『ぼくらの未来をつくる仕事』
(豊田剛一郎/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 日本の医療は安価なのに質が高いと国際的に評価されているが、一方で非効率さ、高齢化による医療費の増大など多くの課題を抱えている。しかし、医療の仕組みに問題があるとわかっていても、現場の医師にはどうにもならないことも多い。そんな医療を変えるべく、ビジネスの世界に足を踏み入れたのが本書の著者、豊田剛一郎氏だ。

 著者は、医師4年目で恩師に「医療を救う医者になりなさい」という言葉をかけられ、大手戦略コンサルティング企業のマッキンゼー・アンド・カンパニーに転職。現在は医療 ITスタートアップの株式会社メドレーで「代表取締役医師」を務める人物。異色のキャリアの中で、著者は一貫して「医療の未来のために働きたい」という想いを持ち続けた。

 医師時代に感じた違和感から、医療の目的を問い直し、ITベンチャー企業で新しいサービスを開発し、普及させている著者の生き方からは、他業界にも生かせる多くの考え方やビジネスのヒントがある。自分のキャリアや未来について考えている若手はもちろん、働く意義や目的を見失いがちな中堅・ベテラン層の方も、ぜひご一読いただきたい。

著者:豊田 剛一郎(Toyoda Goichiro)
 株式会社メドレー代表取締役医師。1984年東京生まれ。東京大学医学部卒業後、聖隷浜松病院で初期臨床研修を終え、NTT東日本関東病院脳神経外科に勤務。2012年に渡米し Children’s Hospital of Michiganに留学。米国での脳研究成果は国際的学術雑誌の表紙を飾る。脳神経外科医として充実した日々を送る一方、日米での医師経験を通じて、日本の医療の将来に対する危機感を強く抱き、医療を変革するために臨床現場を離れることを決意。
 2013年に世界的な戦略系コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーへ。マッキンゼーでは主にヘルスケア業界の戦略コンサルティングに従事。同時期に、Facebook上で小学校時代の同級生で株式会社メドレーの代表瀧口浩平と再会し、“未来ある日本の医療をつくる” ことで意気投合。
 2015年2月より株式会社メドレーに共同代表として参画し、代表取締役医師に就任。「医療ヘルスケア分野の課題を解決する」をミッションに掲げるメドレーにて、遠隔診療を可能にするオンライン診療アプリ「CLINICS」、医師たちがつくるオンライン医療事典「MEDLEY」など、納得できる医療の実現に向けたサービスを立ち上げる。現在、スタートアップで最も注目される経営者の一人。本書は初めての著書である。趣味はサッカー。

株式会社メドレーHP【http://www.medley.jp/】

第1章 医療を救う医者になる!
第2章 がむしゃらに駆け抜けた医者生活
第3章 マッキンゼーでもらった気づき
第4章 日本の医療を考える
第5章 スタートアップで医療の未来をつくる!
第6章 新たな診療スタイル
第7章 僕が仕事をする上で大切にしていること

要約ダイジェスト

「先生におまかせします」で 本当によいのか?

 医療の現場にはまだまだ非効率・非合理的と感じることがたくさんある。その1つが「医療情報の共有」だ。原則として日本ではいつでもどこでも好きな病院に行ける仕組みなので、緊急時には今まで一度もかかったことがない病院に行くことも往々にして起こる。

 例えば、深夜に何の情報もない重症の患者さんが来たときはもう大変だ。意識がない場合は、ありとあらゆる検査を行い原因の特定に奔走する一方で、免許証や保険証から何とか名前を確認し、身内の方の連絡先や普段かかっている病院などの情報を必死に探し出す。

 既往歴(過去の大きな病気)もわからなければ、アレルギーの有無、現在薬を飲んでいるかどうかもわからない。何の情報もない初診の重症の患者さんの救急搬送を受け入れるのは、現場にとって非常に負担とリスクの大きいことなのだ。なぜこんなにも医療情報の共有がなされていないのかと、初期研修の当直のときに愕然としたことをよく覚えている。

 また、手術の前には、必ず「どんな手術なのか」「どんな危険性があるのか」などをきちんと患者さんや家族に話をして、同意書にサインをもらう「インフォームド・コンセント」が行われるが、

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