『セキュアベース・リーダーシップ』
(ジョージ・コーリーザーほか/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 企業や組織を率いるリーダーには、ビジョン、信頼感、創造性、達成意欲、エンパワーメント(権限委譲)など、様々なものが求められる。中でも高い成果をあげるリーダーとなるために、重要な特性は何だろうか。スイスの名門ビジネススクール IMDでは、それはメンバーの「セキュアベース」となれることだと教える。

 セキュアベースとは、心理的な安全基地のようなもので、リーダーが信頼に基づく安全や安心感を提供して初めて、メンバーはリスクをとって高い目標に挑戦することができるのだ。本書では 1,000人以上の企業幹部への調査・研究によって明らかになった「セキュアベース・リーダーシップ」をわかりやすく解説する。

 著者らによれば、セキュアベース・リーダーの特性は後天的に学べるものであり、本書ではその身に付け方も事例とともに具体的に紹介。組織の大小を問わず、より高い業績や意欲的な課題、困難な組織変革に挑もうとする経営幹部やマネジャー層はぜひご一読いただきたい。著者3名はともに IMDで教鞭をとるリーダーシップと組織行動の専門家。

著者:ジョージ・コーリーザー(George Kohlrieser)
 スイスにある世界有数のビジネススクール、IMDの教授(リーダーシップと組織行動)。心理学者として、また人質解放の交渉人としての経験を持ち、得られた教訓を生かして、世界の100か国以上のリーダーやグローバル企業を対象に仕事を行ってきた。研究・教育・コンサルティング活動のテーマは、リーダーシップ、チームワーク、変革管理、対話・交渉、コーチング、ワークライフバランス、個人そして職業人としての成長、など。オハイオ州立大学にて博士号取得。彼が2002年に創設し、現在もディレクターを務めるIMDの6日間の High Performance Leadership(HPL)プログラムは、2018年9月までに80回を重ね、世界数十カ国の5000人を超えるリーダーが学んできた。

著者:スーザン・ゴールズワージー(Susan Goldsworthy)
 IMD客員教授(リーダーシップと組織変革)。オリンピック決勝出場経験を持つ元水泳選手。人々とともに、知識を行動に転換させるプロセスに取り組むことに情熱を持つ。経営幹部の自己変革を支援する、IMDのCLEAR(Cultivating Leadership Energy through Awareness and Reflection)プログラムの共同ディレクター。現在、組織行動論で博士号取得の過程にある。エグゼクティブコーチとしても経験が豊富。

著者:ダンカン・クーム(Duncan Coombe)
 IMD非常勤教授(組織行動とリーダーシップ)。企業幹部を対象に、リーダーシップ、組織開発、文化と変化のマネジメントなどのテーマについて講義、アドバイスを行う。仕事の中心となるテーマは人間の幸福で、個人、チーム、組織、社会など、あらゆるレベルでこのテーマを追求。ケースウェスタン・リザーブ大学のウェザーヘッド経営大学院で、組織行動論を研究し、博士課程を修了。IMDではMBA(経営修士号)を取得。プロクター・アンド・ギャンブルとインベステック・アセット・マネジメントでさまざまな事業開発のポジションを経験した。

訳者:東方 雅美(Toho Masami)
 慶應義塾大学法学部卒業。米バブソン大学経営大学院修士課程修了(MBA)。出版社や経営大学院の出版部門での勤務を経て独立。『チャイナ・エコノミー』(白桃書房)、『ハッキングマーケティング』(翔泳社)『「衝動」に支配される世界』(ダイヤモンド社)、『シリアル・イノペーター』(プレジデント社)、『世界一大きな問題のシンプルな解き方』(英治出版)など多数。

第1章 安全とリスクのパラドックス
第2章 セキュアベース・リーダーの9つの特性
第3章 信用構築サイクル
第4章 社会的感情としての「悲しみ」
第5章 「心の目」で見る練習
第6章 「勝利を目指す」マインドセット
第7章 自分のセキュアベースを強化する
第8章 他者のセキュアベースになる
第9章 「安全基地」としての組織
第10章 人間の顔をした組織をつくる

要約ダイジェスト

セキュアベースとは何か

 私たちの研究によると、成功したリーダーと失敗したリーダーの大きな違いは、人生にセキュアベースが存在したかどうかだ。そして、世界中の優れたリーダーは、自分自身や従業員や組織の中に秘められた、驚くほどの可能性を引き出している。彼らはシンプルに、自身のセキュアベースを活用し、また他の人々のセキュアベースとなることで、高業績を実現する。

 セキュアベースという言葉は、ジョン・ボウルビィとメアリー・エインスワースによる「愛着理論」研究から生まれた。ボウルビィの研究に続いて、研究者の J・W・アンダーソンが指摘したのは、子どもたちが冒険に出かけるとき、常に母親をセキュアベース(安全基地)としているということだ。

 幼児は遊び場で遊んでいても、時々母親の元に戻ってくる。母親にぴったりくっついている子もいれば、母親にほとんど注意を払わない子もいるが、共通するのは、恐怖を感じたり動揺したりすると、全員が母親のところに戻ってくることだ。

 このとき母親は2つのことを行っている。1つは、受け入れ、近くに来られるようにすることで、これによって安心を提供する。もう1つは、子どもがリスクをとる機会を提供することで、これによって子どもは自分で解決方法を見つけられるようになり、自主性が育つ。

 この概念を基盤とし、組織における「セキュアベース」という言葉を本書では「守られているという感覚と安心感を与え、思いやりを示すと同時に、ものごとに挑み、冒険し、リスクをとり、挑戦を求める意欲とエネルギーの源となる人物、場所、あるいは目標や目的」と定義する。

 セキュアベースの必要性は脳の奥深くから生じているものなので、この概念はどんな世代や文化にも当てはまる。セキュアベースの根幹となる2つの側面は、安全とリスクである。もし、安全だけを与えたとすると、過保護の状態となり、その人の可能性は限定される。一方で、リスクをとることだけを勧めると、その人物は不安になり、本能的に保身に走る。安全とリスクのうちの片方だけを提供すると、

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