『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』
(トーマス・ラッポルト/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 シリコンバレーを代表する起業家・投資家ピーター・ティール。世界最大規模の決済プラットフォーム・ペイパルの創業者にして、投資家としてもフェイスブックの初の外部投資家を皮切りに、リンクトイン、ヤマー、イェルプなどに出資、巨額のリターンを得た人物である。著書『ゼロ・トゥ・ワン』によって日本でもかなり知られるようになった。

 本書はそんなティールの初の評伝であり、様々な角度からその思想の本質に迫った一冊だ。起業家・投資家としてのティールは「独占主義」をモットーとする。これは、他人と競争するのは愚の骨頂であり、企業は新しい市場を創造して独占、そして独占を強化し続けるべきだという考え方だ。またティールは、米国トランプ政権を支持し、現在もテクノロジー政策顧問を務めるなど「逆張り思考」にも強いこだわりがあるという。

 その根底には「テクノロジー至上主義者」「自由至上主義者(リバタリアン)」としての、ある種過激な側面も見え隠れしている。経営やテクノロジー、イノベーション的発想に興味関心がある方は必読の一冊であり、一読すれば、彼が描く未来の世界がはっきりと見えてくるだろう。著者は自身も連続起業家で、投資家、ジャーナリストとしても活躍するシリコンバレーの金融・テクノロジーに関する専門家。

著者:トーマス・ラッポルト(Thomas Rappold)
 1971年ドイツ生まれ。起業家、投資家、ジャーナリスト。世界有数の保険会社アリアンツにてオンライン金融ポータルの立ち上げに携わったのち、複数のインターネット企業の創業者となる。シリコンバレー通として知られ、同地でさまざまなスタートアップに投資している。シリコンバレーの金融およびテクノロジーに関する専門家として、ドイツのニュース専門チャンネル n-tv および N24などで活躍中。著書に『Silicon Valley Investing』がある。

翻訳:赤坂桃子(Akasaka Momoko)
 東京生まれ。翻訳家。上智大学文学部ドイツ文学科および慶應義塾大学文学部卒。ノンフィクションから文芸まで幅広いジャンルを手がける。おもな訳書に ヒレンブラント『ドローンランド』(河出書房新社)、ファラダ『ピネベルク、明日はどうする!?』(みすず書房)、ショウペンハウエル『読書について』(PHP)、『全貌ウィキリークス』(早川書房、共訳)他多数。

はじめに―iPhoneはイノベーションではない
第1章 はじまりの地、スタンフォード大学
第2章 「競争する負け犬」になるな―挫折からのペイパル創業
第3章 常識はずれの起業・経営戦略―ペイパル、パランティアはなぜ成功したのか
第4章 持論を発信する―『ゼロ・トゥ・ワン』と『多様性の神話』スキャンダル
第5章 成功のカギは「逆張り思考」―スタートアップの10ルール
第6章 ティールの投資術―なぜ彼の投資は成功するのか
第7章 テクノロジーを権力から解放せよ―ティールのリバタリアン思想
第8章 影のアメリカ大統領?―トランプ政権を操る
第9章 ティールの未来戦略―教育、宇宙、長寿に賭ける
おわりに―テクノロジーがひらく自由な未来へ
ピーター・ティールがシリコンバレーを離れる日―訳者あとがき

要約ダイジェスト

なぜ世界は「この男」に注目するのか?

 シリコンバレーでは、ピーター・ティールは偉大なテクノロジーのパイオニアで、卓越した知性とビジョンを備えた人物とみなされている。彼は3つの世界的企業に決定的な影響を及ぼしている──まず世界最大のオンライン決済サービス、ペイパルの共同創業者として。次に、いまや世界最大の SNS企業フェイスブックを、創業から支える初の外部投資家として。そして CIAや FBIを顧客にもつビッグデータ解析企業、パランティアの共同創業者として。

 そして彼のペイパルからは、イーロン・マスク(テスラ・モーターズ)、リード・ホフマン(リンクトイン)をはじめ、現在のシリコンバレーを代表する起業家が次々と生まれている。固い絆で結ばれた彼らは「ペイパル・マフィア」と呼ばれ、ティールはその首領としてその名をとどろかせている。

 だがこれは、ティールのほんの一面にすぎない。シリコンバレーの頂点を極めながら、誰よりもシリコンバレーにイラ立ちつづけている。「僕には『これ』がイノベーションだとは思えません」、ジーンズのポケットから iPhoneをとり出して、ティールはそう吐き捨てる。

 今日の世界はテクノロジーのおかげで繁栄しているように見えるが、彼によればそれはまやかしだ。いまや米国は、1960年代のアポロ月面着陸計画のような大きなビジョンを追うことも、

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