- 本書の概要
- 著者プロフィール
テクノクラート(高級技術官僚)という言葉がかつてよく聞かれましたが、本書で取り上げられているのは、「プルトクラート」という耳慣れない言葉である。「プルトクラート」とは、ギリシャ語の「プルトス=富」と「クラトス=強さ、力」からつくられた造語で、世界でも最も裕福な0.1%の上位富裕層のことを指す。
これらの超富裕層と、富裕層や一般人との格差がかつてないほど広がっていることを、本書では非常に多くの事例やデータ、丹念なインタビューから明らかされている。また、米国だけでなく、あまりメディアにとりあげられることのない中国、インド、ロシアなどの富裕層についてのレポートが豊富なことも本書の特長である。
「フィナンシャル・タイムズ」ベストブック・オブ・ザ・イヤー、カナダのナショナル・ビジネス・ブック賞受賞、という一冊だけあって、興味本位のレポートにとどまることなく、彼らが富を蓄積した方法から根底にあるメンタリティまで、詳細に描かれています。彼らは「勤労」「慈善活動」「教育」「国家観」などで、これまでの「資本家」然とした富裕層像とは一線を画すスタンスをとっているという。「富」だけでなく、「権力」まで手にし始めた彼らの描く未来は、グローバル経済の未来ともいえ、多くのビジネスパーソンにとっても多くの示唆が得られる一冊となっている。
著者:クリスティア・フリーランド(Chrystia Freeland)
1968年、カナダ・アルバータ州生まれ。ハーヴァード大学卒業後、ローズ奨学生としてオックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジに学び、修士号を取得。フリージャーナリストとなり、「フィナンシャル・タイムズ」のモスクワ支局長やトムソン・ロイター、「グローブ・アンド・メール」のエディター、コラムニストを務める。
本書は「フィナンシャル・タイムズ」のベストブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれたほか、2013年ライオネル・ゲルバー賞、カナダのナショナル・ビジネス・ブック賞を受賞
出版社:早川書房
1 これまでの歴史と、その重要性について
2 プルトクラート文化
3 スーパースター
4 革命への対応
5 レントシーキング
6 プルトクラートとそれ以外の人びと
要約ダイジェスト
超格差の時代
労働する金持ちの登場
1970年代、上位1パーセントの年収は国民所得の10パーセントだったが、35年後にはそれは国民所得の三分の一という記録的な割合になった。
2005年、ビル・ゲイツの財産は465億ドル、ウォーレン・パフエットの財産は440億ドルで、二人の財産は、アメリカ国民のうち所得の低い40パーセント、合計1億2,000万人の財産約950億ドルとほぼ変わらなかった。
いまの金持ちは昔の金持ちと異なる。彼らは世界中につながっていて、その多くは自力で富を築いた者か、そういう者の後継者である。そして努力家かつ高学歴で、世界を活躍の場としており、世界規模の厳しい経済競争を勝ち抜くだけの能力があると自負している。
縁故階級はあいかわらず健在だが、現代のプルトクラート(桁外れの超富裕層)は、労働する金持ちであることを特徴にしているのである。彼らは大金を稼ぎ、信じがたいほど勤勉に働く。
すでにマルチミリオネアになっていたロシア人投資家のユーリ・ミルナーは、マーク・ザッカーバーグ(Facebook創業者)に最初の投資アプローチを拒絶された翌日、往復およそ2万キロの距離をものともせず、パロアルトのザッカーバーグのオフィスにあらわれたという。
彼らは、出身地を同じくする者同士ではなく、似たような立場にある者同士で国境を超えたコミュニティを築きつつある。シティグループの戦略担当部門のエリートたちが2005年に書いた覚書によれば、彼らはこんな見解を持っていた。
「世界は二つのブロックに