- 本書の概要
- 著者プロフィール
記憶術には様々な手法が存在するが、著者はそれらに共通する原則として、①関連付ける、②視覚的にイメージする、③感情を伴わせる、の3つを挙げる。本書では架空のストーリーを読み進め、随所に用意された演習やトレーニングに取り組み、上記の記憶術や情報を分析して仮説を立てるといった、スパイの思考法や仕事術について学んでいく。
年齢とともに記憶力に衰えを感じることがある方はもちろん、効率的に学習や仕事を薦めたい方はぜひご一読いただきたい。一読すれば、記憶力が思考力や対人折衝能力など様々なスキルの元となることがわかるはずだ。著者の一人、デニス・ブーキン氏は、サンクトペテルブルクエ科大学経済学部出身の経済学者、経営者、心理学者。
経済学者、経営者、心理学者。サンクトペテルブルク工科大学経済学部卒。ロシアのコンサルティング会社 Empatika社の共同経営者でありコンサルタント。
著者:カミール・グーリーイェヴ(Kamil’ Guliev)
写真家。現代美術学校「インディペンデント・ワークショップ」(モスクワ市近代美術館主催)を修了。
訳者:岡本 麻左子(Okamoto Masako)
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒。外資系会社勤務、コピーライター、米国留学等を経て、2003年から翻訳家・ライターとして活動。現在は有限会社ティーエーシーの翻訳者・コーディネーターも務める。
第1章 CHIS(密告者)
第2章 ケースオフィサー(工作担当官)
第3章 非常勤エージェント
第4章 派遣エージェント
第5章 工作員
第6章 分析官
第7章 二重スパイ
要約ダイジェスト
記憶術の3原則
「スパイ」と聞くと、ペン型レーザー銃やライター爆弾のような小道具を思い浮かべる人がほとんどだろう。しかし、スパイの装備で最も重要なものは、スパイ本人の頭脳だ。なかでも記憶力はスパイの任務に欠かせない。
どんな記録を残すことも許されない極秘任務の場合、諜報部員が頼れるのは自分の頭脳のみ。膨大な情報を完全に記憶して正確に再現できなくてはならない。記憶術にはさまざまな種類があるが、どの記憶術にも3つの原則があてはまる。
原則1 関連付ける
脳という装置は、さまざまなイメージや概念を互いに結び付けるのが得意だ。クリスマスと聞くと、すぐにクリスマスツリーや賛美歌やプレゼントが思い浮かぶといった具合である。
また、記憶力の良さというのは、覚えているかどうかよりも情報を呼び出せるかどうかだ。何かを覚える場合、既に知っていることに関連付ければ簡単に覚えることができ、連想の鎖を使えば必要に応じてすぐに思い出すことができる。よって、記憶術の第1原則は、何かを覚える場合は簡単に思い出せるように、よく知っているものに関連付けるということである。
原則2 情報を視覚的にイメージする
視覚的イメージは言葉や数字よりも簡単に記憶できる。したがって、記憶術の第2原則は、記憶すべき情報を視覚的にイメージすることである。
記憶術の第1原則と第2原則は、併せて使用するものだ。例えば、味方と接触せずに情報を受け渡す方法として、手荷物ロッカーを使用し、ロッカーの暗証番号は「855411」だとする。この番号はおそらく今後数年間、正確に覚えていなくてはならない。
この暗証番号の数字をそれぞれ絵としてイメージし(第2原則=情報を視覚的にイメージする)、それを互いに関連付けてみよう(第1原則=関連付ける)。数字の「8」は太った女のように見える。「5」はサドルの付いた一輪車だ。「4」は椅子で「1」は箒としよう。
1人の女(8)が2台の一輪車(55)に乗っている。体重が重すぎて1台では支えきれないからだ。2台がばらばらにならないように椅子「4」をくくり付け、その椅子に座っている。一輪車が倒れないよう、2本の箒(11)を使って綱渡りのようにバランスをとっている。女が向かう先は、もちろん手荷物ロッカーのある駅だ。この絵を鮮明に思い描ければ、