- 本書の概要
- 著者プロフィール
著者によれば、一般社員から経営者側に近づくにつれ、実は「学問」が必要になる。ここでいう学問とは、単に知識をインプットし、課題解決する「勉強」とは異なり、問題を発見し、物事の本質を見る統合的な営みである。特に現代のように不確実性が増し、変化のスピードが早い時代には「学問する力」が必要なのだ。
本書では、このような「勉強→学問」や「問題解決→問題発見」、「テクニカル・スキル→コンセプチュアル・スキル」という、現代のビジネスパーソンに必要な3つのシフトを解説。成長の壁を感じていたり、業界や企業にかかわらず活躍できる力を身に付けたい方はご一読いただきたい。著者はシャープ株式会社で経営再建に携わり、経営学者に転じた陰山孔貴氏。
獨協大学経済学部経営学科准教授、博士(経営学)。1977年大阪府豊中市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程を修了後、シャープ株式会社に入社。液晶パネル事業の経営管理、白物家電の商品企画、企業再建等に携わる。同社勤務の傍ら、神戸大学大学院経営学研究科専門職学位課程、同博士後期課程を修了。獨協大学経済学部経営学科専任講師を経て 2017年より現職。2018年より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター技術経営研究部会招聘研究員も務める。
著書に『脱コモディティ化を実現する価値づくり―競合企業による共創メカニズム』中央経済社。『できる人の共通点』ダイヤモンド社。『技術経営』(分担執筆)中央経済社。『1からの戦略論< 第2版>』(分担執筆)碩学舎。
第1章 「問題解決能力」から「問題発見能力」へのシフト
第2章 「テクニカル・スキル」から「コンセプチュアル・スキル」へのシフト
第3章 「勉強する」から「学問する」へのシフト
第4章 「学問する」組織へのシフト
巻末付録 読んでおきたい経営学の10冊
要約ダイジェスト
ビジネスマンに必要とされる3つのシフト
今はまさに、先の見えない予測不可能な時代だ。私たちは「ビジネス環境は常に変化する」、しかも「その変化のスピードは加速している」という前提に立って、キャリアプランを構築していかなければならない。
それは、どのような場所、状況でも活躍できる変化に強い人材になるということに他ならない。ビジネスマンが変化に強い人材となり、これから先においても価値を発揮し続けるためには、次の3つのシフトが必要である。
1.「問題解決能力」から「問題発見能力」へのシフト
2.「テクニカル・スキル」から「コンセプチュアル・スキル」へのシフト
3.「勉強する」から「学問する」へのシフト
1.「問題解決能力」から「問題発見能力」へ
変化のスピードが激しい現在においては、「問題解決能力」以上に「問題発見能力」が大切だ。しかし、実際、企業で働いたり、日常生活をしていると、多くの方は問題そのものについて考えるよりも、解決策を見つけることに注力してしまう。
そのために、解決する必要のない問題でも解決策を求めて時間を浪費したり、根本的な解決にはならないような些細な問題に一生懸命に取り組むことも多い。また、問題発見の際は、解けない問題では仕方ないので、問題を上手に分解することも学んでいかねばならない。
実はこれは、我々学者が行っている研究の世界でも同じだ。この理由は、「そもそも適切な問いが立てられないと論文が書けない」からだ。ある先生は「リサーチクエスション(研究課題)の設定が研究の出来の 75%を決める」とも言われていた。
「問い」の問題は、多くの企業が関心をもっている「イノベーション」の創出にも関係する。イノベーションには、技術変化が連続的かつ漸進的な「インクリメンタル・イノベーション」と、技術変化が非連続的かつ画期的な「ラディカル・イノベーション」の2種類ある。
業界構造を覆すほどのインパクトがあるラディカル・イノベーションを起こすにあたり重要なのが、高いレベルの「問題発見能力」だ。その出発点は観察・実体験・直感であり、ラディカル・イノベーションの種は、顧客に聞いても見つけられない。顧客の声を聞いて生み出せるものはインクリメンタル・イノベーションであり、よく観察して初めて見つけられるものがラディカル・イノベーションなのだ。
こうした「問題発見能力」を身につける具体的な方法が、米国の経営学者であるマイケル・A・ロベルトの著書『なぜ危機に気づけなかったのか―組織を救うリーダーの問題発見力』の中で挙げられている。
例えば、人を介さずに、直接情報源に出向いて、加工されていないデータを見たり聞いたりする/大きな危機に先立って起きることが多い小さな問題に着目する/人の話を聞くだけでなく、その人の行動を注意して見る、といったものだ。これらも有効な手段だが、根本的には、