- 本書の概要
- 著者プロフィール
この「衰退惹起サイクル」は、日頃は何の害も及ぼさないが、ひとたび環境が変化すると一気に企業の適応を困難にし、さらに自社だけで止めることが難しくなるという。その裏には、経営陣の意思決定やミドルの社内調整、出世条件、経営陣登用プロセス、経営陣の資質などの要素が因果関係をつくりながら回っていた。本書では、破綻企業と優良企業を比較分析することで、こうした破綻企業の衰退サイクル、そしてそれに歯止めをかける組織づくりなどをアカデミックかつ実践的な目であぶりだす。
著者は事業再生のプロとして、産業再生機構でカネボウなどの事業再生に尽力し、現在は株式会社日本人材機構代表取締役社長を務める人物。優良企業であっても、破綻企業と同じような特徴を有していることが多いため、今事業が順調である企業の方も「明日は我が身」と緊張感をもって読み進められるはずだ。その上で、自社には破綻を防ぐ「くさび」があるのか、照らし合わせながらご一読いただきたい。
日本人材機構代表取締役社長。1961年東京都生まれ。1984年東京大学法学部卒業、通商産業省(現・経済産業省)入省。1991年プリンストン大学ウッドローウィルソン大学院修了(国際関係論専攻)。1997年カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社入社、代表取締役常務などを経て、2004年株式会社産業再生機構入社、カネボウ株式会社代表執行役社長(出向)。
2007年丸善株式会社(現・丸善CHIホールディングス株式会社)代表取締役社長を経て、2015年より株式会社日本人材機構代表取締役社長。2016年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。株式会社西武ホールディングスと株式会社ミスミグループ本社の社外取締役、金融庁参与を兼務。
第1章 破綻企業の内側
第2章 日本企業への文化の影響
第3章 優良企業の内側
第4章 オーナー系企業の内側
終 章 日本企業への警鐘
要約ダイジェスト
破綻企業に共通する「衰退の法則」をあぶり出す
「破綻する日本企業には、類似点が多い」とは、企業再生の専門家が、よく口にする言葉である。それは本当なのか、似ているとすればどこがどのように似ているのか、本書は、実際に破綻に至った企業群を詳細に調査することにより、これらの問いに答えを導き出す。
分析対象は、スキャンダルなどの不祥事や大事故といった突発的な事由による破綻企業ではなく、通常の事業活動を行いながらも、事業環境の変化にうまく対応することができず、売上げや利益がズルズルと減少を続けた末に破綻に至った企業である。
経営陣が同じような意思決定を繰り返し、経営陣が入れ替わっても継続する理由を解明するためのポイントは、①経営陣の意思決定プロセス、②ミドルによる社内調整プロセス、③ミドルの出世条件・経営陣登用プロセス、④経営陣の資質、の4つだ。
①~④の4つの要素が、①+②→③→④→①+②という流れで循環するサイクル状に連結する。これは経営学の先行研究をベースに、日本企業の特徴であるミドルの役割を筆者が加味したものだが、