『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』
(フレッド・クロフォードほか/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次(主要)
 本書は「どうすれば、少ない経営資源で差別化できるのか?」という企業にとっての究極の命題を解決する経営戦略書である。監修者でもある星野リゾート 星野佳路社長が経営を学んだバイブルとして『星野リゾートの教科書』でも紹介され、星野社長に「”教科書”通りに試してみる価値がある」と言わしめた、実践的な内容が特徴だ。

 著者が提唱する「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」では、あらゆるビジネスに共通する5つの要素(価格・商品・アクセス・サービス・経験価値)に着目して、自社の差別化ポイントを追求する戦略を説いている。

 この戦略においては、5つの要素のうち1つで市場支配(1番手)を、別の1つで差別化(2番手)を、残り3つで平均的なレベルをクリアすることが勝ちパターンとされる。すべてにおいて一流(1番手)を目指さなくてもよい(むしろ目指さないほうがよい)という点がポイントである。戦略の内容もさることながら、現代の消費者に対する洞察が非常に深く、マーケティング観点からも気づきの多い一冊となっている。

著者:フレッド・クロフォード(Fred Crawford)
 経営コンサルティングとシステムインテグレーションの国際的大企業、キャップ・ジェミニ・アーンスト&ヤング(CGEY)の取締役副社長。現在はCGEYで、消費財、小売店、流通業務の担当責任者を務め、同社のとくに重要な大手クライアントを担当している。業界イベントで引く手あまたの講演者であり、業界紙・誌にもたびたび記事を寄稿。

著者:ライアン・マシューズ(Ryan Mathews)
 デトロイトに本拠をかまえる未来学者・著述家。独創的なビジネスソリューションを提供することで講演者、コンサルタントとしても国際的に人気。消費財に関する専門知識と理解、人口統計やライフスタイルによる分析が評価されていおり、キャップ・ジェミニ・アーンスト&ヤング(CGEY)、コカ・コーラ、ユニリーバ、ゼネラルモーターズ、P&Gなど、グローバル企業へのコンサルティングを行っている。

監修:星野佳路(ほしの・よしはる)
 1960年生まれ。慶應義塾大学卒業。米国コーネル大学ホテル経営大学院で経営学修士号を取得。91年、家業である老舗旅館「星野温泉旅館」の4代目社長に就任。日本の観光業が変革期に、施設所有にこだわらない運営特化戦略を進める。95年に社名を星野リゾートに変更。日本各地でホテルや旅館の運営に取り組む。本書は、経営学者フィリップ・コトラーから直接紹介された。

監修者まえがき  この本が私の教科書である2つの理由
第1章 今、消費者が企業に求めているものとは?
第2章 ファイブ・ウェイ・ポジショニングという新たなビジネスモデル
第3章 価格で市場を支配する
第4章 サービスで市場を支配する
第5章 アクセスで市場を支配する
第6章 商品市場を支配する
第7章 経験価値で市場を支配する
第8章 ファイブ・ウェイ・ポジショニングを実践するには?
第9章 供給プロセスの現実
第10章 ファイブ・ウェイ・ポジショニングは未来にも通用するのか?
監修者あとがき  星野リゾートのケーススタディからわかるファイブ・ウェイ・ポジショニングの有用性

要約ダイジェスト

いま消費者が企業に求めていること

消費者が望んでいるのは、割引ではない

 「知らなかったことのせいで、痛い目に遭うのではない。君を痛い目に遭わせるのは、知っているという思い込みだ」(マーク・トウェイン)——この言葉が、これほど当てはまる時代があっただろうか。私たちはビジネスの本質を掴んでいて、顧客が企業に求めているものもよく知っていると思いこんでいたが、実際はそうではなかった。

 私たちは、3年間かけて実施した調査のおかげで、世界中のあらゆる業界において、企業は何十億ドルも費やして、的外れなメッセージを顧客に送り、損を積み重ねている、ということに気がついた。

 企業というのは、せっかくお客さまの意見を聞いておきながら、ネガティブな意見を自分たちに都合のよいように解釈してしまうことがある。例えば、消費者が望んでいるのは、激安価格に最高品質、それに付加価値が山ほどついたサービスだと信じていたし、「買い物は楽しくなくちゃ」という答えだと決めつけていた。

 しかし、5,000人を超える消費者へのインタビュー調査の結果が告げていたのは、消費者が求めているのは、商品やサービスの価値だけでなく「価値観」だということであった。

 彼らは単に「3割引」を望んでいるのではなく、1人の人間として認められたがっていた。重要なのは、これらの要素をやり取りする個人個人、もしくは会社の人間的な価値観——信頼、敬意、正直さ、高潔さ、礼儀、気取らぬ態度——だったのだ。

消費者が求めている「価値観」

 今日では、「価値観」という観点から、商品やサービスをいかに提供していくかが、差別化の鍵を握っている。今の時代、ほとんどの車は安定して走り、冷蔵庫は食品をきちんと冷やす。成熟経済の消費者は、商品の品質は当然、一定レベルをクリアしているものだと信じている。

 消費者からのメッセージは明確で、「私がほしいもの(正直さ、敬意、信頼)をくれるなら、あなたのほしいもの(忠誠心) をあげます」である。日常生活の中では、「人としての基本的な価値」は手に入らない。人々はそういった価値を猛烈に求め、それを提供してくれる企業にどっと群がっているのだ。

 この道は、消費者から「私のニーズに応えてくれる」と認められた時点で始まり、それが「ライフスタイルを支える関係」に発展したときにようやく終わる。

 ほとんどの企業は、創業以来、コンテンツ(商品やサービス)の向上に努めているが、コンテクスト(それをどう手渡すか)については、差別化を目指す際のつけ足しのような扱いだ。

 消費者は、商品やサービスといったコンテンツより、コンテクストを重視している。あらゆる取引において、「価値観」が表現されるのは、コンテクストにおいて他にないからである。

一流にこだわるのは、的外れ

 私たちは調査を通じて、単純商品の販売から、複雑なサービスの提供に至るまで、あらゆる商売は次の5つの要素で構成されると考えるようになった。

  1. 価格
  2. サービス(取引を行った結果、顧客がその企業をどう感じるか)
  3. アクセス(物理的、心理的な買いやすさ)
  4. 商品
  5. 経験価値(取引の結果、顧客がどんな気分でいるか)

 そして、多くの企業は、

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