『機会損失―「見えない」リスクと可能性』
(清水勝彦/著)

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 「機会損失」とは、「何かをやること」で「できなくなったこと」による損失、つまり意思決定に失敗し、より多くの利益を得られたであろう機会を逃してしまうことだ。こうした機会損失は個人から国家レベルまで存在するが、本書では、中長期計画やデータ分析、組織構造など、特に企業経営における機会損失を深く分析し、その対策を論じる。

 例えば、中長期計画に縛られ、新たな脅威やチャンスへの対策が遅れる事例はしばしば耳にする。その大きな原因は目の前の案件やプロジェクト、短期的な成果に気を取られ、それ以外の可能性が想定できなくなってしまうことにある。個人のバイアスや組織の習性がその傾向を加速させてしまうのだ。

 こうした機会損失を防ぐには、常に意思決定の基準や目的に立ち返り、広い視野で組織の全体最適を模索し続けるしかない。本書はそうした真の意味での戦略的な意思決定の仕方を解説する。著者は戦略コンサルティングファームを経て、現在は慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授を務める経営学者。

著者:清水 勝彦(Shimizu Katsuhiko)
 慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。1986年東京大学法学部卒業、86~96年株式会社コーポレイトディレクション(CDI)にて戦略コンサルタント。同社プリンシパルを経て、研究者に転身。94年ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、2000年テキサス大学A&M大学経営学博士(Ph.D.)。テキサス大学サンアントニオ校准教授(テニュア取得)を経て、2010年より現職。2012年より仏エクス・マルセイユ大学経営大学院でも教鞭を執る。専門は組織変革、戦略実行、M&A。Strategic Management Journal、Journal of Management Studies、Journal of International Management、Asia-Pacific Journal of Managementの編集委員を務める。
 著書に『あなたの会社が理不尽な理由』『戦略と実行』『戦略の原点』『リーダーの基準』(日経BP社)などのほか、学会のトップジャーナルに英語論文も多数発表している。 金融、メーカー、商社、エネルギー関係など大手企業の幹部研修や講演も多い。
第1部 意思決定にかかわる機会損失
 第1章 戦略と機会損失
第2部 意思決定プロセスにかかわる機会損失
 第2章 計画と機会損失
 第3章 データ分析と機会損失
 第4章 コンセンサスと機会損失
第3部 後悔と機会損失
 第5章 「機会損失を避けたい」という機会損失
 第6章 「将来の選択肢を増やす」機会損失
 第7章 心配と後悔と機会損失
 第8章 「適材適所」と機会損失
第4部 機会損失を最小化するために
 第9章 優先順位と機会損失
 第10章 機会損失にどう取り組むか(1)
 第11章 機会損失にどう取り組むか(2)
 第12章 機会損失にどう取り組むか(3)

要約ダイジェスト

機会損失とは何か

 本当に重要なことは、目に見えないことが多い。特に、「何かをやること」のコストとリターンはよく見えるが、それによって見えなくなること、つまり「やらなかったこと」や「できなくなったこと」がより重要だったりする。これが機会損失、すなわち「得べかりし利益」だ。

 例を挙げれば、MBAを取得するために、会社を辞めたとしよう。MBAの費用対効果としては、一般的に行く前のサラリーから卒業後のサラリーがどれだけ上昇したか、それにいくら払ったのかという ROI(Return on Investment)が話題になる。

 この投資(Investment)に相当する MBAの学費自体はコストだが、機会損失ではない。機会損失とは、もし会社を辞めずに働いていたら、これだけ収入を得られた、こんなチャンスもあった(あるいはなかった)、ということだ。

 機会損失の本質的な問題は、「見えない」ことにある。目の前の案件やプロジェクトに気を取られ、「もしこの案件に時間を取られなかったら何ができるか」とか「他により重要な案件はないのだろうか」ということにまでなかなか注意が行き届かないのだ。

 しかし、個人も企業も資源は有限だ。優先順位の低いことに時間を取られれば、本来やらなくてはならないことに対する投資が減り、ジリ貧は避けられない。本当の問題が見えるくらい大きくなったときは、だいたい手遅れである。

 機会損失を考えるとは、意思決定の基準、価値観を考えるということに他ならない。自分、自社がどの目的を、どの時間軸で達成したいのか、そのために限られた資源をどう配分したらよいのか。目に見えること、結果がすぐ出ることにとらわれてしまいがちな私たちの頭のどこかに、機会損失の概念を持つことで、

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