- 本書の概要
- 著者プロフィール
そのためには、正しい価値観や道徳観などをAIに実装しなければならないが、それは「善悪とは何か」「正義とは何か」「意識とは何か」といった哲学の領域になる。本書ではそうした哲学や、宗教についての根源的な考えに触れながら、AIが統治する世界の最善のシナリオを提示。さらに、今から AIがシンギュラリティーに達するまでの間の時代に、私たちがどう生きるべきかの具体例も示している。
著者は、ジャパン・リンク代表取締役社長でソフトバンクなど国内外の通信関連企業のアドバイザーやコンサルタントとして活躍する人物。本書の提起する課題は、単なる思考実験ではなく現実の我々の未来に直結している。AIの危険性を恐れて投げ出すのではなく、勇気をもって向き合うべきだと説く本書は、AI開発者だけでなく、これからの時代を生きるすべてのビジネスパーソンの必読書と言えるだろう。
(株)ジャパン・リンク代表取締役社長、ソフトバンク(株)シニア・アドバイザー。伊藤忠(米国会社SVP、東京本社通信事業部長等)、クアルコム(日本法人社長、米国本社SVP)、ソフトバンクモバイル(取締役副社長)等で55年にわたり第一線の仕事をこなし、現在もなお、コンサルタントとして世界を舞台に活躍中。
第二章 人間と「神」
第三章 すべての「人間的なもの」
第四章 AIと向き合う哲学
要約ダイジェスト
人間は AIとどう向き合うべきか?
AI(人工知能)の能力が飛躍的に拡大すると、あらゆる分野で膨大な仮説が次々に生み出され、検証され、相互に関連付けられていく。こうなると、当初は人間がプログラムした検索や推論の方法も、AIは次々に自力で改善していき、AIが「より優れたAI」を自ら作り出すという「加速度発展」が無限に続き、現在の我々にはまったく想像もできない世界が到来する可能性がある。このような仮説をテクノロジカル・シンギュラリティーという。
これまで、AIやロボットの人間に対する優位性を語るときには、第1には「スピード」、そして第2には、「24時間休みなく働き続ける」ことだった。しかし、ここに第3のポイントが現れる。それは、「先入観」「偏見」「身びいき」「同情」「執着」「迷い」「嫉妬」「自己顕示欲」といった、「人間的な弱点」から自由であることだ。
したがってAIは、マニュアル通りに働く仕事よりは、むしろ、高度の知識と判断力が求められる職種に向いているだろう。医師や弁護士のような専門職や、企業の管理職や経営者、さらには政治家や経済政策の立案者の仕事は、今後大幅にAIに取って代わられる可能性がある。
そしてさらに、科学技術の彼方にある、人間の最後の砦、哲学や宗教の世界にまで入り込んでくるかもしれない。極端な話をすれば、