- 本書の概要
- 著者プロフィール
そして日本でも、それは対岸の火事ではなくなってきた。例えば2018年からアマゾンジャパンがファッション市場に本格進出し、ファーストリテイリング柳井正会長兼社長もアマゾンを意識した発言を行っている。本書はそうしたアマゾン・エフェクト、デジタルシフトの脅威にいかに対処すべきかを解説する。
著者は、セブン&アイ HDGS執行役員 CIOとしてネットとリアルを融合させるオムニチャネル戦略を推進した鈴木康弘氏。ITと流通業を熟知し、書籍のネット販売を通じて日本で最初にアマゾンへの対応を迫られた人物でもある。アマゾンやデジタルシフトの本質はもちろん、それを踏まえた組織変革にまで言及があり、業界を問わず経営層必読の内容となっている。
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役就任。2006年セブン&アイHLDGSグループ傘下に入る。14年セブン&アイ HLDGS執行役員 CIO就任。グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員 CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業を支援。SBIホールディングス社外役員も兼任。
第1章 アマゾン・ショックが日本にも押し寄せる
第2章 アマゾンに対抗できるのはどのグループ
第3章 デジタルシフトの本質はなにか
第4章 取り残される日本企業
第5章 業務改革でデジタルシフトの波に乗る
あとがき
要約ダイジェスト
アマゾン・ショックが日本にも押し寄せる
ここ数年、次の4つのショックが日本に押し寄せている。1つ目は、アマゾン・ショックだ。アマゾンが進出すると、その業界の既存の秩序がゆらいでいく。日本でも、ファッション分野への本格投資や、生鮮品宅配サービスの余波で、ユニクロを展開するファーストリテイリングも、セブン&アイ・ホールディングスも、対応を迫られるようになってきた。
2つ目は、クラウド・ショック。以前であれば、たとえば、開発・導入に1億円、メンテナンスに月々 100万円かける必要があったようなシステムが、いまはクラウドを使えば、月額使用料数百円ですむ。しかも、SaaSと呼ばれるクラウドの分野では、アマゾンが 30%以上のシェアを占めて首位を独走している。
3つ目は、AI/IoTショックだ。すべてのものがインターネットでつながる IoTによって、膨大なデータが集積され、それを AIが解析する。データを制したものが、ネットとリアルの両方を制する時代が到来しつつある。すでにアメリカのスマートスピーカー市場では、アマゾンのAIスピーカー、エコーが約7割という圧倒的なシェアを占めている。
そして、4つ目は教育ショック。IT人材の育成に国家としてとりくみ始めたアメリカと、育成がおくれる日本との間の大きな隔たりだ。企業内の人材構成を見ても、たとえばアマゾンは社員の半分以上はエンジニアが占めるという。一方、日本企業では依然、システム開発を外部の ITベンダーに委託し、いわゆる丸投げするケースが多い。
デジタルシフトの時代は、アマゾンのように、自前でシステム開発ができることが、スピード的にも、コスト的にも必要であり、いかに社内に IT人材を確保し、育成できるかが競争力を左右する。このように、日本に押し寄せる4つのショックのいずれを見ても、その背後にはデジタルシフトの先頭を走るアマゾンの姿が浮かび上がるのだ。
ニューヨークで体験した“アマゾン・ショック”
わたし自身、ニューヨークに出張の折、個人的に“アマゾン・ショック”を受けた。アマゾンがチェーン展開を開始した書店販売のリアル店舗、アマゾン・ブックスを視察し、目をみはったのが、本の陳列の仕方だ。すべての本が、表紙を正面に向けて陳列する「面陳(面陳列)」や「面展(面展示)」になっていたのだ。
日本の書店で見られるような、本の背表紙を外側に向けて本棚に横一列に並べていく「背差し(棚差し)」は一冊もなかった。陳列された本には、アマゾンストアでの星数評価やカスタマーレビューを記載したカードが付されているので、人気や注目度がひと目でわかる。
本のカテゴリーわけも、アマゾンストアで4つ星以上を獲得している本、