『西洋の自死―移民・アイデンティティ・イスラム』
(ダグラス・マレー/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 数十年にわたり大量の移民を受け入れてきた欧州で今、テロが頻発しているのは周知の事実だ。そして同時に、伝統的な文化や価値観も失われつつあるという。本書ではこの文化的破滅が、「多様性への理解」という反論し難い主張を盾に対策を怠ってきた欧州の政治指導者や、それを称賛してきたメディアによって招かれたことを明らかにする。

 こうした現象は日本にとっても対岸の火事ではない。「移民は経済成長に必要だ」「高齢化社会では移民を受け入れるしかない」。これらは現在の日本でもよく聞かれる主張だが、欧州でも同様だった。そして日本では2019年4月から改正入管法が施行、一定業種で単純労働者の受け入れを開始し、2025年までに 50万人超の受け入れを想定している。

 現在欧州で起きている状況は、これから日本で起こる可能性が大いにあるのだ。評論家の中野剛志氏は解説で「日本の自死を予言する書」と述べている。著者は「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙などへの寄稿も多数ある、気鋭の英国人ジャーナリスト。外国人労働者や移民と向き合わざるを得ない日本人にとって重い示唆のある一冊だ。

著者:ダグラス・マレー(Douglas Murray)
 ジャーナリスト。1979年生まれ、新進気鋭の英国人ジャーナリスト。英国の代表的な雑誌の一つ『スペクテーター』のアソシエート・エディター。『サンデー・タイムズ』紙や『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙へも寄稿多数。英国議会や欧州議会、ホワイトハウスでも講演を行った実績がある。ツイッターのフォロワー数は15万人を超える。本書は英国で10万部を超えるベストセラーとなり、世界23カ国で翻訳。『サンデー・タイムズ』紙のナンバーワンブック、『イブニング・スタンダード』紙のブックオブザイヤーにも選ばれた。

解説:中野 剛志(Nakano Takashi)
 1971年、神奈川県生まれ。評論家。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。
 主な著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』『世界を戦争に導くグローバリズム』(ともに集英社新書)、『国力論』(以文社)、『真説・企業論』(講談社現代新書)、『保守とは何だろうか』(NHK出版新書)、『官僚の反逆』『日本の没落』(ともに幻冬舎新書)、『富国と強兵 地政経済学序説』(東洋経済新報社)などがある。

翻訳:町田 敦夫(Machida Atsuo)
 翻訳家。『20世紀最高の経済学者ケインズ投資の教訓』『金持ちは税率 70%でもいい vs みんな 10%課税がいい』『欧州解体』(東洋経済新報社)、『背番号10のファンタジスタ(ベースボール・マガジン社)などの訳書を出す一方、『ナショナルジオグラフィック日本版』『フォーブス ジャパン』などで雑誌記事を翻訳。映像メディアの翻訳も多い。

[解説]日本の「自死」を予言する書(中野剛志)
イントロダクション
第1章 移民受け入れ論議の始まり
第2章 いかにして我々は移民にとりつかれたのか
第3章 移民大量受入れ正統化の「言い訳」
第4章 欧州に居残る方法
第5章 水葬の墓場と化した地中海
第6章 「多文化主義」の失敗
第7章 「多信仰主義」の時代へ
第8章 栄誉なき予言者たち
第9章 「早期警戒警報」を鳴らした者たちへの攻撃
第10章 西洋の道徳的麻薬と化した罪悪感
第11章 見せかけの送還と国民のガス抜き
第12章 過激化するコミュニティと欧州の「狂気」
第13章 精神的・哲学的な疲れ
第14章 エリートと大衆の乖離
第15章 バックラッシュとしての「第二の問題」攻撃
第16章 「世俗後の時代」の実存的ニヒリズム
第17章 西洋の終わり
第18章 ありえたかもしれない欧州
第19章 人口学的予想が示す欧州の未来像
あとがき

要約ダイジェスト

「自死」の過程にある西洋文明

 欧州は自死を遂げつつある。英国であれ西欧の他のどの国であれ、その運命から逃れることは不可能だ。なぜなら我々は皆、見たところ、同じ症状と病弊に苦しんでいるからである。

 2012年に発表されたイングランドとウェールズにおける国勢調査の結果、国外で生まれた人々の数は、直近の 10年間で 300万人近く増えていた。またロンドンの住民の中で、自らを「白人の英国人」と回答した人々はわずか 44.9%だった。

 これらは歴史的に見ても、一国の人種構成として極めて大きな変化ではある。英国ではしかし、宗教から見た人口構成に関しても同じように特筆すべき変化が起きていた。例えば、キリスト教を除くほとんどすべての宗教で信者数が増えていることが明らかになっている。

 前回の国勢調査以降、自分はキリスト教徒であると回答した住民の割合は 72%から 59%に低下した。イングランドとウェールズに住むキリスト教徒の実数は 400万人以上も減少し、3,700万人から 3,300万人へと落ち込んだ。

 キリスト教の信者数が激減する一方で、イスラム教の信者数は、移民の大量流入の影響もあって 150万人から 270万人に増加している。しかもこれは公式な数値に過ぎず、不法移民も含めればその数はもっとずっと多くなるはずだ。

 これらの結果を分析すれば、

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