関係とは、「相手を心から気に掛ける」「言いにくいことをズバリと言う」という2軸からなる上司と部下の最良の信頼関係のことだ。相手を気に掛けるだけでは部下は成長しないし、言うべきことを言うだけでは最終的に愛想をつかした部下は離れて行ってしまうのだ。

 本書では、「徹底的なホンネ」のフレームワークを中心に、部下との信頼関係構築やフィードバック、チームビルディングのメソッドを具体的に解説。著者はアップルやグーグルでの活躍を経て独立、現在は名だたる IT企業のアドバイザーも務めるカリスマコーチ。働きやすさだけではない職場をつくりたい経営者、マネジメント層は必読の一冊だ。

著者:キム・スコット(Kim Scott)
 FCC(米国連邦通信委員会)の上級政策顧問、コソボの小児科医院のマネジメント、モスクワでのダイヤモンド切削工場開設、ソビエト企業基金のアナリストなどの異色のキャリアを経て、ジュース・ソフトウェア(Juice Software)の共同創設者兼CEOに就任。同社破綻後グーグルで、アドセンス、ユーチューブ、ダブルクリックの営業と運用チームを率い、アップル大学の教員を経て、キャンダー・インクを創設。現在、ドロップボックス、ツイッター他、いくつかのハイテク企業でアドバイザーを務めている。夫のアンディー・スコットと双子とともにサンフランシスコのベイエリアに暮らす。また3冊の小説を上梓している。

訳者:関 美和(Seki Miwa)
 慶應義塾大学文学部・法学部卒業。電通、スミス・バーニー勤務の後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。また、アジア女子大学(バングラデシュ)支援財団の理事も務めている。

まえがき
PART1 最高の職場を作る新しいマネジメント手法
 CHAPTER1 「徹底的なホンネ」の関係を築く
 CHAPTER2 「徹底的なホンネ」のフレームワーク
 CHAPTER3 「成長管理」のフレームワーク
 CHAPTER4 「GSDサイクル」
PART2 ツールとテクニック
 CHAPTER5 部下と信頼関係を構築するテクニック
 CHAPTER6 フィードバック文化の作り方
 CHAPTER7 「成長管理」の実践
 CHAPTER8 「GSDサイクル」で結果を出す「ミーティング」のコツ
さあ、はじめよう

要約ダイジェスト

「徹底的なホンネ」こそ最高の職場の人間関係

 上司と部下の関係を模索する場所として、シリコンバレーは理想的な環境だ。理由は「人材競争」がほかのどこよりも激しいからだ。多くの偉大な企業が拡大する中で、社員は不満のある会社に留まる理由はなく、自分の能力が無駄にされていると感じれば、居続ける必要もない。

 だから企業は、上司と部下の間にいい関係を築かなければならないという深刻なプレッシャーを感じている。大企業のリーダーなら、全社員と関係を築くことはできないが、リーダーと直属の部下との関係は、その部下と、その下のメンバーとの関係に影響する。

 その波及効果は組織の隅々に及び、前向きな文化を生み出すこともあれば、文化を破壊することもある。アップルでも、グーグルでも、この世界のどこでも、いい上司になることの中心にあるのは、部下とのいい人間関係なのだ。上司と部下とのいい関係を一番的確に表す言葉、それが「徹底的なホンネ(Radical Candor)」だ。

「徹底的なホンネ」の関係は、相手を「心から気にかけ」ながら、「言いにくいことをズバリと言う」時に生まれる。ホンネをズバリと言うことで、信頼が築かれ、コミュニケーションが生まれ、狙った結果が出るようになる。

 ホンネを出すと相手が怒ったり、仕返しをされるのではないかと心配する人も多いが、ほとんどの場合、相手は腹を割って話せる機会をありがたいと感じるものだ。はじめは怒ったり、ブスッとしても、部下を「心から気にかけている」ことがわかれば、悪い感情はすぐに消える。

 「心から気にかける」ということは、誕生日を憶えたり、家族の名前を憶えたりすることではない。部下の仕事以外の人生と夢を認めることだ。人間としてお互いを知り合うことだ。お互いにとってなにが大切かを知り、その逆に作用するものを、教え合うことだ。

わたしの「え~っと」が消えたワケ

 グーグルに入って間もなく、CEOと創業者たちの前でアドセンスの業績を報告することになった。幸い、いい報告ができてほっとしていたが、上司のシェリル・サンドバーグが会議室の入り口でわたしを待っていた。彼女はオフィスまで一緒に戻りましょうと言う。

 「あなた、きっとこれからグーグルで大活躍するわ」。シェリルが切り出した。彼女はわたしが言ったことを3つか4つ具体的に挙げて、その点を褒めてくれた。だが、胸のあたりにまだもやもやとしたものがつっかえていた。自分が何をやらかしてしまったのかが知りたかった。

 最後にシェリルがこう言った。「あなた、何度も『え~っと』って言ってたわ。自分で気がついてた?」、まさか、わざわざそんなことのために一緒にオフィスに引き返したなんて。「緊張してた?話し方のコーチを紹介しましょうか?グーグルが費用を持つから」。ハエでも追い払うように手を振りながら、わたしは答えた。「ただの口癖だと思いますけど」。

 シェリルは笑った。「その手の動き、わたしの言ってることなんてあなたは気にしてないみたいに見える。もっとはっきり言わないとわかってもらえないようね。あなたはわたしの知り合いの中でも最高に賢い人なのに、『え~っと』って言ってるとバカっぽく見えるのよ」。その言葉にハッとして目が覚めた。

 シェリルはもう一度助けの手を差し伸べてくれた。「話し方のコーチに助けてもらえば、『え~っと』は直せる」「大丈夫、絶対に直るから」。わたしのプレゼンテーションは全体としては成功だったけれど、シェリルはわたしの改善すべき点を見逃さなかった。まずは優しく、しかもはっきりと、どこに問題があったかを教えてくれた。

 わたしが聞く耳を持たないことがわかると、もっとズバリと指摘した。それでも「個人攻撃」にならないように、わたしが「バカ」なのではなく「バカっぽく見える」と言った。そして、具体的な助けを差し伸べてくれた。

 シェリルとの会話はふたつの点で非常に効果があった。まず、コーチに3回訓練を受けただけで、周囲にもわかるほど、わたしの話し方は良くなった。次に、このことでわたしはシェリルに感謝し、自分のチームをもっとうまく導きたいと思うようになった。このすべてが、ほんの2分の会話から生まれたのだ。

「徹底的なホンネ」のフレームワーク

 優れた指導にはふたつの面がある。「心から相手を気にかける」ことと、「言いにくいことをズバリと言う」ことだ。このふたつを同時に行うと「徹底的なホンネ」が実践できる。どちらかに失敗した場合、「イヤミな攻撃」や「過剰な配慮」に、どちらにも失敗した場合には、「摩擦の回避」になる。この4象限は、フィードバックの特徴を表すものだ。

 気遣いを示さずに誰かを批判すると、相手にとってはそれが「イヤミな攻撃」だと感じられる。とはいえ、「徹底的なホンネ」が出せない場合に、次にいいのは「イヤミな攻撃」だ。メンバーをこっぴどく批判すれば、少なくともあなたの考えや立ち位置が周囲に伝わり、チームは結果を出せるかもしれない。イヤミなヤツがデキる人間に見えるのは、そういう理由からだ。

 気遣いをしつつも言いにくいことを言わない「過剰な配慮」型の上司は、子供をしつけられない親のようなものだ。部下の成功の芽をわざと摘もうとする上司などほとんどいないが、「過剰な配慮」がそうさせてしまう。「過剰な配慮」から出た褒め言葉には効き目がない。なぜなら、その褒め言葉の目的は、もっといい仕事ができるように励ますことではなく、相手の気分を良くすることだからだ。

 チームの和に気を遣いすぎる上司は、不協和音を恐れてメンバー同士の批判を励ますこともない。すると、「いい人であること」が最優先されるような環境ができあがり、客観的な評価が二の次になり、成果もあがらなくなる。

 相手を心から気にかけもせず、言いにくいことを言わないのが、「摩擦の回避」だ。自分が好かれることしか頭になかったり、いい人のふりをすることが社内で得になると考えている場合には、ただ口先だけで褒めたり叱ったりすることになる。それらは本心から出たものではなく、相手の感情を操って自分が得をしようという下心がある。

 アップルでスティーブ・ジョブズから、なぜダメな点をもっとはっきり指摘しないのかと聞かれた最高デザイン責任者のジョニー・アイブはこう答えた。「チームを気にかけているから」。するとジョブズはこう返した。「違う、ジョニー。それはただの見栄だ。みんなに好かれたいからだよ」。

 その時のことを思い出しながら、ジョニーは言った。「僕はすごくムカついた。だって彼が正しいとわかっていたからね」。言いにくいことをズバリと言う時には、相手があなたのことを気にしているかどうかを心配しないでほしい。そんな心配は、相手を「心から気にかける」ことにならない。それではチームが優れた結果を出すことはできない。

「徹底的なホンネ」のシンプルな例

 言いにくいことを伝えなければならないとき、「ズボンのチャック開いてますよ」とか「歯にほうれん草挟まってますよ」とか教えてあげるような調子で言おう。あまり深刻でない状況を思い出して、深刻な問題にも同じようにありのままの事実を伝えるといい。

 同僚のアレックスがトイレからチャックを開けたまま出てきた。気まずいけれど、教えてあげるとしよう。アレックスを脇に呼び止めて、小声で、「チャック開いてるよ。僕もよくやるけど、教えてもらったらありがたいと思うんだ。気にしないでくれるといいんだけど」。

 これなら徹底的なホンネで話したことになる。心から相手を気にかけながら、ズバリと事実を伝えている。もしこれが、人前で受けを狙って、チャックが開いていると大声で言ったら「イヤミな攻撃」になる。ただし、アレックスにすると最悪の事態でもない。問題解決の機会を与えてもらったわけだから。

 シャイなアレックスが恥ずかしがると思ったら、何も言わないかもしれない。それは「過剰な配慮」だ。アレックスは結局もっと恥をかくだろう。なぜあなたが教えてくれなかったのかと思うかもしれない。あるいは、あなたが自分の体面や評判を気にして彼女に何も言わなかったとしよう。アレックスの気持ちではなく、自分のことを考えて言わなかった。そんな行為は「摩擦の回避」だ。

 すごく動揺している人、腹を立てている人、あるいは何を考えているか見当もつかない人を相手にすると、たいていは「過剰な配慮」に逃げ込むものだ。だが、言いにくいことを言うのが上司の仕事だ。あなたが人の上に立つ立場なら、それは仕事というだけではなく、人間としての義務である。人間には生まれつき、他人とつながる力と心から相手を気にかける力がある。

 「『徹底的なホンネ』の関係」の目的は、ひとりではできないことを全員で成し遂げることだ。そのためには、「脳みその境目をぶっ壊し」て、一緒に働く人を気にかけなければならない。メンバーの考えをあなたの頭に取り入れ、あなたの考えを彼らの頭に取り入れさせることに時間をかければ、もっと大きなことが成し遂げられる。

 ジョニー・アイブはこう言っていた。管理職の一番大切な仕事は「静かな人に声を与えることだ」と。一方、グーグル元 CEOのエリック・シュミットは社員に「もっと声を上げろ!」とハッパをかける。どちらのリーダーも、やり方は違うが全員が意見を言える環境を作るという点では一致する。やり方はひとつではない。あなた流のやり方を見つけて、メンバーがお互いに耳を傾け合う文化を創ってほしい。

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