『不道徳な見えざる手』
(ジョージ・A・アカロフ、ロバート・J・シラー/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 いつの時代にも、人の弱みや勘違いなどにつけこみ、欲しくもないものを買わせるような詐欺師は存在してきた。本書の原題にある「Phishing」は「fishing」に由来し、日本でもフィッシング詐欺という言葉でも使われている「釣り行為」のこと。なお「Phool」は「fool(愚か者)」に由来する「カモ」の意である。

 本書は、釣り師とカモの事例から、戦後の「新自由主義」やアダム・スミスの主張した「見えざる手」の限界を指摘し、現代経済を読み解く意欲作だ。クレジットカードによる過剰消費、広告やマーケティングによる売り込み、はたまた薬品や食品、政治、酒、タバコ、ギャンブルなど様々な事例を上げながら、市場で行われる「釣り」の手口とその背景、対策に迫る。一般的な経済学者や金融専門家は、こうした人の弱みにつけ込む詐術は、時折起こる例外的な事象として捉えている。

 しかし著者らは、あらかじめ自由主義システムに組み込まれていると主張する。つまり「経済とは、釣り師とカモの永遠の闘い」なのである。著者のジョージ・A・アカロフ氏とロバート・J・シラー氏は、ともにノーベル経済学賞を受賞した第一線の経済学者。同共著による、経済を人間のアニマルスピリット(衝動)から捉えなおした『アニマル・スピリット』の続編として、経済学への新たな視点を得られる一冊だ。

著者:ジョージ・A・アカロフ(George A.Akerlof)
 ジョージタウン大学教授。2001年ノーベル経済学賞受賞。著書に『アニマルスピリット』(シラーとの共著)、『アイデンティティ経済学』(レイチェル・クラントンとの共著)など。

著者:ロバート・J・シラー(Robert J.Shiller)
 イエール大学教授。2013年ノーベル経済学賞受賞。著書に『アニマルスピリット』(アカロフとの共著)、『それでも金融はすばらしい』『投機バブル 根拠なき熱狂』『新しい金融秩序』『バブルの正しい防ぎかた』など。

翻訳:山形 浩生(ヤマガタ ヒロオ)
 翻訳家。1964年東京生まれ。東京大学工学系研究科都市工学科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務するかたわら、科学、文化、経済からコンピュータまで、広範な分野での翻訳と執筆活動を行う。
 アカロフとシラーの前著『アニマルスピリット』や、『アイデンティティ経済学』、『それでも金融はすばらしい』を翻訳。クルーグマンほか『国際経済学』、ピケティ『21世紀の資本』、アトキンソン『21世紀の不平等』(いずれも共訳)、ワグナー&ワイツマン『気候変動クライシス』などの翻訳を手がける。

まえがき 経済はごまかしに満ちている
序章 みんな操作されてしまう:釣りの経済学
第1部 釣り均衡を考える
 第1章 人生至るところ誘惑だらけ
 第2章 評判マイニングと金融危機
第2部 あちこちにある釣り
 第3章 広告業者、人の弱点を突く方法を発見
 第4章 自動車、住宅、クレジットカードをめぐるぼったくり
 第5章 政治でも見られる釣り
 第6章 食品、医薬品での釣り
 第7章 イノベーション:よいもの、悪いもの、醜いもの
 第8章 たばこと酒と釣り均衡
 第9章 倒産して儲けを得る
 第10章 マイケル・ミルケンがジャンクボンドを餌に釣り
 第11章 釣りと戦う英雄たち
第3部 自由市場の裏面
結論 自由市場のすばらしい物語を見直そう
あとがき 釣り均衡の重要性

要約ダイジェスト

経済はごまかしにみちている

 私たちの問題の多くは、経済システムそれ自体の性質から生じている。もしビジネスマンたちが、経済理論で想定されているように純粋に利己的で純粋に自分のためだけに行動しているなら、私たちの自由市場システムはごまかしと詐欺を生み出しがちになるのだ。

 おかげで私たちはいりもしない製品を買い、高すぎる金額を支払ってしまう。そこで「釣り(Phish)」の均衡研究が役に立つ。つまり、

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