- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書のテーマは、そうしたポジティブな孤独、創造的な孤独だ。何かに没頭し、集中するには孤独な環境に身を置かなければならない。だが「接続過剰」な現代、「ひとりの時間」をつくることは簡単ではない。そこで本書では、「孤独の効用」と、SNSに代表される「つながり依存」から脱出する方法をわかりやすく説く。
ついスマホに手が伸びてしまう、という方はぜひご一読いただきたい。「スマートフォンを使わなくても、ただそばに置くだけで認知能力が低下する」など様々なデータや心理学の知見から、群れない勇気と創造性を発揮するためのヒントがつかめるはずだ。著者は心理学者で、名城大学人間学部教授などを経て、現在はMP人間科学研究所代表。
心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学調師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在 MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企英研修・教育訓演を行う。
主著に『上司の常識は、部下にとって非常識』(クロスメデイア・パブリッシング)、『「上から目線」の構造[完全版]」(日経ビジネス人文庫)、『かかわると面倒くさい人』(日経プレミアシリーズ)がある。
第2章 なぜ、思考の浅い人間が増えるのか
第3章 「つながり依存」の実態
第4章 自分の時間を取り戻す
第5章 創造は孤独から生まれる
要約ダイジェスト
孤独を奪われた人々
孤独には、辛い側面もあるが、豊かな孤独、創造的孤独というものもある。多くの偉人たちも、「ひとりの時間」を大切にし、孤独の価値について言及している。私は、心理学者として多くの学生や社会人と接してきたが、その中で感じるのは、「多くの人たちは孤独を恐れ、ひとりの時間を活かすことができていない」ということだ。
親密な絆の欠如が心身を蝕むのは確かだが、それは「ほんとうの絆が少なくとも一つあれば、人は強く生きていける」ということでもある。重要なのは、かかわりの数でなく質なのだ。孤独から逃れようとして、浅いつながりをたくさん持ち、自分を磨く「ひとりの時間」を持てないようでは、よい人生を生きているとはいえない。
ここ数年で電車内の光景が一変した。座席に座っている人も、立っている人も、小さな液晶画面に目を凝らし、指をせわしなく動かしている。ネットで衣服や飲食店の検索をしたり、SNSで人の発言を読んだりしているようだ。中には無我夢中でゲームに興じている人もいる。考えごとをしている人、物思いにふけっている人はほとんど見当たらない。
SNSを見ている人は、知人が何をいっているかが気になって仕方がないようだ。何か重要な情報が流れていないか、だれかが何かおもしろい投稿をしていないかが気になってしまい、ついつい SNSを開いてしまう。こういった「見逃すことの恐怖」は、アメリカでは“FoMO”(Fear of Missing Out)と呼ばれ、日本でも問題視されている。スマートフォンがなかった時代には、電車内はひとりの時間を持てる場所だった。
また、充実したひとりの時間を過ごすのに、もっとも適しているものの一つが、読書である。しかし、大学生活協同組合連合会が毎年実施している「学生生活実態調査」によれば、1日の平均読書時間が「ゼロ」の学生の比率は、ここ数年で急激に高まり、2018年には 53.1%と、ついに5割を超えた。日本の大学生の半数以上が読書時間「ゼロ」というのは、日頃から大学生たちと接している者にとっては、「そうだろうな」と思わざるをえない結果だ。
電車内でのスマートフォンの利用に象徴されるように、思索にふけったり本を読んだりいった思考を深める行動が乏しくなることによって、実際にどのような問題が出ているのか。このところ目立つのが、自分でじっくり考えることなく、すぐに答えを見つけようとする傾向だ。
たとえば、売れている商品があり、若手の社会人に「どうしてそれが売れていると思うか」と尋ねれば、すぐにスマートフォンで検索をはじめる。そして、