- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書は、スマートフォンや電子書籍端末、電気自動車、カーシェアリングなど近年のケースを多数取り上げ、リスクを避けながらエコシステムを確立することで、イノベーションを成功させる戦略を説いたロングセラー。一読すれば、オープンイノベーションが注目を集める今なお、重要な示唆が多いことに気づくはずだ。
著者はダートマス大学エイモス・タックビジネススクール教授で、イノベーション論を専門として、MBA学生から支持を受ける人物。監訳は戦略コンサルティングファームを経て、現在は慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授を務める経営学者 清水勝彦氏。新規事業やイノベーション、起業を考える方は必読の一冊だ。
ダートマス大学エイモス・タックビジネススクール教授。1993年クーパーユニオン大学工学部卒業。1998年ペンシルベニア大学ウォートンスクールにてPh.D.取得。INSEAD(欧州経営大学院)准教授などを経て、2008年より現職。MBA学生から圧倒的な支持を受け、INSEAD(5回)、タック(1回)のベストティーチャー賞を受賞。Management Scienceの副編集長、Academy of Management Review,Strategic Organization,Strategic Management Journalの編集委員を務める。
監訳者:清水 勝彦(Shimizu Katsuhiko)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。1986年東京大学法学部卒業、1994年ダートマス大学エイモス・タックビジネススクール経営学修士(MBA)、2000年テキサスA&M大学にてPh.D.取得。コーポレイトディレクション、テキサス大学サンアントニオ校准教授(テニュア取得)を経て、2010年より現職。Academy of Management Journal,Strategic Management Journal,Journal of Management Studies,Journal of International Managementの編集委員を務める。
第1章 すべて正しいことをしたのに、なぜ失敗するのか
第2章 コーイノベーション・リスク
第3章 アダプション・チェーン・リスク
第Ⅱ部 エコシステム内のポジションを決める
第4章 エコシステムの全体像づくり
第5章 役割と関係
第6章 適切な場所、適切なタイミング
第Ⅲ部 ゲームに勝つ
第7章 ゲームを変える
第8章 成功のための順序づけ
第9章 成功確率を上げるために
要約ダイジェスト
イノベーションの死角と避けられる失敗
同じように偉大なイノベーションが2つあり、一方は成功し、他方は失敗する。その理由は、その企業の優秀さ、顧客ニーズの的確な把握、素晴らしい商品、競争に対する先行、優秀なマネジャーのどれとも関係ない「死角」にある。成功とは、自社が約束したことを実行できるか以上に、自社のパートナー企業がしっかりと約束を果たせるかどうかにかかっているのだ。
産業革命以降、「コラボレーション(協働)」こそが技術進歩を決めてきた。たとえば、電球の発明は、電力ネットワークが発達しなければ何の価値もなかった。この「協働関係」は経済の近代化に伴ってより複雑になり、企業が単独で何かをしようとしてもできなくなっている。
電気製品におけるアップルから小売におけるアマゾン、製薬におけるロシュから防衛のレイセオンまで、今日の模範となるような企業は単に自社の戦略をミスなく実行しているというだけではなく、パートナー企業群の行動を巧みに組織化し、価値を何倍にもしているのである。
このようなリーダー企業は、「死角」の特徴をよく理解し、戦略を決定する際に視野(レンズ)を広く持ち、エコシステム内に生まれるチャンスを取り込むことで成功してきたのである。エコシステムには、2つのリスクがある。
それは、①コーイノベーション・リスク(自身のイノベーションの成功は、他社のイノベーションの成功にかかっているというリスク)と、②アダプションチェーン・リスク(パートナーがイノベーションを受け入れなければ、