『新宿駅の小さな店ベルクは、なぜいつも満席なのか?』
(中山マコト/著)

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  • 目次
 新宿東口駅ビル地下にある個人経営の喫茶店「ベルク」。コーヒー 216円、ビール 324円の庶民的な価格帯、広さは15坪にもかかわらず、1日の来店客数は約 1500人を数える人気店だ。本書では、目立たない立地、約50人の従業員、高額な家賃といった難しさを乗り越え、30年以上経営を続けるベルクのユニークな経営とファンづくりの秘密に迫る。

 経営学的には、ベルクはコーヒー、パン、ソーセージ(ホットドッグ)という中核商品を磨き上げ、高品質・低価格・高回転で成功したといえるだろう。だがそれを実現するための工夫や試行錯誤にこそベルクの秘密がある。著者によれば、それは「媚びない」「地元客」「全方位対応」「名物」「品質」「饒舌」という6つのキーワードに集約される。

 著者はベルクに年間200日以上通い詰めるマーケターで、本書では上記キーワードを経営に活かすお店やサービスの他社事例も解説。個人事業主や中小・ベンチャー企業などで、経営・マーケティングのヒントを探している方は、ベルクの熱狂的に愛されるお店、サービスのつくり方から様々なヒントが得られるはずだ。ぜひご一読いただきたい。

著者:中山 マコト(Nakayama Makoto)
 マーケティングシンクタンク勤務後、仲間たちとマーケティングコンサルティング会社を設立。2001年に独立し、マーケティング、販売促進、広告制作に携わり、小売業、飲食業、サービス業などの売り上げ強化に手腕を発揮する。また、広告・販促プランナー、コピーライターとして、大手製薬メーカー、日本有数の食品メーカー、飲料メーカー、日用雑貨メーカー、コンビニチェーン本部など、多くの国内外の有力企業をクライアントとして手がける。
 著書に 『「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本』(KADOKAWA・中経出版) 『「バカウケ」キャッチフレーズで、仕事が10倍うまくいく』(学研プラス) 『フリーで働く!と決めたら読む本』(日本経済新聞出版社) 『お店の「バカ売れ」ポイントをつくる技術』(日本実業出版社) 『「爆売れ」コピーの全技術』 (かんき出版) 『9時を過ぎたらタクシーで帰ろう。』(きずな出版) 『飲み屋の神様。』(ヒカルランド)』など41冊を数える。
はじめに
第1章 わずか15坪なのに1日1500人が来店する、愛され続けるお店の秘密
第2章 熱狂的に愛されるお店の6つの秘密
第3章 お客さまに愛されている証拠は「2万人の署名」
第4章 まるでベルク!熱狂的に愛される11のお店・会社に学ぶ
おわりに

要約ダイジェスト

わずか15坪なのに1日1500人が来店

 ベルクが位置するのは新宿駅ビル、ルミネエストの地下。たった15坪の小さな店だ。しかも店舗の形状がL字型。お店からすれば使いづらい形状である。だが、こんな小さなお店に、毎日 1,500人が来店する。セブンーイレブンの平均来店客数は1店舗 1,000人といわれているから、1,500人がいかにすごい数字か、おわかりいただけるだろう。

 「駅ビル内の店だから」と思うかもしれないが、ベルクの場所は非常にわかりづらく、明らかに不利な場所にある。しかも、ベルクは 1,500人に無理なく対応するために、社員とアルバイトスタッフを合わせて 50人以上抱えている。

 セルフサービスのお店なので、コーヒーは 216円、ビールは 324円と価格はお手頃。どうすれば家賃(駅ビル内なので高い)と人件費をこの価格設定で支えきれるのか。年間、200日以上ベルクに通い詰めるなかで、ベルクがお客さまから熱狂的に愛される秘密は、次の6つに集約されると確信した。これらは、あなたのお店や会社ですぐにでも実践できるヒントばかりだ。

熱狂的に愛されるお店の6つの秘密

1.毅然としている

 第1の秘密は、自分たちのフィロソフィー、ポリシーを持っている、つまりいつも「毅然としている」ということ。これが愛されるお店・会社のいちばん大切な条件だ。例えば、ベルクはお客さま同士が言葉を交わすことが多いお店だが、他のお客さまへ必要以上に話しかける人もいる。とくに女性客は話しかけられやすい。

 そこで「ナンパ禁止」の POPを貼り出した。一部のお客さまから反対意見も寄せられたが、ベルクは自分たちが正しいと思う道を選んだ。相手がお客さまでも、譲れないところは譲らない。毅然と向き合う。それがベルクなのだ。

 またベルクでは現在、エリアを分けて喫煙を OKにしている。禁煙にしてほしいとのお客さまの声も多数寄せられている一方で、喫煙者にも吸う権利がある。だからこそ、吸う人には周囲に配慮し、煙を最小限にしてください…、というのがベルクのスタンスだ。お客さまが減ることは怖いことだが、ベルクは自分たちが考える正義や信念を安易にねじ曲げることの方がよほど怖いと思っている。その信念と覚悟が人々を惹きつける。

 ベルクの場合、何時から何時までの時間帯のお客さまだけ、30代の男性サラリーマンだけ、といった設定はできないから、駅ビルの利用者という一点にターゲットを絞り込んでいる。そこに強烈な色を与えているのが、

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