- 本書の概要
- 著者プロフィール
実際、すでに欧米などでは、AIを業務の自動化だけでなく、協働することで、業務プロセスやビジネスモデルの進化につなげている企業が出始めている。本書ではそうした企業の事例に加え、具体的な変革のためのフレームワークや必要となる8つの「融合スキル」を解説。それらは人間とAI(マシン)それぞれの強みを最大限発揮するためのものだ。
著者らはAIを導入するかではなく、どう導入するかが今後の企業の命運を分けると述べる。製造、R&D、営業、マーケティングなど、業種を問わず自社の未来を再考したい方はぜひご一読いただきたい。著者、監修はアクセンチュア社最高技術責任者(CTO)兼最高イノベーション責任者(CIO)ら、AIビジネスにおけるスペシャリスト陣。
アクセンチュア最高技術責任者(CTO)兼最高イノベーション責任者(CIO)。AI、研究開発部門のリーダーとして、アクセンチュアにおいて長年にわたりAI関連の研究、ビジネスの立ち上げに携わっている。ベンチャービジネス、先端技術開発、エコシステム部門も統括。1980年代初めから、ミシガン大学にて、コンピュータービジネスを専攻、ダグラス・ホフスタッターとともに認知科学、心理学を学び、AI研究に取り組む。オンラインメディア「Computerworld」の「2017年のテクノロジー・リーダー100人」の1人にも選ばれている。
H・ジェームズ・ウィルソン(H.James Wilson)
アクセンチュア・リサーチ マネジング・ディレクター。バブソン・エグゼクティブ・アンド・エンタープライズ・エデュケーション、ベイン・アンド・カンパニーにて、調査、研究業務に携わった後、アクセンチュアのIT、ビジネスリサーチ部門のリーダーとして活躍。バブソン大学のチームによる共著、The New Entrepreneurial Leader: Developing Leaders Who Shape Social and Economic Opportunityの著者の1人。パーソナル・アナリティクス、ソーシャルIT、ウェアラブル、ナチュラル・ユーザー・インターフェイス(NUI)など、マシンによる人間の能力拡張に早い時期から言及している。
監修:保科 学世(Hoshina Gakuse)
アクセンチュア アプライド・インテリジェンス(AAI)日本統括 マネジング・ディレクター。慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、およびデジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。『データサイエンス超入門』(共著、日経BP社)など著書多数。厚生労働省 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム 構成員など歴任。
訳者:小林 啓倫(Kobayashi Hiroaki)
1973年東京都生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを蔽んだ後、米バブソン大学にてMBA取得。外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『IoTピジネスモデル革命」(いずれも朝日新聞出版)など、訳書に『FinTech大全 今、世界で起きている金融革命』(日経BP社)『プロフェッショナルの未来 AI、IoT時代に専門家が生き残る方法』(朝日新聞出版)などがある。
パート1 「人間+マシン」の未来を現在から考える
1章 自己認識する工場―製造・サプライチェーン・流通におけるAI
2章 会計業務をするロボット―コーポレートファンクションにおけるAI
3章 究極のイノベーション・マシン―R&Dとビジネス・イノベーションにおけるAI
4章 フロントオフィスにボットがやってくる―カスタマーサービス、営業、マーケティングにおけるAI
パート2 ミッシング・ミドル―AIで業務プロセスを再考する
5章 アルゴリズムを正しく設計する―「責任あるAI」を実現する上で人間が演じる3つの役割
6章 普通の人々が素晴らしい結果を生み出す―AIが新しいレベルの生産性を実現する3つの方法
7章 業務プロセスを再設計する―リーダーのための5つのステップ
8章 人間とマシンのコラボレーションを発展させる―AIが働く職場のための8つの新しい融合スキル
結論 人間+マシン時代を生き残るために
解説 日本語版監修によせて、日本と日本企業が取り組むべきこと
要約ダイジェスト
第3の波と「ミッシング・ミドル」
ドイツ南部の町ディンゴルフィングにある、BMWの自動車工場の一角では、人間の作業者とロボットが協力し、トランスミッションを製造している。人間がギアケーシングを準備する一方で、ロボットァームが 5.44キロのギアを拾い上げる。
このロボットは軽量で、周囲の空間を認識することができる。その間に人間は次の作業に移るが、ロボットはケーシングの中にギアを正確に置く作業を行う。工場の別の区画では、先ほどとは異なる軽量のロボットァームが、小さなカーウィンドウの端に黒い接着剤を均等に塗布している。
こうした区画の間を作業者が歩き回り、グルーノズルを拭いたり、新しいガラスをはめたり、できあがったウィンドウを運び去ったりしている。まるで人間とロボットが、巧みに振り付けされたダンスを踊っているかのようだ。
さまざまな産業において、AIシステム(物理的な体を持つロボットからソフトウェア・ロボットまで)が人間の仕事を奪うという誤解が蔓延している。しかし私たちの研究によって、AIが特定の機能を自動化するために導入されたとしても、その真価は人間の能力を補完・拡張する点にあることが明らかになっている。
こうした人間とマシンの「共存関係」は、私たちが「ビジネス変革の第3の波」と呼ぶものへの扉を開く。ビジネス変革の第1の波は、「プロセスの標準化」がもたらした。その結果、計測と最適化、標準化が可能になり、大幅な生産性向上が実現した。第2の波をもたらしたのは、「プロセスの自動化」である。それを可能にしたのは IT技術の発展だ。
そして今、第3の波をもたらしているのは、「適応力のあるプロセス」の登場だ。今多くの産業のリーディングカンパニーは、自分たちの業務プロセスをこれまでよりも柔軟で、スピード感があり、かつ従業員の行動、嗜好、ニーズに適応する力を持つものにできると考えている。
この適応力を実現するのは、仮説に基づいて定義された一連のステップではなく、リアルタイムのデータだ。そこから生み出される業務プロセスは、標準化されているわけでもパターン化されているわけでもないにもかかわらず、以前よりも良い結果を繰り返し実現できる。
私たちはこの世界を、「ミッシング・ミドル(失われた中間領域)」と呼んでいる。「失われた」という言葉を使っているのは、誰もそれについて語ってこなかったからだ。マシンだけの活動と人間だけの活動の間にあるミッシング・ミドルでは、人間とマシンが協力して作業し、お互いが得意とする領域を担当する。
たとえば人間は、さまざまな AIアプリケーションの開発、トレーニング、管理を担当する。そしてマシンは人々に、無数のソースから大量のデータを取得しリアルタイムで処理・分析するなど、人間の能力を超えたスーパーパワーを与える。
誰が勝者となるのか
適応力のあるプロセスの時代には、単に人間を置き換えるだけにマシンを使う企業は、最終的に行き詰まる。一方で、マシンを活用する革新的な方法を編み出し、人間の能力を活用しようとする企業は、それぞれの業界でリーダーとなっていくだろう。
GEは、タービンブレードやジェットエンジンといった自社の製品について、