- 本書の概要
- 著者プロフィール
ではそうした経営の実現には何が必要か。コンサルティングと経営の経験を長く積んだ著者によれば、それは「人事」だ。全ての経営の問題は「人」に起因し、企業成長の源泉もまた人にあるからだ。本書では、特に業績と社風に大きな影響を与える「現場」の人事デザインを「経営理念」「人事育成」「働き方」など7つのフェーズで解説する。
著者は(株)日本経営で日本のコンサルティング黎明期から人事コンサルティングに取り組み、独立。30年以上にわたり多くの企業のコンサルティングを手掛け、経営者から高い評価を得る人物。空理空論ではなく、著者の実践をベースにした「たたき上げの経営実務書」として、経営幹部はもちろん、現場リーダー層にこそぜひご一読いただきたい。
株式会社末永イノベーション経営 代表取締役。1973年明治大学卒業。中小企業の労務管理支援の経験から「経営が良くならなければ労務は良くならない」と考え、経営コンサルタントを志して、1986 年(株)日本経営入社。未だコンサルティングが事業として確立していない時期に人事コンサルティングに取り組み、多くのコンサルタントを育てて顧客を広げ業績を伸ばして事業化する。その後、日本経営のトップマネジメントで全社の経営課題と向き合い、「どんな問題からも逃げない」を信条に実践して今日の経営成長の礎を築いた。
2012年株式会社末永イノベーション経営を設立、代表取締役に就任。自分の社員・管理者・役員・経営者としての体験知、これまでの多くの実務問題解決による実践知、主体的な学びによる学習知を立体化して新しいコンサルティングスキームを確立し、企業・病院等で実践して成果を出している。現場と人材を見抜く洞察力を活かした課題の提起と課題の改善に向けたリードの仕方に強みがあり、経営者から高い評価を得ている。著書に『社員が自主的に育つスゴい仕組み』(幻冬舎メディアコンサルティング)。
第1章 今、現場で起きていること
第2章 これからの経営―人事のパラダイムが変わる
第3章 経営の未来をつくる「現場の人事力」
第4章 社員一人ひとりの「稼ぐ力」を生み出す
終 章 強くて優しい会社をつくるために
要約ダイジェスト
経営の根幹は人事力である
強い会社とは、社風が伸び伸びとしていて社員に主体性があり、しっかりした価値観を持ち、結果として利益を出し続け、社会になくてはならない存在となっている会社だ。そして優しい会社とは、人材を大切にし、難しいことも力を合わせて乗り越える一体感があり、働きがいが感じられる会社である。
経営は問題の連続だが、いずれの問題も、元をただせばその根底には必ず「人」の問題が存在する。人が育っていれば起こらなかったことであったり、防ごうと思えば人が防げたことであったり、人と上手く連携していれば起こり得なかったことだったりする。
その意味で、経営の根幹は「人事力」にある。人事力とは「人材の持つ主体性と潜在能力を現場で最大限に引き出して発揮させる力」のことで、これは人事部が担うのではなく、現場の管理者がマネジメントで発揮する力のことを指している。
なぜなら経営の強みも、弱さも、問題も、現場にすべてが表れるからだ。そして現場においては、人事の仕組みが一つひとつの判断に大きな影響を与える。従って、現場の人事的なインフラが整うことによって、さまざまな判断の方向性が明確になり好影響を与えるのだ。
そのインフラの総称が「現場の人事デザイン」であり、もたらす効果を「現場の人事力」と呼んでいる。「現場の人事デザイン」とは、社員が仕事の目的に向かって主体的に仕事をするために必要なマネジメント・プラットフォームを「7つのフェーズ」で組み立てて、管理者はそれを活用し、人材を成長させていく仕組みのことだ。
人が主体的に行動するというのは人類の最高価値であり、主体的になれる人を一人でも多くつくることを目指すのが経営である。現場の人事が変われば人の動きも変わり、人の動きが変われば経営が変わる。現場の人事デザインは、そうした思想を持った仕組みである。
基本原理を示す7つのフェーズで人事のインフラを整える
「現場の人事デザイン」の7つのフェーズが体系的に整うと、説明できるマネジメントになるため、社員がマネジメントについて理解できるようになる。結果として管理者と社員の考え方のベクトルが合い、社員が主体的になる基盤になるのだ。具体的には以下のようなものだ。
1.経営理念・経営フィロソフィのフェーズ
経営理念は企業が目指す最高の価値観であり、経営の根本価値である。そして経営フィロソフィは、理念をより具現化して考え方や行動の指針とするものだ。それが浸透しているかどうかは商品やサービスはもとより、社員の行動にはっきり表れる。
従って、経営理念が形骸化しないように経営理念を理解・共有・実践する仕組みが必要で、それを体系化しながら浸透させることが重要だ。よく「仕組みがあれば浸透するか」「継続すれば浸透するか」という質問を受けるが、