- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書では、著者が苦戦しながらも編み出した「三角読み」「多ジャンルリンク読み」など、読書が苦手でも読むのが遅くても実践できる読書術や、価値ある本の選び方などを解説。また、著者が主張する「限界を超える読書」「量を追うのはもったいない」「良質な読書」など、本との向き合い方を考えさせられる内容も多い。
現在、書店には「わかりやすい本」や「やさしい本」が数多く並んでいる。こうした本は手早く情報を得る目的には適しているが、本当に自分を成長させてくれるのは著者のいう「限界を超える読書」、すなわち今の理解力や読解力では難易度が高い本だろう。読書が苦手という方はもちろん、読書好きの方や読書を成果につなげたい方はぜひご一読いただきたい。
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院)、『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』(PHP新書)、『「ひとりぼっち」』こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)などがある。
第2章 感覚的読書法のすすめ
第3章 “頂にある本”をめざす
第4章 本との出会いはタイミングがすべて
第5章 良質読書歴
要約ダイジェスト
私が読書をする2つの理由
私は読書が苦手だ。それでも、少ないときは月に5冊、多いときは10冊の本を読んでいる。集中力がなく、読書が苦手な私が読書をし続けている理由は2つある。1つ目は、テレビのコメンテーターや講演などでアウトプットが必要だから。2つ目は、私が「読書とは自分に会うためにするもの」と思っているからだ。
「自分に会うため」とは、精神科医である私が昔から抱えているテーマ、「人間とは何か」を考えることでもある。だから、そのときの私にとって難しい内容の本、つまり“限界を超える本”にぶつかることもある。その類の本は、読むのがしんどく、1日数ページ読めればいいほうで、たった数行しか読めないときもある。
それでも読むこと自体はやめないのは、限界を超える本だけが自分を成長させてくれる、と思っているからだ。普段は自分が読みたい本を読んでいればいいが、読める本を読んで、ただ単に情報を得るだけという読書ではもったいない。自分がラクにできる筋トレをしても、筋肉がつかないのと同じだ。
私でいえば空海の原著などがそうした本にあたり、いつもカバンに忍ばせておいて、「よし!」と思ったときにチャレンジする。そうして少しでも「限界を超えた」という感覚が得られれば、それは今後の人生を生きてゆく力になっていく。
「限界を超える読書」には、心が落ち着き、人の話を聞くのが上手になるという思わぬ副産物もある。私たちは、他人の話の7割を聞き逃し、3割を誤解しているといわれる。しかし自分の理解の枠組みを超えたわかりにくい本に、たとえ1日10分でも毎日向き合って読むという訓練によって、自分と感性の異なる「他人の話」に耳を傾けることができるようになるのだ。
散漫力が読書の幅を広げる
私はもともと集中力がなく散漫なため、読書にも集中できない。読めても一度に十数ページ。そこで、1冊の本をずっと読むという一般的な読み方ではなく、