- 本書の概要
- 著者プロフィール
これは、伝説的空軍パイロットとしても活躍した軍事戦略家ジョン・ボイド氏が提唱した理論で、「観察(Observe)」「情勢判断(Orient)」「意思決定(Decide)」「行動(Act)」の4つのプロセスで状況を素早く判断して対応していくものだ。本書は、ボイドに長年師事した愛弟子が執筆した OODAループ理論の古典にして決定版といえる一冊だ。
著者は『孫子』や宮本武蔵など日本人にもなじみの深い戦略思想からボイド理論を正確にひもとき、企業戦略への応用や組織づくりまでを解説。日本語版には、訳者である経営学者 原田勉氏の最新事例をふまえた解説も各章に付されており、戦略や戦史に詳しくなくとも読み進めることができる。経営層や事業戦略に携わる方はぜひご一読いただきたい。
戦略コンサルタント。航空機企業や専門的サービス企業のコンサルタント。OODAループの発案者である元アメリカ空軍大佐、故ジョン・ボイド(John Boyd)に長年師事し、親しい間柄であった。アメリカ空軍大学(US Air Force University)で講義を行い、ケネソー州立大学で教鞭を執っていた。ミシシッピ大学より博士号(数学)取得。
訳者:原田 勉(Harada Tsutomu)
神戸大学大学院経営学研究科教授。1967年京都府生まれ。スタンフォード大学よりPh.D.(経済学博士号)、神戸大学より博士(経営学)取得。神戸大学経営学部助教授、科学技術政策研究所客員研究官、INSEAD客員研究員、ハーバード大学フルブライト研究員を経て、2005年より現職。専攻は、経営戦略、イノベーション経済学、イノベーション・マネジメントなど。大学での研究・教育に加え、企業の研修プログラムの企画なども精力的に行っている
第2章 目に見える数字だけでは最悪の結果を招く
第3章 OODAループ──勝つべくして勝つための最強ツール
第4章 OODAループはビジネスに何をもたらすのか
第5章 OODAループを高速で回すための組織文化
第6章 機動戦の原則をビジネスに応用する
第7章 OODAループで実際に何をするべきか
訳者解説 いま、なぜ OODAループなのか
要約ダイジェスト
何が勝利へと導くのか?
軍事戦略家のジョン・R・ボイドによると、第2次世界大戦が勃発したとき、フランスとイギリスの連合軍は、時代遅れの戦略を採用していた。一方ドイツ軍は、電撃戦を生み出し、連合軍を2~3週間ほどで撃破した。
ボイドは、多くの研究を積み重ね、少数で勝つための原則がドイツ軍の勝利の基礎を形成し、その本質は組織文化的なものであるという結論に至った。それらの「電撃戦の原則」は、危険、恐怖、そして不確実性に直面したなかで有効な意思決定ができなくなるように敵側の能力を攻撃し、同じような条件の下でも効率的に機能するように味方側の能力を向上させる。
さらなる研究の結果、ボイドはトヨタ生産方式(TPS)は、その原則を実行したもう1つの事例であるという結論を得た。両者はともに時間を主要な戦略手段として活用し、組織の風土と文化が多くの点で共通する。しかも、両者ともに最古の兵法書『孫子』から続く戦略思想の系譜に遡ることができるのだ。
ボイドは、チンギス・ハンからドイツの電撃戦まで、戦争の歴史をつぶさに追い、数学や現代物理学の成果を駆使して、孫子の概念を現代版戦闘哲学としてアップデートした。なかでも最も重要なのは、現実を正確に把握するための内部モデル、OODA(ウーダ)ループだ。OODAループの概念図に示されている学習ループは、「観察(Observe)、情勢判断(Orient)、意思決定(Decide)、行動(Act)」である。
勝利を導くのは、アジリティ(機敏性)という概念だ。アジリティとは、外部の世界で起こっているめまぐるしい環境変化に即応して、自らの方向性(進むべき道のようなもの)を変化させることのできる能力を意味し、ビジネスにとっても非常に強力なものとなる。
例えば、1981年にヤマハは世界で最大のオートバイメーカーになると宣言した。当時その地位を占めていたホンダに対し、ヤマハはスピードとアジリティで攻撃した。18力月以上続いた HY(ホンダ・ヤマハ)戦争で、