『パーパス・マネジメント―社員の幸せを大切にする経営』
(丹羽真理/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 昨今、生産性向上や働き方改革の文脈で様々な議論がなされているが、どうやって労働時間を削減するか、といった手法論に終始してしまうことが多い。だが働き方改革の本来の目的は、多様な働き方を可能にすることで、誰もが活躍し、幸せに働ける社会を実現することだ。当然そこでは働く個人それぞれの人生の目的や働く意義が重要になる。

 働く意義や目的を含む「存在意義」をあらわす言葉が、本書のタイトルにもある「Purpose(パーパス)」だ。実は、パーパスは経営の世界でもビジョンやミッションの根幹を成す概念として注目を浴びており、本書によれば、企業と個人のパーパスの重なりが多いほど幸福感と生産性は向上し、結果、大きな成果を生むことができるという。

 本書ではそうした経営手法パーパス・マネジメントの有効性をデータで明らかにし、社員の幸せに責任を持つ「CHO(Chief Happiness Officer)」の役割を通じて、その詳細を解説。経営層やチームの雰囲気や業績に悩むマネジメント層も実践できるヒントがつまった一冊だ。著者は企業の存在意義明確化をサポートする Ideal Leaders共同創設者 CHO。

著者:丹羽真理(Niwa Mari)
 Ideal Leaders 株式会社 共同創業者/CHO(Chief Happiness Officer)。国際基督教大学卒業、University of Sussex 大学院にてMSc 取得後、2007年に株式会社野村総合研究所に入社。民間企業及び公共セクター向けのコンサルタントとして活動後、エグゼクティブコーチングと戦略コンサルティングを融合した新規事業 IDELEA(イデリア)に参画。
 2015 年4 月、Ideal Leaders 株式会社を設立し、CHO(Chief Happiness Officer)に就任。社員のハピネス向上をミッションとするリーダー「CHO」を日本で広めることを目指している。経営者やビジネスリーダー向けのエグゼクティブコーチング、Purposeを再構築するプロジェクト等の実績多数。特定非営利活動法人 ACEの理事も務める。
はじめに Purposeを共有し、幸せに働く─その取り組みを主導するCHO
第1章 働き方よりも重要なこと。そのキーワードは「幸せ」
第2章 ポジティブな感情は仕事のパフォーマンスに影響する
第3章 個人にとっても組織にとっても「Purpose」が起点となる
第4章 Happiness at Workという考え方
第5章 Chief Happiness Officerの理論と実践─INTERVIEW
慶應義塾大学大学院 システム・デザイン・マネジメント(SDM)研究科 前野隆司 教授
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役人事総務本部長 島田由香氏
第6章 次世代型組織の中心となる CHOの実際
おわりに 日本型 CHOの確立に向けて

要約ダイジェスト

働き方よりも重要なこと。そのキーワードは「幸せ」

 働き方改革が叫ばれているが、企業活動を発展させたいとき、一番大事なのは、社員が仕事にやりがいを見いだしたり、会社が好きと思えるような熱意を持って仕事をしているか、つまりそこに「幸せ」を感じられるかどうかだ。なぜなら社員が幸せだと会社の業績は間違いなく上がるからだ。これは様々な調査から既に実証が進んでいるが、以下にいくつか紹介しよう。

  • 幸福度の高い社員の生産性は 31%高く、創造性は3倍高い
  • 幸せな気持ちで物事に取り組んだ人は、生産性が約 12%上昇する
  • 幸福度の高い医者は、そうでない医者と比較して平均して2倍のスピードで症状を分析し正しい診断を行う
  • 幸せな人は、健康、教育、政治、宗教などの組織で、チャリティや奉仕などのボランティアを行う傾向が高い
  • 仕事を行う際にポジティブな感情を示す人は、親切で同僚を助けるなど、仕事上すべきこと以上の行動をする傾向が高い

 これらの調査結果からは、「幸福度が高い人ほど、生産性が高く、創造力に富む」「幸福度が高い人ほど、他者を助け、組織を守る」という傾向が見てとれる。さらに、「幸せな社員」は会社の業績向上にも貢献しているという次のような研究結果もある。

  • 楽観的な生命保険エージェントは、そうでない人と比較して売上が 37%高い
  • 人生満足度の高い従業員が働いている小売店の店舗面積利益は他店のそれより 21ドル高く、小売チェーン全体では利益が 3,200万ドル増えている
  • 人生満足度の高い社員は顧客から高い評価を得る可能性が高い

 このように具体的に数字で示されると、「幸せな社員はこんなに業績に貢献するのか?」と驚かされる。実際、人材育成の分野でも、ここまで目に見えて成果が上がるメソッドというのはそうはない。しかも、

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