- 本書の概要
- 著者プロフィール
同社 13代目当主である著者 中川政七氏は、何ものにもとらわれずにビジネスを行うことをポリシーとして、前例や慣行を気にしたことも、300年の重みを感じたこともほとんどないと語る。直前に迫った上場を取りやめたのも、「普通の経営」になることへの懸念からだった。そんな型破りともいえる経営を実体験とともにまとめたものが本書だ。
著者は、次の100年を見据えた「日本の工芸を元気にする」というビジョンを掲げ、次々と新たな試みに挑戦している。工芸品メーカーへのコンサルティング事業や合同見本市、地域の工芸を盛り上げる「さんち構想」などがその一例だ。一読すれば、それぞれのビジネスモデルが実際に同社の長期的なビジョンに支えられていることがわかるはずだ。
いわゆる成熟産業、伝統産業に従事する方やファミリービジネスに関わっている方はもちろん、ベンチャー・スタートアップ企業経営者にも、変化の激しい時代を乗り越え、未来の老舗企業をつくるために、多くの示唆を与えてくれる一冊だ。
株式会社中川政七商店十三代代表取締役社長。1974年奈良県生まれ。京都大学法学部卒業後、 2000年富士通入社。2002年に株式会社中川政七商店に入社し、2008年に代表取締役社長に就任。製造から小売まで、業界初のSPAモデルを構築。「遊中川」「中川政七商店」「日本市」など、工芸品をベースにした雑貨の自社ブランドを確立し、全国に約50店舗の直営店を展開。また、2009年より業界特化型の経営コンサルティング事業を開始し、日本各地の企業・ブランドの経営再建に尽力している。
2016年11月、同社創業 300周年を機に十三代中川政七を襲名。2017年には全国の工芸産地の存続を目的に「産地の一番星」が集う日本工芸産地協会を発足させる。2015年に独自性のある戦略により高い収益性を維持している企業を表彰する「ポーター賞」、2016年に「日本イノベーター大賞」優秀賞を受賞。「カンブリア宮殿」や「SWITCH インタビュー 達人達」などテレビ出演のほか、経営者・デザイナー向けのセミナーや講演も多く行っている。著書に『奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。』『経営とデザインの幸せな関係』(日経BP社)、『小さな会社の生きる道。』(CCCメデイアハウス)など。
第2章 家業を会社にする
第3章 ビジョンが生まれる
第4章 十三代社長に就任する
第5章 ビジネスモデルが機能し始める
第6章 300周年を迎え撃つ
第7章 日本の工芸を元気にする!
要約ダイジェスト
工芸大国日本をつくる!
2003年、当時の唯一の自社ブランドである「遊中川」の玉川高島屋ショッピングセンター店がオープンした頃、「何のために会社を経営しているのか」と聞かれたことがある。経営というゲームを誰よりもうまくやって競争に勝ちたい、それが当時の私の本心だった。
父が経営する中川政七商店に入社してから 1年半が経ち、少しずつ手ごたえが感じられるようになった頃だった。しかしその一方で、「勝ちたい」だけの経営に限界があることもどこかで感じ始めていた。
もしも今、「何のために会社を経営しているのか」と聞かれたら、迷いなく答えられる。自社ブランドで培ったブランドマネジメントのノウハウと、展示会「大日本市」と直営店を中心とする流通力で、