『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか―労働力余剰と人類の富』
(ライアン・エイヴェント/著)

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  • 目次
 テクノロジーの進化によるデジタル革命は、ロボットへの仕事の置き換えやシェアリングエコノミーの浸透など、社会に次々と変化をもたらしている。その結果、これまで存在してきた様々なものの価値が薄れたり、逆に高まったりしているが、今、その価値が高まっていると言われているのが「ソーシャル・キャピタル」だ。

 本書では「ソーシャル・キャピタル」を「特定の社会的文脈の中でだけ価値を持つ知識や文化や行動パターン」と定義し、その重要性を説く。今世界で起こっている労働力余剰の背景には、新興国の成長が大きく関連している。だが、彼らは便利なテクノロジーの一端をつまみ食いしているだけで、継続的な成長をもたらす「ソーシャル・キャピタル」を育てていないため、今後成長は減速するという、鋭い主張が展開されている。

 著者は英『エコノミスト』誌でシニアエディターとして世界経済を担当し、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』にも寄稿する敏腕コラムニスト。本書は、世界経済についての最新の論評というだけでなく、企業や組織、働き方や生き方を考えるうえでも重要なソーシャル・キャピタルという視点を与えてくれる必読の一冊だ。

著者:ライアン・エイヴェント(Ryan Avent)
 英『エコノミスト』シニア・エディター、記者。2007年より『エコノミスト』で世界経済を担当。現在は同誌のシニア・エディター兼経済コラムニスト。『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントン・ポスト』、『ニュー・リパブリック』、『アトランティック』、『ガーディアン』にも寄稿している。2011年にKindle Singleで著書「The Gated City(未邦訳)」を刊行。ヴァージニア州アーリントンで妻と2人の子どもとゴールデンレトリバーとともに暮らしている。

翻訳:月谷 真紀(Tsukitani Maki)
 上智大学文学部卒業。訳書に、ライオネル・セイラム『誰かに教えたくなる世界一流企業のキャッチフレーズ』(クロスメディア・パブリッシング)、フィリップ・コトラー/ケビン・レーン・ケラー『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント(第12版)』(丸善出版)、ケビン・レーン・ケラー『エッセンシャル戦略的ブランド・マネジメント(第4版)』(東急エージェンシー)、カール・ピルマー『1000人のお年寄りに教わった 30の知恵』(サンマーク出版)など。

序章
第1部 デジタル革命と労働力の余剰
 第1章 汎用テクノロジー
 第2章 労働力の供給過剰をマネジメントする
 第3章 もっと良い働き口を探して
第2部 デジタルエコノミーの力学
 第4章 希少性という利点
 第5章 情報処理する有機体としての企業
 第6章 21世紀のソーシャル・キャピタル
第3部 デジタルエコノミーが道を誤るとき
 第7章 1%の人々限定の場所
 第8章 ハイパーグローバリゼーションと発展しない世界
 第9章 長期停滞という厄災
第4部 余剰から繁栄へ
 第10章 賃上げがなぜ経済的に実現しにくいのか
 第11章 労働力余剰時代の政治
 第12章 人類の富
エピローグ

要約ダイジェスト

重要性を増す社会の富

 デジタル革命によって、多数の人々にとって、仕事は確実に手に入るものではなくなり、生活を保障してくれるほどの報酬を得られるものでもなくなった。デジタル革命は産業革命とよく似ている。産業革命の経験が教えてくれるように、テクノロジーがもたらす、新世界の果実を分かち合うための社会制度が合意を得るまでには、苦しい政治的変化の時期をくぐり抜けなければならない。

 そこでは、経済的豊かさを生み出した功績は誰のものか、生み出された富にあずかる権利は誰のものか、が問われている。高額所得を稼いでいる者の多くが、自分たちは過大な税負担で社会の「富を生み出す者」だと考え、高所得は努力とイノベーションと雇用創出への報酬だと思っている。

 これはある程度は事実だが、もしビル・ゲイツとマイクロソフトが存在しなければ、世界のパソコンが動かなかっただろうか。そんなことはない。別の企業がその空白を埋めていたに違いない。個人の努力に意味がないと言うつもりはないが、個人の努力によって生み出された富は、その努力を発揮できた社会のおかげだ。

 私たちは富を生み出す側と享受する側に単純に二分できるわけではない。私たちは社会の参加者であり、大きな社会的コンセンサスに従って社会を運営している。その合意が崩壊すれば、システムは破綻して、全員に行き渡る社会の富は縮小してしまう。

 デジタル革命によって社会の富の重要性が増すにつれ、特定の社会の中に所属し、その社会の富の分け前にあずかれるのは誰か、をめぐる争いも激しくなる。デジタル革命の可能性を最大限生かすためには、国が社会の富を共有する度合いを高めなければならない。

資本とソーシャル・キャピタル

 1980年代初め以降、労働者ではなく資本家に配分される所得のシェアは世界中で着実に拡大している。これは「ソーシャル・キャピタル」が生み出す収益の増大という現象の予兆である。ソーシャル・キャピタルは、

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