- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書ではこれまでの中年脳に対する「常識」を覆し、物事を概念化してとらえることがうまくなる、ストレスをうまく処理できるようになる、若者よりも幸福感やポジティブな感情を抱きやすくなるなど、研究成果に裏付けられた様々な真実を明らかにし、より健康な脳をつくり、長持ちさせる習慣を解説する。
中年はこれまで他の年代よりも注目度が低く、研究実績も少なかったが、寿命が延びたことでその意義が注目を集め始めている。加齢に対してネガティブに感じている方はぜひご一読いただきたい。著者は「ニューヨーク・タイムズ」の科学・健康・医療系記事の副編集長などを務めたサイエンスライターで、科学的知見をわかりやすく伝えることに定評がある人物。
「ニューヨーク・タイムズ」の科学・健康・医療系記事の副編集長(出版当時。後に科学系記事の編集デスク)。米国カリフォルニア大学バークレー校(英文学専攻)卒業後、新聞記者として長年のキャリアを持つ。扱う範囲はスペースシャトルのミッションから警官の誤射事件まで幅広く、ニューヨークの地下鉄事故の記事はピューリッツァー賞を受賞した(1992年)。本書は健康・医療系報道の経験も生かして、一般読者に科学をわかりやすく伝えるという著者の仕事における使命の延長線上にある。2015年没。著書に『子どもの脳はこんなにたいへん!』(早川書房)他。
監修・解説:池谷 裕二(Ikegaya Yuji)
1970年、静岡県藤枝市生まれ。脳研究者。東京大学薬学部教授。薬学博士。神経科学および薬理学を専門とし、海馬や大脳皮質の可塑性を研究。最新の脳科学の知見を出し惜しみせず、かつわかりやすく伝える姿勢は多くのファンを得ており、ベストセラー多数。
著書(共著を含む)に、『海馬』『脳はなにかと言い訳する』(新潮社)、『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(講談社)、『のうだま』『のうだま2』(幻冬舎)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社)、『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)他多数。
訳者:浅野 義輝(Asano Yoshiteru)
東京都生まれ(の中年)。国際基督教大学卒業、米・インディアナ大学大学院修士課程(言語学)修了、米・コロラド大学大学院博士課程(言語学)中退。バベル翻訳大学院翻訳修士取得。大学卒業後、翻訳会社で制作を担当する傍ら、技術文書などの翻訳を請け負ったことをきっかけに翻訳の世界へ。
ソフトウェアのローカリゼーション、システムテスターを経て、現在は米国の計測器メーカーのシニア常駐技術翻訳者。認知科学は大学院で学び、コロラド大学の認知科学研究所より認知科学関連コースの履修証明書を受ける。日本認知科学会会員。アメリカ翻訳者協会認定翻訳者、日本翻訳協会公認翻訳専門職資格など保有。米国在住。
プロローグ 研究成果からわかってきた「中年脳」
Part 01 「中年になると脳は衰える」というのはウソ
Part 02 本当はすごい「大人の脳」
Part 03 より健康な脳を作るための習慣
エピローグ 真の年齢とは、この先何年生きられるか
要約ダイジェスト
中年脳の真実
科学が中年脳の変化についての真実に迫るにつれて、そこには新たなイメージが浮かび上がってきた。それは、中年脳は驚くほど能力があり、意外な才能があるということだ。
中年は他の世代に比べて賢く、落ち着いていて、幸せを感じている。年を重ねるうちに、いろいろな事実を脳に貯めてきただけではなく、人間の脳は、中年に達すると実際に再構成がはじまり、行動や考え方も変わりはじめるのだ。
中年脳は、朝食に何を食べたのかは忘れるのに、仕事に行けばグローバルに展開する銀行を経営したり、学校や市を管理したり、ひいては国までも率いることができる。家に戻ればうるさいカーナビや、何もいわない娘たちとつき合い、サブプライム・ローンの破たんや近所の住民、自分の親とも向き合っている。これらの素晴らしい行動は、「大人の脳」の成せる業だ。
ほとんどの研究者は、現代の「中年」を 40歳~68歳の間と定めているが、この年齢範囲も実はあまり固まっていない。寿命が延び続けるにつれ、「終わり」や「中間」がどこなのかわからなくなってきているからだ。
この数年間に、中年脳についてはさまざまな発見があった。例えば、脳は中年期にその能力の頂点に達し、長い間その頂点を維持する。中年脳は混沌の中から解決策を見出し、無視すべき人物や事柄を見定め、障害物を避けるために曲がるタイミングがわかるのだ。
そして中年期に脳に起こる変化のおかげで、