- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書は、著者の稲盛和夫氏が鹿児島大学で行った講演を中心にまとめたものだ。稲盛氏の生き方や経営の原理原則、仕事哲学などはもちろんだが、講演での質疑応答や、4人の大学教授による「稲盛フィロソフィ」についてのパネルディスカッションまで盛り込まれ、多様な角度から著者の考えを知ることができる内容になっている。
稲盛氏は京セラの創業者であるとともに、異なる業界であるKDDIの設立や、日本航空(JAL)の再建などで経営手腕を発揮してきた。それは「思い」や考え方の原理原則がどの業界でも通用することを証明している。日常ではなかなかハングリー精神を発揮する機会ない環境では、意識的に自分を奮い立たせなければそれ以上の成長はない。人生の目標や目的に悩む方、大きく困難な課題に挑もうとしている方はぜひご一読いただきたい。
1932年、鹿児島県生まれ。55年京都の硝子メーカーである松風工業に就職。59年4月、知人より出資を得て、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。現在名誉会長。第二電電企画(現 KDDI)の設立、JALの再建にも携わる。主な著書に『生き方』(サンマーク出版)『働き方』(三笠書房)『考え方』(大和書房)『アメーバ経営』『稲盛和夫の実学 経営と会計』(日本経済新聞出版社)などがある。
第1章 今、君たちに伝えたいこと
第2章 人は何のために生きるのか
第3章 自分の道を切り開くための六つの精進
第4章 仕事には哲学を持ち込め
第5章 20代で知っておくべき経営の12か条
第6章 稲盛フィロソフィの力(鹿児島大学 稲盛アカデミーより)
あとがき 鹿児島大学 稲盛アカデミーの挑戦
要約ダイジェスト
人生を決めていくのは、心の中に抱く「思い」
私の 84年にわたる人生を通じて、心にどのような「思い」を抱くかで、人生そのものが決まっていくということを幾度も経験してきた。したがってこれはこの世の真理であると、私は確信している。我々は一般に、物事を論理的に組み立てたり、頭で「考える」ことが大切であると思っているが、「思う」ことは、「考える」ということよりもはるかに大事なことなのだ。
それは2つの側面から捉えることができる。1つは、我々が毎日の生活を送るなかで抱く「思い」の集積が、我々の人間性、人柄、人格をつくりだしているということ。そしてもう一つの大きな役割は、「思い」がその人に合った境遇や環境を形成していくことである。言い変えれば、「思い」の集積されたものが、その人の運命をつくっているのである。
この「思い」が芽生えてくる人間の心は2つのものから成り立っている。1つは、「自分だけ良ければいい」という欲望に満ちた利己的な心。もう1つは、「他の人たちを助けてあげたい」、「みんなに親切にしてあげたい」という利他の心だ。
どの人の心の中にも、利己と利他の2つの心が同居しているが、大切なのは、そのどちらが大きな割合を占めるのかという点だ。利己的で邪な心をなるべく抑え、思いやりにあふれた美しい利他の心が自分の心の大部分を占めるには、自分で心を手入れしなければならない。
純粋で美しい「思い」を持つことに加えて、もう一つ我々が行うべきことがある。それは、