- 本書の概要
- 著者プロフィール
電通でコピーライターとして活躍し、ハーバード・デザインスクールで都市デザインを学んだ著者によれば、本来デザイン思考は「1→10」の改善のためのツールである。それゆえ、デザイン思考からは「0→1」の発想は出てこない。本書ではこの点を「デザイン」の本質から丁寧にひも解き、著者が実践するイノベーティブな発想法を解説する。
その手法は、ハーバード・デザインスクールが教える「未来からのバックキャスティング(逆算)」や「スペキュラティブ・デザイン」といった考え方に基づき、個人の主観によって課題を見立て、客観的に改善していくもの。本書ではさらに「見立てる力」の鍛え方なども解説、斬新な事業や企画のアイデアを求めている方に必読の内容となっている。
株式会社 SEN代表/建築家/コピーライター。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、電通入社。コピーライター/CMプランナーとして数々の CM企画を担当。2014年電通を退職後、2017年ハーバード大学デザイン大学院にて都市デザイン学修士課程修了。2018年インバウンド向け旅館事業にて起業。第30回読売広告大賞最優秀賞。第4回大東建託主催賃貸住宅コンペ受賞。早稲田大学の社会人教育事業WASEDA NEOでは、ハーバード・デザインスクールが教えるビジネスデザイン手法を用いた事業創造実践プログラムの講師も務める。
第1章 デザインの誤解 The misconception of design
第2章 デザイン思考の誤解 The misconception of design thinking
第3章 0→1 Zero to one
第4章 0→1の実践 0→1 Practice
第5章 社会実装 Social Deployment
要約ダイジェスト
見立てる力
私は大学で建築デザインの勉強をした後、広告代理店でコピーライターとして CMをつくる仕事を始めた。「なぜ建築から広告?」と思われるかもしれない。その理由のひとつは、私にとって「建築のつくり方」と「映画のつくり方」は、9割方同じことだったからだ。
建築を設計する時、まず建物とは部屋の集合体であるという前提に立つ。入口を抜けると最初の部屋があり、次の部屋に移り、また次の部屋に移り、大きなメインの空間に移って、出口へと向かう。建築を体験するということは、部屋を連続的に移動することによる時間芸術と言えるのだ。
その観点に立てば、映像を見るという体験も同様だ。オープニングがあり、様々なシーンを経て、メインのどんでん返し、そしてエンディングへと移り変わっていく。建築が「部屋の連なり」であるのに対して、映像は「シーンの連なり」なのである。
2つに共通するのは「シナリオ」だ。主軸となる脚本ができてしまいさえすれば、それを空間に翻訳すれば建築に、映像に翻訳すれば映画となる。そして一度シナリオができてしまえば、建築と映画の間に留まる必要はなくなる。その脚本を文章として表現すれば小説に、音で表現すれば音楽に、総合的な体験として設計すればユーザーエクスペリエンスとなるだろう。
これを私は「見立てる力」と呼んでいる。それは、ふつうの人から見れば全く関係のない2つの異なるものも、それぞれをシナリオまで抽象化して捉えることで、同じ土俵で結びつけることができる能力だ。そして、ハーバードのデザイン教育は今、