『海の歴史』
(ジャック・アタリ/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 フランス大統領顧問や欧州復興銀行の初代総裁などの要職を歴任し、「欧州最高の知性」と称されているジャック・アタリ氏が、なぜ「海の歴史」を著すのか疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、実は人類の歴史上、政治、経済、軍事、文化、思想、テクノロジー等の重要な出来事はすべて「海」が舞台だったといっても過言ではない。

 だとすれば、海をめぐる人類の歴史を知ることは、未来を知る事につながる。本書はそうした視点で、宇宙の誕生から未来までの海の歴史を一気に描き切った大著だ。一読すれば、地球科学から文化人類学、海上貿易や軍事、データ通信などで近未来の覇権を握ろうと準備を進める米・中の動向といった地政学、経済学的知見まで、多くの未来のビジョンが得られるだろう。

 また本書は、海の環境保護という観点からの警鐘、啓蒙の書でもあり、発刊後、欧州の経営者たちに大きな影響を与えたという。四方を海に囲まれた海洋国家である日本の将来や地方創生に興味関心がある方はもちろん、新たな視座や大局的な歴史観を身に付けたいビジネスパーソンはぜひご一読いただきたい。

著者:ジャック・アタリ(Jacques Attali)
 1943年アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業、81年フランソワ・ミッテラン大統領顧問、91年欧州復興開発銀行の初代総裁などの、要職を歴任。政治・経済・文化に精通することから、ソ連の崩壊、金融危機の勃発やテロの脅威などを予測し、2016年の米大統領選挙におけるトランプの勝利など的中させた。
 林昌宏氏の翻訳で、『2030年ジャック・アタリの未来予測』(プレジデント社)『新世界秩序』『21世紀の歴史』『金融危機後の世界』『国家債務危機─ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』『危機とサバイバル―21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』(いずれも作品社)『アタリの文明論講義:未来は予測できるか』(筑摩書房)など著書多数。

訳者:林 昌宏(Hayashi Masahiro)
 1965年名古屋市生まれ。翻訳家。立命館大学経済学部卒業。訳書にジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測』(プレジデント社)『21世紀の歴史』、ダニエル・コーエン『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』、ボリス・シリュルニク『憎むのでもなく、許すのでもなく』他多数。

イントロダクション
第1章 宇宙、水、生命(130億年前~7億年前)
第2章 水と大陸:海綿動物から人類へ(7億年前から8万 5,000年前まで)
第3章 人類は海へと旅立つ(6万年前から紀元前1年)
第4章 櫂と帆で海を制覇(1世紀から 18世紀まで)
第5章 石炭と石油をめぐる海の支配(1800年から 1945年)
第6章 コンテナによる船舶のグローバリゼーション(1945年から 2017年)
第7章 今日の漁業
第8章 自由というイデオロギーの源泉としての海
第9章 近い将来:海の経済
第10章 将来:海の地政学
第11章 未来:海は死ぬのか?
第12章 海を救え
結論
翻訳者あとがき
原注

要約ダイジェスト

海にはすべてが凝縮されている

 海には、富と未来のすべてが凝縮されている。海を破壊し始めた人類は、海によって滅びるだろう。だが、海が真剣に顧みられることはほとんどない。海のことを知らないから大切にしないのだ。海の恵みを収奪し、海を汚染し、海を殺そうとしている。

 今日、海の表面積は3億6,100万平方kmであり、地球の 71%は海である。水はすべての生物体の主要な構成物質だ。海は、人間が必要とするすべての飲料水と酸素の半分、そして人間が摂取する動物性タンパク質の5分の1を供給する。気候を制御するのも海だ。

 いつの時代においても、経済、政治、軍事、社会、文化の分野で活躍するのは、海と港を支配する者たちだ。ほとんどのイノベーションは、海上において、そして航海のためにつくられた。アイデアと商品が流通するのは、昔も今も海のおかげであり、今日においても、商品、通信、電子データの 90%以上は海を経由している。この割合は今後も変わらないだろう。

 権力にも海が欠かせない。帝国は制海権を確保することによって野望を達成する。逆に、制海権を失うと衰退する。戦争の勝ち負けが決まるのは、ほぼ例外なく海上である。地政学を読み解く際には、イデオロギーは海を経由して大きく変化することを心得ておく必要がある。

 よって、われわれは海の重要性を理解する必要がある。人類のサバイバルに環境面で甚大な影響をおよぼすのは海であることがわかってきただけに、われわれは海を保全するために、あらゆる策を講じなければならないのだ。

 ところが、なんの策も講じられておらず、海の状態はますます悪くなっている。漁業資源は破壊され、海にはゴミが急速なペースで堆積している。海水の温度と海面水位は上昇している。海中の酸素は減り、生物種は危機に瀕している。沿岸部には世界人口の3分の2が暮らしているが、沿岸部のかなりの地域は居住不能になる。

 すべきことはたくさんある。第一に、今日までの海の歴史を学ばなければならない。それは海が人類をはじめとする生物種にきわめて重要な役割を果たしてきたことを理解するためだ。海の歴史は、海から眺める歴史に通じる。つまり、

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