『サービスイノベーションの海外展開』
(伊丹敬之ほか/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 日本企業の海外展開といえば製造業のイメージが強いが、近年では飲食・小売りなどサービス産業の進出も相次いでいる。ただし、サービス業は現地従業員が現地の顧客にサービスを提供するため、製造業とは異なる難しさが存在する。本書はそれらを乗り越えて海外でも大きな成功を収めた企業に着目し、サービス業における海外展開の要諦を探る。

 本書で取り上げられているのは、ユニークな商品で知られる良品計画(無印良品)、和食チェーンの大戸屋、警備保障のセコム、教育サービスの公文教育研究会の4社。現地訪問やインタビューも交え、彼らがいかに日本発のサービスを苦心して翻訳し、現地従業員を巻き込んでいったかを詳細に描きながらも、彼らに共通する成功要因への理論的な考察が行われている。

 著者らが導き出したサービス業における海外展開の成功要因は、①コンセプトの力、②ビジネスシステムの翻訳、③経営理念の伝道、④「場」の輸出、⑤モノの助けの5つだという。著者は伊丹敬之 国際大学学長・一橋大学名誉教授をはじめとする、企業のイノベーション研究に定評がある5名の経営学者。サービス産業での海外展開を視野に入れている企業にとってはもちろん、マーケティングや人材育成といった経営課題を考えるための示唆が多い一冊だ。

著者:伊丹 敬之(Itami Hiroyuki)
 国際大学学長 一橋大学名誉教授。一橋大学商学部卒業、1973年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(Ph.D.)。一橋大学商学部助教授、スタンフォード大学客員准教授、一橋大学教授、東京理科大学教授を経て、2017年9月より国際大学学長。
 主著に『経営戦略の論理』『孫子に経営を読む』『難題が飛び込む男 土光敏夫』(以上、日本経済新聞出版社)、『よき経営者の姿』『人本主義企業』(以上、日経ビジネス人文庫)、『場の論理とマネジメント』『経営を見る眼』『経済を見る眼』(以上、東洋経済新報社)、『日本型ビジネスモデルの中国展開』(有斐閣)、『人間の達人 本田宗一郎』『高度成長を引きずり出した男』(以上、PHP研究所)などがある。

著者:高橋 克徳(Takahashi Katsunori)
 東京理科大学大学院イノベーション研究科教授 株式会社ジェイフィール代表取締役。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、2001年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。野村総合研究所、ワトソンワイアットを経て、2007年「組織感情とつながり」を機軸とするコンサルティング会社ジェイフィールを共同で設立。2013年より東京理科大学大学院教授を兼務。
 主著に、『不機嫌な職場』(共著、講談社)、『職場は感情で変わる』(講談社)、『潰れない生き方』(KKベストセラーズ)、『人が「つながる」マネジメント』(中経出版)、『ワクワクする職場をつくる。』(共著、実業之日本社)、『イキイキ働くための経営学』(共著、翔泳社)などがある。

著者:西野 和美(Nishino Kazumi)
 一橋大学大学院商学研究科准教授。一橋大学商学部卒業。化学メーカー勤務を経て、一橋大学大学院商学研究科修士課程に進学。2001年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(商学)。2002年東京理科大学経営学部講師、2004年東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科(イノベーション研究科)技術経営専攻講師、2006年同准教授。2017年より現職。
 専門は経営戦略、技術経営。主著に、『自走するビジネスモデル』(日本経済新聞出版社)、『ケースブック 経営戦略の論理』(共編著、日本経済新聞出版社)などがある。

著者:藤原 雅俊(Fujiwara Masatoshi)
 一橋大学大学院商学研究科准教授。一橋大学商学部卒業。2005年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了(商学)。京都産業大学経営学部専任講師、准教授を経て、2013年より現職。
 論文に、 Fujiwara, M.( 2017) “A Dynamic Perspective on Innovation and Business Model: A Case Study of the Inkjet Printer Industry,” In S.E.Little,F.M.Go,and T.S-C.Poon(eds.),Global Innovation and Entrepreneurship: Challenges and Experiences from East and West,Palgrave Macmillan pp.191─210;藤原雅俊(2016)「大戸屋:店内調理の海外展開」『一橋ビジネスレビュー』64巻2号、pp.142─156などがある。

著者:岸本 太一(Kishimoto Taichi)
 東京理科大学大学院イノベーション研究科講師。一橋大学商学部卒業。2008年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了。博士(商学)。一橋大学大学院商学研究科特任講師、東京大学ものづくり経営研究センター特任助教、敬愛大学経済学部准教授を経て、2014年より現職。
 主著に、『中小企業の空洞化適応~日本の現場から導き出されたモデル~』(共編著、同友館)、「モデルの背後に流れる原理~人の成長と深い蓄積を活かす~」(伊丹敬之編著『日本型ビジネスモデルの中国展開』有斐閣、pp.333-352)、「利益率に見る中村改革」(伊丹敬之・田中一弘・加藤俊彦・中野誠編著『松下電器の経営改革』有斐閣、pp.231-257)など。

総論 日本発サービスイノベーションの海外展開
第1部 事例編 先進企業はこうして売っている
 第1章 良品計画 コンセプト、商品、店舗の一体展開
 第2章 大戸屋 店内調理の海外展開
 第3章 セコム 「日本発の仕事観」浸透による成功
 第4章 公文教育研究会 共感でつながる海外展開
第2部 論理編 世界にひろげるための成功の鍵
 第5章 日本発コンセプトのパワーと具現化
 第6章 社会インフラを超えるビジネスシステム設計
 第7章 「理念の伝道師」主導の現地経営
 第8章 相互作用が生まれる「場」の輸出

要約ダイジェスト

世界に広がる日本のサービス産業

 日本の産業の海外展開といえば、製造業が中心だったが、サービス産業でも日本企業が世界にひろがってきている。良品計画(無印良品)、大戸屋、セコム、公文教育研究会、という4つの企業はかなりユニークな海外展開の事例で、しかも「日本発のサービスイノベーションの海外展開」に成功した例である。

 良品計画の場合、「無印」そしてシンプルさというユニークな商品コンセプトとデザインなどにより、日本国内で新しい生活雑貨を中心とする小売りチェーンをつくり上げた。その基本を変えずに海外進出をし始めてから四半世紀が経ち、2017年2月期で海外店舗は403店舗(国内は418店舗)あり、連結営業利益の383億円のうち4割が海外での利益である。

 和食レストランチェーン大戸屋は、フランチャイズ店も含めてセントラルキッチンではなく「店内調理が基本」という仕組みのイノベーションを国内で興した。同じ仕組みで海外進出を始めてからまだ10年強だが、2016年3月末時点で東南アジアを中心に7つの国と地域に進出し、海外店舗数は92(国内店舗数は308)。その大半がフランチャイズ店で、店内調理だ。

 警備保障サービスの日本最大手セコムの海外展開の歴史はすでに40年近く、

続きを読むには会員登録が必要です。

© 2018 ZENBOOKS,Inc. All Rights Reserved.
要約記事は出版社または著作者から適法に許諾を取得し、作成・掲載しています。本記事の知的所有権は株式会社ゼンブックスに帰属し、本記事を無断で複製、配布、譲渡することは固く禁じます

特集