- 本書の概要
- 著者プロフィール
「知能や学力は遺伝する」というと、生まれつきの才能で人生の有利不利が決まってしまうことに理不尽さを感じる方もいるかもしれない。だが、人間のほぼすべての能力において遺伝の影響が大きいことは、行動遺伝学の分野で科学的に実証されているという。だとすれば、より多くの人が幸福を感じられる社会をつくるためには、そうした研究結果をどう解釈し、活用すればよいのだろうか。
本書では、行動遺伝学の第一人者であり、教育心理学者としても活躍する著者 安藤寿康氏が、学力・性格・収入など「努力すれば変化し、伸びていく」と多くの人に信じられている能力が、遺伝の影響を大きく受けているというショッキングな事実を隠すことなく伝える。ただし、そもそも知能や性格とは何か、そしてそれらだけが人生を決めるわけではないこと、教育の重要性や今後の教育改革の方向性についても説得的に示している。
類書に、2016年にベストセラーとなった橘玲氏の『言ってはいけない 残酷すぎる真実』があるが、本書は、不条理な遺伝の真実を解き明かしつつも、そうしたデータを個人がより有効活用するための方策を提示している分、読み進めやすい一冊となっている。教育関係者や子育て世代の方はもちろん、自分の才能に悩んでいる方にもぜひご一読いただきたい。遺伝の影響を正しく受け止め、逆に希望を見出すこともできるはずだ。
著者:安藤寿康(アンドウ ジュコウ)
1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程修了。現在、慶應義塾大学文学部教授。教育学博士。専門は行動遺伝学、教育心理学。主に双生児法による研究により、遺伝と環境が認知能力やパーソナリティに及ぼす研究を行っている。著書に『遺伝子の不都合な真実』(ちくま新書)、『遺伝マインド』(共著、有斐閣)、『心はどのように遺伝するか』(講談社ブルーバックス)など。
1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程修了。現在、慶應義塾大学文学部教授。教育学博士。専門は行動遺伝学、教育心理学。主に双生児法による研究により、遺伝と環境が認知能力やパーソナリティに及ぼす研究を行っている。著書に『遺伝子の不都合な真実』(ちくま新書)、『遺伝マインド』(共著、有斐閣)、『心はどのように遺伝するか』(講談社ブルーバックス)など。
第1章 不条理な世界
第2章 知能や性格とは何か?
第3章 心の遺伝を調べる
第4章 遺伝の影響をどう考えるか
第5章 あるべき教育の形
第6章 遺伝を受け入れた社会
第2章 知能や性格とは何か?
第3章 心の遺伝を調べる
第4章 遺伝の影響をどう考えるか
第5章 あるべき教育の形
第6章 遺伝を受け入れた社会
要約ダイジェスト
遺伝の影響を実証的に調べる行動遺伝学
運動能力や体格などについては遺伝の影響を受け入れている私たちだが、知能や性格について論じようとすると、途端にややこしい問題に直面する。「知能は遺伝する」といわれれば多くの人は心穏やかではいられないだろうし、逆に一部の人は優越感を持つかもしれない。
「人間は生まれながらにして平等であり、すべての才能は環境によって決定される」という考え方は、
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