『人工知能のための哲学塾』
(三宅陽一郎/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 現在世界中で人工知能(AI)の開発競争が繰り広げられており、その進化には様々な期待と不安が寄せられている。だが現在のAIは、人間に近い形を持ち、人間と会話ができるものであっても、生物と言うにはまだどこか違和感がある。著者でありゲームAI開発者として著名な三宅陽一郎氏によれば、それはAIが生物の持つ「主観的な世界」を再現できていないからだ。

 人工知能の中に主観的世界を形成するためには、「知能とは何か?」という生命の根源に迫る問い、つまり哲学が必要となる。そこで本書では、現在の人工知能開発を支える哲学思想を解説しながら、知能とは何かを探求する。全六回で開催され好評を博したイベント「人工知能のための哲学塾」の講演録でもあり、AI開発の最先端と、近代哲学の流れがわかりやすく解説された稀有な一冊となっている。

 本書はAIに関する唯一の「正解」を提示するものではない。それは、AIがサイエンスとエンジニアリングと哲学が交錯する新分野であり、いまだ確立した方法論がなく、今後もさらなる深化が求められているからだ。AIは今後、否応なしに大多数の人々の生活にかかわってくる。哲学を足掛かりにAIへの本質的な理解、そして人間は何をすべきかといった思索を深めてくれる本書は、現代を生きるビジネスパーソンの必読書と言えるだろう。

著者:三宅陽一郎(Miyake Yoichiro)
 京都大学で数学を専攻、大阪大学大学院物理学修士課程、東京大学大学院工学系研究科博士課程を経て、人工知能研究の道へ。ゲームAI開発者としてデジタルゲームにおける人工知能技術の発展に従事。国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会チェア、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。
 最新の論文は『デジタルゲームにおける人工知能技術の応用の現在』(人工知能学会誌 2015年1月 30巻1号)『ゲーム、人工知能、環世界 考える存在から経験の総体へ、AIのための現象学的転回』(現代思想 2015年12月号)。
知をめぐる冒険(犬飼博士:ゲーム監督/eスポーツプロデューサー)
第一夜 フッサールの現象学
第二夜 ユクスキュルと環世界
第三夜 デカルトと機械論
第四夜 デリダ・差延・感覚
第五夜 メルロ=ポンティと知覚論
あとがき(大山 匠)
付録 関連年表
付録 第五夜グループディスカッション

要約ダイジェスト

人工知能のための哲学

 人工知能はサイエンス、エンジニアリング、哲学が交錯する分野だ。哲学と人工知能がなぜ絡んでくるかというと、人工知能を作るということは知能について考える、知ることだからである。知能を考えるときに、哲学が足場になるのだ。

 デカルトやその後継者たちは、機械論や合理主義の方向へずっと進んできた。合理主義は人間から世界という「外」に向かって、ものごとを疑い得ない明証性の上に解明しようというもので、科学の進歩に貢献して大成功した。ところが、こと人間や動物に関してはそれがうまくいかないということで、フッサール、メルロ=ポンティなど、現象学の哲学が出てきた。

 ゲームのキャラクターの人工知能を作っている僕も同じで、物理シミュレーションによってゲームの世界を作るのはニュートン的、デカルト的世界観でよいが、人工知能は単なるモノではない。残念ながらデカルト的世界観では足りず、

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