- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書で説かれている考え方はいわゆる「逆張り」の発想ともいえるが、京大理工学部卒、起業、東証一部上場と、正統派なビジネスマインドも持ちつつ、あえて徹底して逆張りしているのではないだろうか。その結果、本書のタイトルにもなっている「勝つためには”ルール”を変えてしまえばいい」という思考で、「YouTube」より後発の「ニコニコ動画」(会員数3,000万人)で、国内においては動画投稿サイトとして優位に立っている。
ウェブサービスやコンテンツビジネスに携わる方にはもちろん、今後ウェブとリアルの世界に何が起こるのかについても知ることができる一冊として、日頃あまりウェブに接しない方にもお薦めできる良書である。
著者:川上 量生(カワカミ ノブオ)
株式会社ドワンゴ 代表取締役会長。株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。1968年生まれ。京都大学工学部を卒業後、コンピューターの知識を生かしてソフトウエアの専門商社に入社。同社倒産後の97年、PC通信用対戦ゲームシステムを開発する会社としてドワンゴを設立。2000年に代表取締役会長。04年に東証1部上場。独自の発想で携帯ゲームや着メロなどのサービスをヒットさせるほか、06年には「ニコニコ動画」を開始。その後も「ニコニコ超会議」や「ブロマガ」など、数々の人気イベントやサービスを生み出す。
出版:KADOKAWA
第1章 いちばんリアルなゲームは「現実世界」で見つかる
第2章 ビジネスというゲームで大切なこと
第3章 人を惹きつけるコンテンツのつくり方
第4章 マネジメントで大切なことは、ゲームが教えてくれた
第5章 特別鼎談―ゲームがうまい人間は頭がいいのか
第6章 ネットの発達は、人間をこう変えていく
第7章 「できるかもしれない」と思うことからすべては始まる
要約ダイジェスト
現実社会は複数のゲームが絡み合いながら進む
僕自身もかなりのゲーマーだが、ある時期からゲームをあまりやらなくなった。それは「現実」というゲームのほうが、当たり前だが、より「リアル」だと思い始めたからで、ビジネスもそうした「リアル」なゲームのひとつである。
詰将棋や碁であれば、5手先、7手先、あるいは13手先までを考えることもあるが、現実社会において10手先までを読むことができるケースはそれほど多くない。10手先を読むのは、情報のすべてが公開されていて、なおかつ自分と相手が交互に1手ずつプレイすることが保証されてはじめて可能になるからである。
加えて、現実社会の問題には、さまざまなパラメータと不確定要素があり、また、複数のゲームが絡み合いながら進行していく。そのすべてを把握するのは不可能だ。
多くの人たちは、必要以上に現在の状況を単純化して考えたがるが、現実社会のゲームはそんなに簡単なものではない。そして複雑なゲームであるがゆえに戦略は単純にならざるをえないという構造があるのだ。
ウォーシミュレーションゲームで学んだ、ルールを変える思考法
ただし、現実と近い感覚の思考を学ぶうえで、ウォーシミュレーションゲームを通しては、多くのことを学べたと思っている。なかでも大きな意味を持つのが「ルールを変える」という発想である。
ウォーシミュレーションゲームだと、現実にあった戦争をシミュレートしたものなので、基本的に史実通りになるようなゲームバランスでつくられている。
ところがここに解釈の違いが生まれ、「このゲームのルールはシミュレーションゲームとしておかしい」などと言い出して、勝手にルールを変更しようとすることがよくある。そして、ルールの一部が変わることによってゲームそのものが変わり、勝者が変わるという体験を、ごく当然のものとして味わうのだ。
ルールの変更によりゲームが変わるのは、現実のビジネスでも実は同じで、既存のルールに従っていたのでは、新規参入者は絶対に勝てないシステムになっていることがある。
しかし、そんな状況でも「ルールが変わるタイミング」「ルールを変えられる瞬間」をどこかで見つけられることがある。ビジネスをするにしても、ゲームと同じように、勝つためにはまず「ルールの検証」から始めるのがよい。
綿密に見直していけば、「変えたほうがいいルール」は意外に多いことがわかる。業界の慣習のようなルールは、特にそうである。ルールを変えるという発想は、「無用な戦いを避ける」ことにもつながる。現実世界で誰かと戦いを始めれば、必ず泥沼にはまっていくことになる。
簡単に越えられる山なら、その先は血みどろの市場
僕はビジネスでプロセスを考えるために、「エネルギー遷移図」を使って考えることがよくある。これは