『教養として知っておきたい 「民族」で読み解く世界史』
(宇山 卓栄/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 いまも世界を悩ませる紛争や対立、移民・難民問題、排外的なナショナリズムの勃興といった課題の多くは、「民族」の対立にその原因がある。各地の諸民族はそれぞれの歴史を有し、他の民族と互いに影響を与え合いながら世界史を形作ってきたが、本書は、人種や国民、民族という視点から、そんな壮大な世界史の流れを俯瞰した一冊だ。

 本書では、民族の概念から、アジア・ヨーロッパ・インド・中東・アフリカなどの諸民族の歴史や対立の起源までをわかりやすく解説、特定の思想に偏ることなく、絶妙なバランス感覚で民族や国家の真実に迫っている。地名、民族名の語源などの周辺知識も多く、その面白さに引き込まれながらも、歴史や人間の本質について考えさせられるはずだ。

 「民族」を正しく知り、異文化を理解することは、グローバル時代の国際情勢を理解し、日本の未来を考えるためにも必須の教養だ。新たな視座を獲得したい読者はぜひご一読いただきたい。著者は大手予備校で世界史の講師として人気を博し、現在は著述家としてテレビ、ラジオ、雑誌などのメディアでも活躍する人物。

著者:宇山 卓栄(Uyama Takuei)
 1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。大手予備校にて世界史の講師として人気を博す。現在は著作家として活動。テレビ、ラジオ、雑誌など各メディアで時事問題を歴史の視点から解説するわかりやすさには定評がある。
 『「三国志」からリーダーの生き方を学ぶ』(三笠書房〈知的生きかた文庫〉)『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)『日本の今の問題は、すでに{世界史}が解決している。』(学研プラス)『世界史で学べ!間違いだらけの民主主義』(かんき出版)『世界史は99%、経済でつくられる』(扶桑社)など著書多数。
第1部 「民族」はこうして始まった
第2部 東アジアと日本
第3部 世界を支配したヨーロッパの国々
第4部 インド・中東・中央アジア
第5部 複雑に入り組む東南アジアの諸民族
第6部 世界史に刻まれた侵略と対立の傷跡
第7部 大帝国の成立―民族の融和
第8部 民族の血統が教える世界

要約ダイジェスト

人種、民族、国民

 ○○人という言葉は、「人種」「民族」「国民」という異なる視点の分類系を含む。「人種」はDNAなど遺伝学的、生物学的な特徴によって導き出されたカテゴリーで、現在ではコーカソイド、モンゴロイド、ネグロイド、オーストラロイドの4大人種に分類されている。

 「民族」は言語・文化・慣習など社会的な特徴によって導き出されたカテゴリーだ。例えば日本人と中国人は、人種に関してはモンゴロイドで同じだが、言語などが異なるため民族は同じではない。また「国民」は国家に所属する構成員を指し、国が定める法や制度を共有している。

 人種は内的要因によって特徴づけられる類型である一方、国民は外的要因によって特徴づけられる。民族はその中間で、血統・血脈といった「血の記憶」と切り離せない複雑な類型だ。それをわれわれは誰かに教えられるまでもなく感覚的に認知しており、そこには、秘められた禁忌のイメージがつきまとっている。

ハイブリッド人種「中国人」の正体

 古代中国は黄河流域から発祥し、紀元前16世紀の殷王朝の時代に漢字がつくられた。中国は漢字を使う諸民族とその領域・文明を指すもので、現在は漢人(漢族)、モンゴル人、チベット人、トルコ人などを含む多民族国家だ。

 有史以来、黄河流域で農耕を営む漢人は、北に隣接するモンゴル人の脅威に常にさらされていた。紀元前2世紀、漢王朝の武帝は巨額の軍事費を投じ、モンゴル人の匈奴を討伐。武帝の討伐は徹底したものだったので、モンゴル人たちは500年間、息を潜めていた。

 その期間、中国では三国志の動乱が起き、国内は疲弊した。280年、晋王朝が建国され天下が統一されるが、316年には早くも匈奴の侵入で滅びる。中国全土の疲弊と荒廃が限界に達したとき、力を蓄えていたモンゴル人たちが襲いかかったのだ。

 これ以降、華北(中国北部)のモンゴル人の王朝と江南(中国南部)の漢人の王朝が併存する南北朝時代(6世紀末まで)となる。この期間、華北のモンゴル人たちは漢字を使い、中国文化を取り入れ、中国人との婚姻を進めた。こうして大量に生み出された新しい混血人種は新たな支配者層として大きな力をもち、のちに隋や唐といった統一帝国をつくり上げていく。

 中国は漢人という枠組みを超えて、それ自体がきわめて複合文化的な様相を帯びている。現在の中国政府は「人口構成の92%が漢人(漢族)」と主張するが、

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